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「…何故、それを?」

 「…何故、それを?」


 まずはお礼を言うべきだとは思ったが、開口一番に出た俺の言葉は疑問の形をしていた。

何故明確な日本語で、何故俺が異世界人であることを確信できたのか、それを知ろうとせずにはいられなかった。

「危機的状況に変わりはないのでは?」と警戒した俺の脳が、俺の頬に冷や汗を伝わせる。


 「…立ち話もなんだし、町に行かない?」


 空から降ってきたその人はなんでもないかのように答え、そしてそのまま歩き始めた。

先程のドラゴンや鳥のような何かの群れが彼1人へと着いていく光景は、圧巻の一言だった。

 性別が明言されていない以上「彼」と呼称するほかなかったが、その容姿はかなり女性的だ。

腰を過ぎる程の長い緑髪を赤いリボンで一纏めにしていて、肌は海ではしゃぐ陽キャ共と同じくらいに黒く、臍や肩が出るようなそれなりに露出度の高い格好をしていて、そして黒く巨大な猫?を背負っている。

長い前髪に少し隠れた赤く丸い目が、どうにも蠱惑的だ。

…胸部はかなり薄かったg「キミ、動物とか好き?」


 「ッ?!」


 俺の思考がやらしい方に向かった瞬間、突然話しかけられ驚愕する。

俺の性根はどうしようもなく陰キャで思春期なのだ。

 

 「…え、ええ、まあ、はい」

 「よかったー。じゃあ多分あの人たち(・・・・・)とも仲良くできると思うよー」

 「?」


なにやら伏線と思しきものを感じ取りつつも、俺は彼について行く以外に生きていく以外にこの世界で生存する方法が思いつかなかった。


 「こっちこっちー」

 「待って、くださ~い…」


 俺の遅さに痺れを切らしたのか、彼は少し遠くを小走りしながら手を振っている。

正確には手を振っているのは彼ではなく、彼が背負っている猫もどきなのだが。

 軽快に走る彼とは対照的に、俺は500mも歩いていないにも関わらず、既に少し息を切らしながら彼を追っていた。

息を切らしながらも、俺は今自分がいる場所を見渡し、そして激しく困惑する。

通常、異世界で見ることはないものだ。


 「………どう見ても…日本じゃん…」


 俺は田舎住まいなので直接見ることはあまりないが、今目の前に広がる光景は、間違いなくニュースなんかで見る日本の都会のそれだった。

日本と一つ違うところがあるとすれば、行き交う人々は悉く獣の顔をしているということだ。

 しかし、草原に驚いては日本もどきに驚いて…この世界に来てからの俺は、随分と光景に驚いてばかりだ。

普通、異世界転移した側が異世界人を驚かせるのがテンプレ(お決まり)なはずなんだが…


 「ボクもう着いちゃったよー?」


 視線を彼へと戻す。

彼は事務所のような五階建ての建物の前で、猫もどきと一緒に手を振っていた。


 「はーい…」


 消え入りそうな声で返事しながら、俺は手を振り返す。

事務所の看板には「ユークロニア第五支部」と、やはり日本語で書かれていた。


 「ただいまー」

 「おじゃましまーす…」


 彼はドアを開けながら明るく言い放つ。

俺も遅れて入るが、そこは建物の内外装とは全く違う、ファンタジーな雰囲気に満ちていた。

鎧やら剣やらを身につけた人達が、爽やかな印象を受ける椅子にだらしなく座って騒ぎ立てている。

その人達は先程道ですれ違った人達と同じく、悉く獣の顔をしていた。

一部の人達は人間と同じ顔をしていたが、頭に植物や獣や蟲のようななにかが刺さっており、やはり人間ではないようだった。

日本では秋葉原でだって見ないだろう光景だ。

秋葉原見たことないけど…


 「ようフェア! またペット増やしたのかい?」

 「違うよ~! また(・・)異世界の子が迷子になってたから保護しただけ!」

 「またかよー! あいつ(・・・)本当どんだけこの世界の人口増やすんだ?」

 「このままじゃ無限の世界ったってパンクしちまうかもな!」

 「そうかもなぁ!」


 西部劇みたいなノリだなぁここ。

西部劇も観たことないけど…

 それより、彼…フェアなんかめちゃくちゃ重要そうなワードが二個も飛び出てきたな今。

「また」だとか「あいつ」だとか…


 「おいボウズ!」

 「はっはいぃ!」


 また驚いてしまった。

ついさっきもフェアさんに声かけられて驚いたばかりだし、突然声かけられても驚かないようにした方がいいかな…

 さて、俺に声をかけ近付いてきたのは、さっきフェアさんに話しかけていた厳ついおじさんだった。

筋骨隆々・スキンヘッドと、いかにも小説とかに登場する戦士や鍛治師といった感じだったが、全くもって似合わない桃色のエプロンを着けており、頭には兎耳が刺さっている。


 「ボウズ! これからあんたの能力を見る! こっちの部屋来い!」

 「えっちょっ待っえっ?!」

 「あっボクも行くー」


 俺はいとも容易く持ち上げられ、別室へとエレベーターで拉致されてしまった。


 「さて! 能力測定の前に自己紹介だ!」

 「ついでにボクもー」


 おじさんは巨大なクリスタルを乱雑に地面に置くと、空気も揺れんばかりの声量で叫ぶ。

広い部屋であるにも関わらず、はちゃめちゃに反響して相当にうるさい。

 部屋は全面に白いパネルが敷き詰められており、細かい傷やらなんやらで表面はボロボロだった。


 「俺の名前はバムコット・コウント! ユークロニア第五支部の副支部長(サブマスター)だ! よろしくな!」

 「ボクの名前はフェア・トラーク。そしてこの子はベルンシュ。自己紹介が送れてごめんね?」

 「…あの、俺の名前は森本和智です。よろしくお願いします、2人と「さて! 自己紹介も済んだしこれに触れてみろ!」


 バムコットさんは、先程乱雑に置いたクリスタルに触れることを被せ気味に促した。

クリスタルは神々しさを感じられる青い光を発していたが、そのせいなのか、はたまた酷使されたからなのか、下の方が少し罅割れを引き起こしていた。

 しかし、やっと|テンプレ展開が来たな。

さっきのもある意味|テンプレ展開ではあったけど、それって俺が助ける側なんだよね普通。

まさか自分が助けられる側になるとは思わなかったよ。


 「これに、触れる…」


 期待を込めて、クリスタルへと触れる。

その瞬間、それは一層青く明るく輝き始めた。


 「(ここでチートスキルだとか、超ステータスだとかが判明するんだろうな…)」


 しかし、結果は俺の期待とは全く異なるものだった。

ソレから発される光は徐々に弱まり、空中に浮かぶ文字列へと変化していく…


──────────

名前:森本 和智

種族:人間族/人間(ヒューマン)

属性:音


技法:〈全力パンチ:Lv2〉

魔法:現在なし

能力:

 アクティブ:〈気配操作:Lv4〉《解説者(コメンテーター):Lv1》

 パッシブ:〈気配感知:Lv2〉〈音源感知:LvMAX〉〈視線感知:Lv5〉〈聴覚強化:LvMAX〉〈獲得経験値増加:Lv--〉

耐性:〈孤独無効:Lv--〉〈寒冷耐性:Lv2〉〈水分欠乏耐性:Lv6〉〈睡眠欠乏耐性:Lv3〉〈空腹耐性:Lv1〉

称号:〈異世界人:Lv--〉

──────────


 ………コメンテーターって、なにさ?

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