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偶然の旅人  作者: 池田瑛
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2017年3月17日

 私の住んでいる地域の桜は、4月2日に満開になるらしい。だが、そんな話はどうでも良いのだ。

 

 今、私は、パソコンの横に置いた二千円札に大変困らされている。目の前に二千円札が存在していて、その存在が私をひどく困惑させている。ちなみに言っておくが、こんな紙幣があったっけ? などと首を傾げるほど私は世間に疎くはない。

 ちゃんと二千円札が、2000年に発券されたことくらい知っている。そして、この二千円札は、2001年の4月の桜が咲いている時期に、私が使った二千円札である。間違いない。16年振りに私の手元に戻ってきたようだ。金は天下の回り物というけれど、これはお金を抽象化した概念であると私は認識していた。具体的に、使ったお札がまた自分の所に帰ってくるなんて想像をしたことなど一度もなかった。


 少しだけ昔話をしたいと思う。2017年3月17日のことだ。


 2017年3月17日に、私はスーパーで買い物をした。普段はクレジットカードで支払うのだが(マイレージが貯まる)、クレジットカードが別の財布に入っていた。昨日まで名古屋に出張に行っていて、旅行用の財布にクレジットカードを入れっぱなしにしていた。

 牛乳とパンとベーコンとレタス。千円にも満たない金額だったのだけど、一万円札しか財布に入っていなかった。ちなみに、スーパーのポイントカードは財布に入っていた。


 そしてお釣りを貰った。二千円札が混じっていた。レジに入れておくと紛らわしいから、さっさとお釣りとして使ってしまいたいのかな? なんて思った。釣り銭を誤魔化された訳でも無いし、立派な日本銀行券だし、支障はない。私もさっさと使ってしまおうとだけ思った。


 私は家に帰って、家計簿を付けた。

 クレジットカードでの買い物が良いのは、明細書が貰えることだ。スーパーでの決済履歴は、食費に分類できるし、アマゾンの明細は書籍だし、いちいちレシートを見ながら記入しなくて済む。今回は現金で支払ったから、レシート見ながらパソコンに金額を記入する。


 私は、財布からレシートを取り出した。


 どうして私は気付いてしまったのか。二千円札を表裏逆に入れていれば、私はその二千円札が、2001年の4月某日、桜の咲いている時期に、私がJR線の上野駅で使った、使ってしまった二千円札だと気付かなかったかもしれない。何事もなく、私の手元を離れていたかもしれない。


 どうして私は気付いてしまったのか。どうして今頃になって、その二千円札は私の手元に戻ってきたのか。

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