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エピソード:4『魔王軍の侵略』

また一ヶ月以上空きましたぁぁぁごめんなさいぃぃ

もうほんま…………(自己嫌悪)


それはそうとリバイスでヒロミさんがカムバックしましたね! や っ た ぜ


街へ向かう宝笑達は、道中襲いかかってきた魔物を倒して無事翌朝を迎える。フィーニアスに魔法を教えてもらいつつ、途中にある村を目指すのだった。





「いい?まず魔法を習得するのに大切なのは魔力、イメージ、練習の三つよ」

「は、はい」


夜が明けて。

朝食を食べ終えた俺は、フィーニアスさんから魔法のレクチャーを受けていた。


「まず魔力。この世界の人間は元々魔力を持っている人がほとんどよ。自分の感情やイメージする力……つまり想像力を体に流れる魔力と練り合わせることで初めて魔法を発動するための火種になるの」

「ほ、ほうほう?」

「そしてイメージ。火属性魔法なら自分の中に流れている魔力をどれだけ鮮明かつ具体的に火や炎としてイメージできるか。風属性ならどれだけ目に見えない風を脳内で描くことができるか…………イメージは魔法だけでなく剣術や格闘術、単なる運動まで様々な場面で通用する技術よ」

「なるほど……イメージトレーニングとか言うもんなぁ」

「最後は練習。とにかく経験と回数を積み、最終的に意識せずに発動することが出来たらマスターしたと言っていいわ」

「どんなことでも練習あるのみか……異世界でもその辺は一緒なんだなぁ。まぁそりゃそっか」

「それと持続力ね。一定の魔力を抽出して保つことも練習していきましょう」


フィーニアスさんの言葉に頷く。


「………………ん!?なんかめちゃくちゃ自然な流れだったけど、俺魔力なんて無いよ!?」

「問題ないわ。魔修羅の魔我魂が魔力源になるから」

「ほ、ほーん…………あ、そう言えばヒノカさんは魔力を練る時ってどうしてるんですか?」

「そうですねぇ…………よく言われるのは、自分の体で魔力が生み出されて流れていることをちゃんと意識して、尚且つ魔法を使いたいと強く思うこと、でしょうか」

「私も姉様と同じですね。というより魔法を使う練習はすれど魔力を練ること自体は最初から自然と出来て多少手解きを受けるくらいなので、改めて聞かれると返答に困りますね……」

「自分もそうっすね~」


アドバイスをもらったりコツを掴むために教えてもらおうと思っていた俺は初手からつまづく。

『魔法や異能力の存在する世界の人間でも、その辺りはちゃんと練習しないといけない』っていうのは漫画やアニメだとよくあるんだけどな…………いや、そもそもここは俺のいた世界じゃないんだから俺の考えが通用しないのは当たり前か…………


「え~~~~どうしよう……」

「大丈夫よ、私が教えるもの。この世界の人間じゃない宝笑だと少しやり方が「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」


フィーニアスさんの話をぶった切り、森の中にフラムちゃんの驚きの声が響き渡る。


「おぉ……耳キーン…………」

「ご、ごめんなさい!でも本当なんですかそれ!?」

「どの部分?」

「今宝笑さんがこの世界の人間じゃないってフィーニアスさんが……!ほ、本当なんですか!!?」


そういえばまだ話していなかったと思い、俺が異世界の人間であることをフラムちゃんに教えた。当然フラムちゃんは大層ビックリしており、あんぐりと口を開けている。


「信じられないのも無理ないよね、でも本当なんだよなぁこれが。俺の世界には魔法もモンスターも魔王もいないし、魔法じゃなくて科学っていう技術が発展してるね」

「魔法のない世界っすかぁ…………考えられないっすね」

「是非一度見てみたいですね。ね、ナハト」

「確かに興味はあります。宝笑さんの言う科学……この世界の魔法に相当する技術がどんなものなのか気になります」

「…………とりあえず一旦やってみましょう。ひとまず、火属性のイグニスからね」


フィーニアスさんに促され、言われた通りにイメージしてみる。俺の中にある魔我魂、そしてその力が炎になるよう想像する。


「手を前に突き出して、魔法名を言って」

「…………っ! イグニスッッ!!」


突き出していた右腕を左手で押さえて衝撃や反動に備え、魔法名を叫んだ…………が、やはりと言うべきかうんともすんとも言わない。念のため何回か試すがやはり魔法は出なかった。


