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プロローグ







「クリス、誕生日プレゼントの義姉(あね)だ。大切にするんだぞ」




つい先日“義理の父”となったシラー・レンゲフェルト公爵様に背を押され、シャルロッテは一歩前に出た。


今現在、御子息の3歳の誕生日プレゼントに、シャルロッテはなんと()()として贈呈されている。理由は単純明快、先ほど背中を押した義父の公爵様が息子の欲しいものをこっそりメイドに聞いた(リサーチした)ところ『“姉”を欲しがっているらしい』と情報が上がったからだ。


今日は、公爵家のひとり息子、クリストフの誕生日。

公爵家の邸宅、食堂では今まさに、祝いの夕餉(ゆうげ)が始まろうとしていた。このタイミングで、父親から息子へと誕生日プレゼントが渡されるようだ。


贈り物はまさかの人間。義理の姉。



(「ぼく、おねえちゃんがほしいなぁ」って、小さい子供なら言うかもね。でも、本当に誕生日プレゼントで“姉”ってトチ狂ってる…)


そこまで考えて、贈られている当の本人であるシャルロッテは小さく嘆息する。


(いやでも、感謝するべきよね。引き取ってもらえなかったら、私、死んでいたかもしれないんだから)


シャルロッテは、公爵家に引き取られたこと自体は感謝していた。プレゼントとして人間を贈るのはどうかと思うが、個人的には悪い話ではなかったので問題もなく、できることなら恩返しをしようと思うほどには恩義を感じている。


クリストフの紅い瞳がこちらを見て、淡々とした調子で父親に礼を述べた。



「ありがとうございます、おとうさま。なまえは?」



幼児はこちらを見つめるも『姉を欲しがっていた』という割りに、まったく喜ぶ素振りはみられない。

公爵によく似た面立ちは無表情のまま、シャルロッテを見つめている。ちなみに親である公爵様も終始無表情で、誕生日会だというのに未だに笑顔は見られていない。


ここに来るまでシャルロッテは中々の苦労の日々を乗り越えてきたのだが、贈られる側のクリストフにとってはあまり関係のないことだろう。しかたがないことだが、少しくらい喜んでほしいなと思いながら義弟を見つめる。


クリストフは、ぱちりと見開かれた瞳は大きく、そして紅い。柔らかそうな黒髪は白く柔らかい頬の上あたりで切りそろえられ、無表情ながらも可愛らしい幼児だ。だがしかし、じっと見つめられて、シャルロッテは背筋にゾワゾワとした恐怖を感じていた。



なぜなら。



(この目の前の幼児がこれから、この世界(乙女ゲーム)の黒幕になって、猟奇的な殺人を繰り返す、人を人とも思わないサイコパス野郎に成長するんだもんな…)



惨殺現場(スチル)を思い出して背筋に震えが走るのを気力で抑え込み、シャルロッテは義弟となったクリストフへとカーテシーをした。


ハーフアップに結い上げられた白金の髪がさらりと陶磁器のような肌の上をすべり、華奢な肩のまわりを流れる。人形のように小さな顔、長い睫毛に縁取られた輝く紫(アメジスト)の瞳は不安げにゆらめくも、なんとか口元には微笑みを浮かべて挨拶を述べた。


(この体は美少女なんだから、悪い印象はもたれないはず…!)


「シャルロッテともうします、6さいです。これからよろしくおねがいいたします」

「ぼくは、くりすとふ、3さい。ぼくのおねえさま。たいせつにします」


差し出される、ふかふかとした小さな手。今はまだ、血にも染まっていない、純粋無垢な手だ。そっと握れば柔らかく、シャルロッテは決意した。


(この子をまっとうに育てることができれば、私の勝ち。ゲームの黒幕(猟奇的殺人犯)にならないようにすればいい。身内から犯罪者が出たら公爵家といえど没落(ゲームセット)よ。せっかく金持ちに引き取られたんだから、その金でのんびりスローライフを送らせてもらいたい…!)


「さあ二人とも、席につきなさい」


公爵様の指示で、子どもたちの椅子が引かれ、夕餉が始まった。使用人たちが給仕し、誕生日の祝いにふさわしい、豪華な料理が次々と運ばれてくる。



人生で初めて食べる豪勢な料理に舌鼓を打ちながら、シャルロッテはここに来るまでのことを思い出していた。




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