急成長したというのか…、悪役令嬢を婚約破棄できる年齢まで!
「公爵令嬢キャット、婚約破棄だ。俺の愛する男爵令嬢ちゅわ〜んを虐めた罰で国外追放してやる」
「え?すみません、何の話ですか?そして貴方誰ですか?」
突然教室に現れた身長二メートル越えの巨漢から、やった覚えの無い罪を突きつけられたキャットは首を傾げた。
「とぼけるな!体育祭で靴に画鋲を入れたり、修学旅行で雪山に置き去りにしたり、先週は屋上に繋がる階段から彼女を突き落としただろ!この二人が証人だ!なあ?」
「「えっ、ガガッ
何そガッ
れ知らん」」
大男に話を振られた宰相の息子と騎士団長の息子は、正直に返答した。
「な、な、な、何を言ってるんだお前ら!昨日の打ち合わせと違うぞ!」
「いえ、私達全員貴方とは初対面ですし」
「つーか、アンタがガッガッ
さっき言ったキャット嬢の罪って全部ぶぶぶぶ
ガガッ ピー ガガッ
ウソだろ。馬鹿な俺でもわかるぜ」
「な、なにぃ!根拠はあるのか!」
「だってよー、俺達まだ一年生で今は一学期の中間テストだぜ?体育祭も修学旅行も
ガッガッ ピー ピー ガガッ ガガッ
ブーツ ピー ピー ピー
DISCを読み込めませんでした
ブーツ ピー ピー ピー ブブ パカ
パタン ガー キュルキュルキュルキュル
DISC読み込み中…
キュルキュルキュル ブーン
ずっと先の話だ。そもそもこの学校には下級貴族の子は一人もいねーし」
「なにっ」
騎士団長の息子の言葉を聞いた巨漢は、口をポカンと開けたまま固まった。そして、巨漢が状況を理解出来ずに立ち尽くしていると屈強な衛兵が到着し巨漢を引きずっていった。
「離せー!俺はこの国の王太子だぞー!」
教室から連れ出される直前、巨漢はそんな事を口にしたが、信じる者はいなかった。確かに王太子はまだ教室に来ていないから、巨漢が王太子なら計算は合うが、そもそも見た目が全然違うし巨漢はどう見ても十五歳には見えなかった。
だが、この巨漢こそが王太子ガン・プリングルズ本人なのである。一体彼に何があったのか?
話は一時間前に遡る。
◆ ◆ ◆
「テスト範囲の復習も済んだし、そろそろ学校行くか!」
この時ガンはまだ十五歳時点の外見で、婚約破棄の事など一切考えて無かった。だが、運命のイタズラが彼を大きく狂わせる事となる。
「いっけね!今日はまだカレンダーめくって無かった!」
ガンの自室の柱には、入学時に学校から贈られたミスリル製日めくりカレンダーが設置されていた。毎日起きたら最初にこのカレンダーをパンチで一枚破くのが彼のルーティンとなっていたが、今日は起きてすぐにテスト勉強をしていた為、まだカレンダーを破いて無かった。
「ジャカジャカジャンケン、キュアサザエでグー!」
慌てていたガンは、いつも以上の勢いでカレンダーにパンチした。その結果、日めくりカレンダーは最後の一枚を残して粉砕され、ガンの目に卒業パーティの日付が映る。
「ぐわー!」
カレンダーが最終日になった事で、ガンの肉体が十八歳まで急成長!更に、頭の中も婚約破棄モードにシフトした!
そう、皆様御存知の『乙女ゲームの強制力』である!
「うおー!俺は男爵令嬢ちゅわ〜んとの真実の愛に目覚めたぜー!婚約破棄すっぞオラァ!」
まだ学校に転入すらしてないヒロインへの愛を高らかに叫びながら、ガンはパーティ会場へ走った。しかし、卒業パーティは当然行われていなかぢたので公爵令嬢の行きそうな場所をしらみつぶしに探し中間テスト開始前の教室に辿り着いたのだった。
◆ ◆ ◆
その後、王太子が消えた事が明らかになり、自室から走り去る所さんを見られていたガンは誘拐犯として尋問され処刑された。
ガンは最後まで自分が王太子だと主張したが、ラスボス戦前の肉体まで急成長した彼がガン本人だと認識出来るのは誰もいなかった。
「なんで王太子が不在なのよー!ゲームと違うー!」
「そうよ!殿下は私を置いてどこに行ったのよー!で、ゲームって何ー!?」
六月末に転入して来た男爵令嬢ちゅわ〜んは、出会って五秒で友人になったキャットと一緒にガンが居ないことに悲しみ号泣した。
「でも、泣いてても仕方無いわ!王太子が居ないなら宰相の息子狙いよ!」
「あー!彼は私が狙ってたの!ずるいずるい!男爵令嬢ちゅわ〜んにも譲れないわ!」
メイン攻略キャラが退場した事で、この世界は進むべきルートを外れて行った。彼女達が誰と結婚するかは、まだ誰にも分からない。
ガン・プリングルズ
乙女ゲーム「ラブラブ♡キングダム」のメイン攻略キャラ。最初はショタ体型だが、作中時間の経過でどんどんでかくなり、最終的に海賊漫画のラスボスみたいな大男になる。
アカクテ・サンバイザー
宰相の息子で攻略キャラ。裏で色々企み王国を手に入れようとしているが、好感度を上げれば味方になる。
その際に見た目が実写化し中の人そのものになる。
バット・シチテン
騎士団長の息子で攻略キャラ。騎士道を守る古風なキャラである事を表す為、その外見は90年代のポリゴンモデルで形成されている。彼が動く度にフリーズが発生する可能性があるので、本来初心者向けの設定なのにも関わらず一番攻略が難しいとプレイヤーに語り継がれている。彼の挙動が原因で発生する有名なバグとして、王太子が開始時から最終形態になるものや、悪役令嬢が悪事を行わないものがある。
ちゅわ〜ん・カシワザキ
本作のヒロイン。名前はゲーム開始時に変更かのうだが、変更すると名前をボイス付きで呼んで貰えない。
男爵令嬢である彼女は元々は下級貴族の学校に通っていたが、希少な魔法の使い手と判明し一年時の六月末から王族や高位貴族の通う学校に通う事になる。
この話の彼女は転生者であり、ゲームの事はようつべで二、三回見た程度の知識がある。
キャット・ヒトデナシ
悪役令嬢。特に悪いことはせず、ヒロインちゅわ〜んとは友達で終わるが、極稀にゲームが正常に動作して最低のクズになる。