「うーん難しいなぁ…………」

「最初は誰だってそうですよ、あまり気を落とさないでください」

「ヒノカさんの言う通りっす!練習あるのみっすよ」


ヒノカさんとフラムちゃんに慰められ、また練習に打ち込もうとした時、ナハトさんがおずおずと口を開く。


「あの、そろそろ出発しませんか?練習は道中でも出来るでしょうし……」

「…………確かにそうね。ここをもう少し進めば村がある筈よ、そこに向かいましょう」

「えっ、本当っ!?」


フィーニアスさんの言葉は嬉しいニュースだった。野営も野営で面白かったけど、しっかり休憩を取れる場所があるなら大歓迎だ。


「よぉぉし!…………あれ、でも確か目的地までは昨日の時点で二日だから、あと一日は歩かなきゃいけないんじゃないっけ?」

「それはあくまで次の街へ着くまでの日数ね。流石に道中に村くらいはあるわ」

「そうなんだ……いやーよかった!街まで何にもないんだと思ってた……」

「では、出発しましょうか♪」

「おー!」


ーーーーーーーーーー

ーーーーーーー

ーーーー



「おっ!あれがそう、かな…………?」


道中魔法の練習しながらしばらく歩くとフィーニアスさんの言う通り村が見えてきた。しかし、何か様子がおかしい。


「な、なんか騒がしいな……」

「あら、何かあったのかしら?」


近付くにつれて村の方から聞こえてくるざわめきが少しずつ鮮明になっていく。それは逃げ惑う人々の悲鳴だった。何か非常事態が起きていることを瞬時に理解した俺達は顔を見合わせ、村に向かって走り出す。

そして到着した俺達が見たものは、異形の人型の〝何か〟に襲われる村の姿だった。

笑っているような不気味な鉄仮面を装着した顔に、手足には革のグローブとブーツ、胴体には簡素なプレート状の鎧を身に付けた怪人は短剣を手に村人達に襲いかかる。


「何だよこれ……魔人転生っ!」

『デモン・ザ・バジュラ!!』


魔修羅に変身した俺は村人達を襲う怪人を片っ端から斬り倒していく。どうやらそこまで強くはないようで、バジュラブレードの一撃で簡単に倒せてしまう程度には弱かった。


「フィーニアスさんこいつら……おんりゃっ!何っ!?」

「魔軍兵ジャマー、魔王軍の戦闘員よ!気を付けて!」


「「「ジャマンガジャマンガジャマジャマ!!」」」


独特な鳴き声を上げながら襲いかかってくるジャマー達を次々斬り裂く。やられたジャマーは霧のように霧散して跡形もなく消えてしまった。


「ジャマンガ~~!!」

「分かりやすい鳴き声だなぁ……」

「やっ!」

「はぁっ!」

「「ジャマジャマ~~!!」」


「何者だ貴様ら!?」


ヒノカさんとナハトさんの活躍もあってジャマー達はあっという間に全滅し、一件落着……かと思いきや、突然牛のような姿をした獣人が現れた。手には対称形の両刃斧を持ち、筋肉質で大柄な体躯、そして頭部には水牛のような立派な角を持つ獣人は怒りの目でこちらを睨み付けてくる。


「俺が魔王軍だと知っての反逆か?人間如きが許さんぞ」

「何が許さんだよ!!こんなことしやがって、この村の人達が何したんだよ!?」

「何をしたかなんざどうでもいい。『人間だから』で十分だ」


説明になってない言葉に俺は唖然とするのと同時に、身勝手な言い分に怒りが込み上げてきた。


「何だよそれ……そんな理由で何の罪もない人を傷付けるなんておかしいだろっ!!」

「人間の言い分なんぞ知ったことか。魔王軍にはその権利がある……こんな風にな」


『ミノタウロス!』


不敵な笑みを浮かべて魔我魂を起動させた獣人は、自分の体に魔我魂を埋め込む。


「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


獣人は雄叫びを上げながら禍々しい姿へと変わっていく。

逆三角形の体型に肉体が直接変形したような赤い鎧を纏い、人間の口元を持つ牛のような頭部には巨大化した角。変わっていないのは手に持っていた両刃斧だけで変身前の面影はほとんどない異形の怪人となってしまった。


「人間は皆殺しにする……!」

「っ…………ヒノカさん達は村の人達お願い!!」


俺がそう言った瞬間、元獣人……ミノタウロスは俺目がけて突進してくる。咄嗟にバジュラブレードで防ぐがミノタウロスはその見た目に違わぬ怪力で暴走列車の如く俺を押し切り、撥ね飛ばされてしまう。

