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屋根

作者: 高嶺

「お前のうちって姉ちゃんいたっけ?」‬

ある日友人が突然私にそう言ってきた。‬

「おれんちは女は母ちゃんしかいないけど」‬

「そうか。いや、昨日お前んちの屋根の上に痩せてる女の人がいてさ」‬

「気のせいじゃないのか?後ろのマンションがベランダに出てるのを住民と見間違えたとか」‬

「うーん、そうかも知れない」‬

友人は煮え切らないようだが、「いるはずがない」と言う話で終わりにした。


その夜、普段忘れているくせに妙に頭に引っかかってしまい考えているうちに昔のことを思い出した。

「成人するまで屋根に上がってはいけない」

それが我が家に伝わる言い伝えだった気がする。

私が幼い頃に亡くなった祖父が言っていた。

他にも何か言っていたが忘れてしまった。

しかし危ないからか、高所恐怖症だから大人も上がりたがらなかった。

そんな言い伝えすっかり忘れているであろう兄も成人を迎え、まだ暫くあるが残すところ私だけとなった。



ある風の強い日。

洗濯物が飛んでしまったと後ろのマンションの住民が訪ねて来た。

知らない人を家に入れるわけにもいかず、あいにく家族も出払ってしまっている。

面倒だがやむを得ず私が取ることとなった。

普段許されないことをしている背徳感に少し心が躍るようだった。


訪ねて来た住民を庭で待たせ私は自分の靴を持ち、自室から屋根に出た。

壁伝いに下屋を歩いて見たが、それらしいものはなかった。

下にいる住民に伝えると、飛ばされたのを見て急いで出て来てしまったから落ちた場所はわからない、もっと上かも知れないと言っていた。

そんな高いところは私には取れない。

場所だけ確認して大人に任せようと思い、私は2階の屋根を見上げた時ギョッとした。

黒いワンピースを着た痩せた女が私を見ていた。

肌は死体のように真っ白で、骨のように痩せているわけでもなく生きているような死んでいるような。

顔ははっきりとは見えないが瞳は虚で何処を見ているかわからない。

でも私をしっかり見据えている。


そしてその時、祖父の言葉をふと思い出した。

「あいつは死期が近いやつにしか見えないよ」


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