家族との寂しい別れ方
学校を辞めることを親族に話すと話した人みんなが僕に反対の意見を言う。賛成の意見はなかった。
あんだけ優しかった祖母は
「もうあなたのことで心配したくない。」
暗い顔でそう言うだけだった。急に冷たくなったように感じた。
祖父は反対の意見を言いながらも優しくて熱かった。僕への思いやりの気持ちが伝わってきて嬉しかった。
父は僕のことを理解してるアピールのために中立っぽいことを言った。
しかし、ぽいだけで中身はただの反対意見だった。
「やめてお前はこれからどうするんだ。」
これは父の言葉だ。僕はこの言葉が嫌いだった。この言葉の回答はどんなふうに生活をするかではなく、金をどうするのかというものだ。
父は口癖のように金のことは気にするなと息子である僕に対して器を大きく見せようとするがその本質は小物でお金のことが気になって仕方がないのだ。
さらに厄介なのがこの回答が父の望む金の稼ぎ方でないならずっと問われ続けることになる。
しかし、僕はここで絶対に譲るべきではないと知ってる。ここで父に気に入られるような答えを言えば後々自分が苦しくなるだけだと。
僕の回答はこれだ。
「冒険者にでもなるよ。」
はっきり言って冒険者という仕事は人手不足が常だ。賃金が安いくせにリスクもある割に合わない仕事だが、確実に飯は食っていける。なぜなら冒険者になれないことなんてないからだ。
「そんな社会の落ちこぼれになるのか。若くて体が健康なうちしかできんぞ。」
父は無駄にプライドが高い。冒険者を社会の底辺だと言って見下して自分の自尊心をいつも満たしている。父のこの性質は嫌いだ。
「それに冒険者じゃ生活できんだろ。税金はどうするんだ?保険は?」
はぁ…。
冒険者の賃金だけで生活ができないのは毎日酒にギャンブルに女に金を使ってるやつだけだ。ただの偏見だ。
そして税金とか保険とか難しい言葉を使って僕を諦めさせようという魂胆が見え見えだ。
(僕はただ、応援して背中を押して欲しいだけなのに。)
父の人の気持ちを推し測れない性質はもっと嫌いだった。
「父さん、冒険者の賃金なら貧相に暮らせば問題ないよ。それに、税金や保険のことも調べてある。安心して。」
僕には欲がない。生活は最低限でいい。食事も貧相で構わない。金と労働時間を極限まで減らして"ある特別なこと"に時間を当てるつもりだ。
まだ何か言いたそうな父を前に僕はさっさと切り上げるために席を立つ。
「1週間後に家を出る。そのための準備で忙しいから。」
そう言って自分の部屋へと戻っていった。それ以来、父とまじめに話すことはなかった。