更に追撃で振り下ろされた斧を間一髪避けるも続けて放たれた二撃目が見事にクリーンヒットしてしまい、体が宙を舞った。

立ち上がろうとしたところに再び突っ込んできたミノタウロスを何とか躱し、三度突撃してきたところをすれ違いざまに斬りつける。体勢を崩した敵の懐へ一気に飛び込み、がむしゃらにバジュラブレードを振り回してミノタウロスを滅多斬りにしていく。

剣術の〝け〟の字もない形振り構わない戦い方だが、それが功を奏したのか敵に反撃の隙を与えず、流れは完全に俺が掴んでいた。そして一回転斬りからの後ろ回し蹴りで敵をふっ飛ばす。


「ぐっ…………おのれぇ……!」

「っ…………これで決める!」


必殺技を繰り出すためにグリップに手をかけたその時、ミノタウロスは角から手当たり次第に火球をバラ撒き、無差別に周囲を攻撃する。辺りが火に包まれ、村の人達は逃げ惑う。


「……………………………あぁ………」


煌々と輝く火に照らされる村を見て俺の脳裏に〝あの日〟の光景がフラッシュバックする。


「凛……ちゃん…………」

「宝笑っ!ボーッとしないでっ!!」


フィーニアスさんの声で我に帰る。


「…………! フィーニアスさん!みんなは無事!?」

「私達は大丈夫!それより宝笑、魔法を使って!」

「魔法って……俺まだ……!」

「そんなこと言っていられる状況じゃないでしょう!!魔人転生している今なら全身に魔力が漲っているわ、この火を消せるだけの水をイメージして!!」


フィーニアスさんに言われ、目を瞑って頭の中で大量の水を、そして魔力が身体を流れていることを強くイメージする。正直ぶっつけ本番で不安しかなく、俺なんかに出来るのか自信がないがやるしかない。

ナハトさんが使っていたネロよりもっと、たくさんの水を一気に……それこそ雨のように広範囲に降らせることが出来れば…………!


(お困りかしら?)

(づっ!!?)


突然頭に響いた謎の声。フィーニアスさんでもなければヒノカさんでもナハトさんでもない、フラムちゃんでもない。

男性的であると同時に女性的でもあり、しかし中性的ともまた違う艶のある美しい声。こんな状況でなければ聞き惚れていただろうと思う程だ。


「な、なんだ!?」

(あら、驚かせちゃったわね。安心していいわ、敵ではないから。あなたに少し助け船を出してあげようかと思って)

「助け船…………?」

(ありったけの水を球体状にして頭上に打ち上げる。そしてそれが弾けて雨になるイメージ、できる?)

「雨……雨……」

(魔法は魔力とコントロール次第でいくらでも強弱がつけられるわ。頑張ってね)


それを最後に声は聞こえなくなる。何だったのか全く分からない。しかしいまはそれどころではない、言われた通りに頭の中で強くイメージし、全身に流れる力を高める。

そして右手を空へ突き上げると同時にその力を解き放った。



「ネロォォォォォッッ!!!」



巨大な水の玉が打ち上げられ、弾けた。

上手く制御できなかったのか雨というよりバケツをひっくり返したような大量の水が降り注ぎ、村全体を呑み込むようにして一瞬で鎮火する。


「………………やったぁ」

「宝笑さん、やりすぎです…………」


辺り一面水浸しになってしまい、それはフィーニアスさん達も例外ではない。ずぶ濡れにしてしまったナハトさんにじっとりとした目でツッコまれる。まさかこうなるとは思わなかったし…………


「でも火は消えたっす!宝笑さんすごいっくしっ!!」

「あらあら、フラムちゃん大丈夫?びしょびしょになってしまいましたね」

「風邪を引いては大変です。姉様、服や髪を乾かしましょう」

「うおぉぉごめん!イグニス!……出ないしぃ……!」

「いいえ、よくやったわ宝笑。まさかネロをあそこまでの規模で撃つなんて……正直驚いたわ」

「あぁ、頭に突然声が聞こえてさ。そういう風にやってみろって言われたんだ」


フィーニアスさんに聞こえてきた声と内容について話す。フィーニアスさんは暫し考えて顔を上げる。


「ひとまず敵ではなさそうね。結果的に助けられたのだし感謝しましょう」

「うん…………っていうかフィーニアスさんも風邪引くよ!つーかあの牛もいなくなってるし!!」


どうやらどさくさに紛れてミノタウロスは撤退してしまったようだ。辺りを見渡しても影も形もない。

ため息をついていると、村の人達が家屋から出てこちらへとやってきた。


「ありがとうございます!あなた方のおかげでこの村は救われました!」

「魔王軍に立ち向かうなんて、なんと勇敢なことか……ありがたや」

「幸い怪我人はいても死者は出ていません。全てあなた達のおかげです、本当にありがとうございます……!」


村の人達から口々に感謝される。と、初老の男性が俺達の前に現れた。


「この度は本当にありがとうございました。私はこの村の長を務めている者です。失礼ですが、あなた方は?」

「通りすがりの旅人、ですかね。ここに村があるって聞いて休憩のために立ち寄ったんですけど、そしたら魔王軍に襲われてて……」

「なるほど、我々は運が良かったようだ。良ければ、どうぞ私の家までお越しください。大したものではありませんが、おもてなしをさせてほしいのです」


俺達は村長さんのお言葉に甘え、ご自宅にお邪魔することにした。


ーーーーーーーーーー

ーーーーーーー

ーーーー


村長さんの自宅に招かれた私達はもてなしを受けながらこの村の話を聞いていた。


「…………今ではこんな小さな村にまで魔王軍の手が伸びています。まさに世界の終わりです」

「こんなことがあちこちで?」


暗い顔で村長さんは語り、宝笑さんの問いに静かに頷く。


「えぇ、この村だけではありません。聞く所によれば、今までは直接襲われることのなかった小さな村や集落まで襲われていると……」

「魔王軍の侵攻、侵略が本格化してきている、ということでしょうか?確かにそういった話は今までも耳に入ってきていましたが……」

「姉様と旅をしている時にも幾つかそういった話を耳にしましたね。こうして現場を見たのは初めてですが」


姉様の言葉に私も頷く。今のこの世界の状況故、旅をしていると魔王軍に関する話は至る所で聞き、私達もある程度情報は知っていた。

今までの魔王軍は散発的かつある程度大きな街や主要都市を中心に襲って小競り合いのようなことをしていたのに対し、最近は妙に活動が活発化しており、侵攻侵略が本格化してきている。

結果、以前なら襲われなかった、もしくは直接的な被害が出なかった小さな町や辺境の村にも魔王軍の魔の手が伸びるようになっていた。この村もその一つでしょう。


「嫌っすねぇ…………」

「ねぇ~~~~、こんなことして何になるってんだよまったく……」

「魔王軍の考えなど我々人間の思考では理解出来ませんな。それにあの獣人は倒されたわけではありません、おそらく再び村を襲いに来るでしょう。どうしたものか……」

「だったら俺、戦いますよ!」

「宝笑さん!?」


宝笑さんの唐突な申し出に思わず声が出てしまった。皆さんの視線が私に集まり、バツが悪くなって空咳を一つする。


「宝笑さん、流石に即決すぎでは?あなたはそもそも非戦闘員でしょう」

「えぇ?そうかなぁ……だってほっとけないし……」

「見捨てろとは言いませんがもう少し考えた方が……」

「でもこのまま放ってもおけないっす!自分も宝笑さんに賛成っす!」

「ふふっ、私も賛成に一票ですね」

「姉様……はぁ、何も見殺しにしろとは言ってないでしょう。もう少し考えて動こうと言ってるだけです」


私はため息をつき、姉様達に賛同する。助けるに決まっているでしょうに全く…………


「ありがたいですが、いいのですか?あなた方は旅人、この村を助ける義理は……」


戸惑う村長さんに、宝笑さんは笑って言った。


「人を助けるのにそんな面倒くさいもの必要ないですよ。困ってる人がいたら助ける、助けたいと思ったから助ける、単純にそれだけです」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「へぇ、尻尾を巻いておめおめ逃げ帰ってきたのね」

「も、申し訳ありませんっ…………!!」

「……………………まぁ泣きの一回くらいはあげるわ。精々頑張りなさい」

「は、はいっ!必ず、必ずご期待に答えてみせます……!!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


次の日。村の宿に泊まらせてもらった俺達は朝食を食べつつ魔王軍のことについて話していた。


「あいつ、やっぱりまた来るのかな?」

「魔王軍のことよ、また必ず来るわ。気を抜かないようにね」


フィーニアスさんの言葉に頷き、ご飯をかっ込む。


「宝笑さんお茶飲みますか?」

「あ、いただきます!」

「ヒノカさん、私もいただいていいかしら?」


食事が終わって外に出ると、暖かい太陽の光と澄んだ空気を全身に浴び、大きく伸びをする。

村の人達も活気を取り戻しており、あちこちで談笑や作業している姿が見える。良かった良かったと思いながら宿に戻ろうとしたその時。


「人間共ォォォ!!あの人間はどこだぁぁ!?」


突然響いた怒号に振り向くと、あの牛獣人が怒り心頭の様子で村の入り口に立っていた。現れた侵略者に逃げ惑う人達をすり抜けて獣人の前に立つ。


「また来やがったなこの野郎!」

「人間……!お前は殺す!そうしなければ……後がない……!」

『ミノタウロス!』


獣人は再びミノタウロスに変身し、俺も魔修羅に魔人転生してミノタウロスと戦う。


「うおぉぉぉぉあぁぁっ!!」

「うおっ!?(あっぶ)ねぇっ!」


敵は切羽詰まったような、鬼気迫る様子で両刃斧を振り回す。何があったのかは知らないが、さっきの自暴自棄気味の態度からヤバいことがあったのは容易に想像できる。

バジュラブレードと両刃斧がぶつかり、激しく火花を散らす。当然ながらパワーはこちらが不利で、かつ昨日と は比べ物にならない猛攻に刃と刃がぶつかる度に腕ごと弾き飛ばされそうになる。

それでも何とか凌いでいたが、斧の一撃でバジュラブレードが吹っ飛んでいってしまい、そっちに一瞬気を取られた瞬間強烈な一撃、更には火球の直撃まで受ける。


「うわ熱っち(あっ)つぅっ!!」


地面をのたうち回る俺目掛けて、ミノタウロスは容赦なく斧を振り下ろす。しかし、その一撃は鋭い矢によって阻止された。


「宝笑さん!大丈夫ですか!?」

「一人で突っ走らないでくださいっ!!」


「イグニスフランマッ!」

「ドラゴンファイヤー!」

「ゴアァァァァァ!!?」


フィーニアスさんとフラムちゃんのW火炎魔法攻撃がミノタウロスに直撃し、大きくふっ飛ばす。

その隙に急いでバジュラブレードを拾い、強く握って走り出す。


「はぁっ! せぁっ! うぉりやぁ!!」


滅多切りで敵を攻め立て、飛ぶ。


「どぉぉりやぁぁぁぁぁ!!」


落下の勢いを乗せた渾身の一撃がミノタウロスをガードごと真っ二つに両断する。斧は破壊され、ミノタウロスも大ダメージを負うが、よろめきながらも踏ん張って持ちこたえたミノタウロスは俺に手を伸ばしながらゆっくり向かってくる。


「が、あぁ……あぁ、ぐっ……!!」

「…………ごめんな。これで終わらせるから……!」

『ブルタタッ! ヒッサツマッジーン!』


グリップを引っ張り、必殺待機状態へ移行する。

バジュラブレードを構えてミノタウロスへ突進、懐に潜り込むと敵の腹に刃を当て、トリガーを引いた。


『バジュラ!デモニックブレイク!!』

「………………たぁぁっっ!!」


必殺の一刀がミノタウロスを両断した。断末魔の叫びと共にミノタウロスは跡形も無く爆発し、残り火だけがそこで静かに燃えていた。

変身を解き、元の俺に戻る。


「………………………………」

「宝笑さん!」

「…………大丈夫?顔色、良くないわよ」

「あぁ、いや…………ははっ、駄目だよなぁ……倒すって決めた以上ちゃんとしなきゃ……言い出しっぺは俺なのに」


頭を搔きながら誤魔化すように笑う。多分、我ながら情けない顔になってるだろうな。


「人間のように意思や自我を持つ相手と戦うのは初めて?」

「う、うん」

「なら仕方ないわね、割り切れないのも無理ないわ。

ただこれは戦い、まして世界の命運をかけた戦争よ。今回のような件は今後も幾度となく出会すことになる。今の内に耐性はつけていきましょう」


言葉とは裏腹にフィーニアスさんは優しい口調で語りかけてくる。


「魔修羅…………」

「魔修羅って…………」

「奴らも魔王軍か…………!?」

「でも何のために……?」


ふと顔を上げると、村の人達がザワつきながらヒソヒソとこちらを見ている。


「これ、マズくないっすか……?」

「こんなことあろうかと荷物を纏めておいて正解でした」

「用意がいいわねぇナハト」

「また逃げるのかよぉ!すいませんでしたぁー!!」


何にも悪いことはしていないにも関わらず、俺達は逃げるように村を後にしたのだった。



「行ってしまった…………」

「村長、奴らは……」

「…………少なくとも悪人ではないだろう。わざわざ自作自演までして我々の目を欺く必要も、逃げるように立ち去る必要もない。この村を助けてくれたことも事実だ」

「それは……」


「善の魔修羅か……あんな存在もいるのだな。

たった一日の出会いだったが、気持ちのいい青年達だったよ」





閲覧ありがとうございました。いつも見てくださっている方々には感謝感謝です……

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