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とある女の詞

作者: Sala

読む人が読めば何の話かわかります

いつも以上に人を選ぶものです

苦手な方、嫌な方は即ブラウザバックをしてください


1週間ほど前に書いたものになります

あの頃の自分ならばこれを答として出しませう

ただただ走り続けていた

何も見えない、光のない世界の中、夢中で駆けた

どれが正解かわからない

どこに行けばいいかもわからない

それでもひたすら走っていた


何かに追われていた

それは現実でもあり虚像でもあった

ありとあらゆる色々なものから逃げ惑っていた

人に動物、無生物……この世にある全てを恐れた

自分自身ですら信じられず怯えていた

されどそれを言うことも出来ず、虚勢を張り続けていた

(わら)う声に(いざな)う声、(ゆが)んだ笑みに濁った瞳

ずっとそれらに惑わされていた

それでもその中、独りで進んでいた

いや、もしかすると退いていたのかもしれない

それすらわからぬほど混乱しながら足を動かしていた


周囲は闇に覆われていた

明かりなどなかった

道すらわからない

ここが何処かなど応えようもなかった

救いの手もなかった

好意を抱き合い体を重ね合わせる関係となった者からは、実は嫌いだったと言われ

付き合った者からは都合のいい女のように扱われた

相談した者は理性を失い獣となった

その中で何処か壊れ、抱かれることに執着した

そこで得られる一時の快楽でもって愛を得ようとした

その温もりで何かの代わりとした

それがさらに自分を苦しめると気づいた頃には遅かった

道化のように振る舞い、常に演じていた

演じている自覚すらなかった

本来の自分はうまく言えず周囲に押し負ける存在だった

されど生きていくために何とも思っていないふりをして動いていた

求められた自分であろうとしていた

淫らな行為は好きな人としかしたくもない

気持ちいいともあまり感じない

自身から手を出すなどできやしないこと、実は自分から接吻(せっぷん)するのも恥ずかしいなんてことも隠し、経験者らしく振舞った

期待に応えようと必死だった

真面目で母親のようにいなさい

姉なのだから我慢しなさい

これをしなさい

あれをしてはいけない

多くの(しがらみ)の中、逆らってはいけないと生きていた

その中で分裂し、男か女かさえ不明となった

自分に男を見出され、性別も怪しくなっていた

自分の境界線が薄れ、ほぼ何も思わなくなった

感情がわからなかった

それが異常であることすら気づけなかった

その状況でも私はがむしゃらに生きていた

人形のようだ、生きているけど死んでいると言われながらもそこにいた


半分以上諦めもしていた

どうせ光などないと

救いなどありはしない、この世に綺麗なものはないと

わかってもいた

このままではいつか死ぬだろうと

己が手で命を絶つだろうと

もしくは何かに殺されるだろうと

気付いていた

それでもどうすればいいのかわからず、これで仕方ないと諦めていた

『今までしてきたことの報いだ

その分のつけがやってきただけなんだと

自分を縛りつけるこの鎖がなくなることはない

断てるわけがない』


そんな最中である

私が彼と出会ったのは

こんな自分を彼は受け入れてくれた

慰めてくれた

見つけてくれた

(いびつ)な私の話を聞き、人を傷つけてばかりの私を

勿論ただ八方美人や優柔不断的な優しさでない

叱咤(しった)してくれる優しさがあった

それでいいと思っているならまだしも違うなら行動しろと、足掻(あが)けと

どうせ自分じゃどうにもできないのだ

彼に従い動いてみた

するとどうだろう

事態が進み、少しずつ光が射し込んできた

自身のいる場所が見えてきた


私は彼の中に彼でないものを見た


(尚、当時は彼なのか誰なのかわからず混乱していた

今だからこそそうだったのかと思えるだけである)


ただその彼でないものに救いを求め、助けを乞うた

けれどそうして私の心が照らされても、自分は自身を責めた

この穢れた私がその御方の前に立てるわけがない

その御方のところに行くためには、色々なことをしてからでないといけないだろうと

その御方の書が言葉となり、見る度にすっきりする時もあれば、泣いたり叫んだり苦しんだ

自身の(みにく)さが(あらわ)になり崩れおちたくなった

やはり自分などダメなのだ

自滅するしかないのかと

また私を蝕む声が聞こえた

幸せになれるわけがないと

異形な姿が見えた

咎められしことをしてきた自分が

(ささや)く声がした

ほら、死ねよと

誰かが嗤った

その顔は歪んだ見覚えのある顔で


また、その中で彼はある書物を持って砕いてくれた

そんなことはないと

命持つこの書を見よと


私は泣いた

一筋(なみだ)が流れた

呼吸が荒くなった

――嬉しかった

ただただ心の中で叫んでいた

この罪深い私すらもいいのかと

何も出来ない何もない、矮小(わいしょう)な存在なのに

ここにいる意味も価値もない人間なのに

赦されるのかと、赦され続けるのかと、永久に赦されるのかと

あの御方が私のために背負ってくださったのかと

あの声も姿も全て、紛いものであり、それらは既に息絶えているのかと

死者の声が聞こえているだけなのかと

こんな自分でも救われる

自分を責め立てるモノから

自分に疵つけるものから

自身じゃ何も出来なくて当然なのだ

しようと頑張るほどしたくないことになってしまうもの

心でその御方を求めていても体はそれ以外に縛られている

こんな私のためにその御方は雲隠れし、また舞い戻られたのだ

嗚呼、なんと喜ばしい

罪に押し潰されるのでない

罪を自分で背負いどうにかしようとするわけでない

ただその御方にこれら罪や重荷、自身のこれからや命を委ねればいいと

この言葉にできないほどの、震えるほどの、痛いほどの歓喜

自分自身に何も無い

欠片ほどの価値もない存在

罪で埋もれており救われるに値しない者だというのに

知らなくてはただ滅びるだけだったはずのこんな私に

貴方様は声をかけてくださるのか

見つけ出し名を呼んでくださるのか

罪から解放してくださったのか

救いだし愛してくださるのか

この体を一度果てさせ、再び息を吹き込んでくださるのかと

貴方様により生かされ、また生きていくのだと

最もこの時には言葉としては出なかった

ただ言い尽くせぬほどの安堵や喜びに満ち溢れていた

一方その頃、体は足掻いた

それが嫌だと叫んでいた

声も姿も拒絶していた

自由にさせろ、素直に一緒に逝けと

けれど私自身はどれだけ待ち望んでいたことだろう

自分を救ってくださる方の存在を

導いてくださる方を


今はどうであろう

勿論声は聞こえるし姿も見える

されど前よりも勢力は衰え、貴方の傍にいたい自分()のままでほぼいられる

誘惑するもの、妨害するものもある

されどそれに負けることは無い

その御方がどうにかしてくださるだろうから

本当に危ない時は色々な策を講じてまで守ってくださると知っているから

弱くなり虚勢を張ることも演じることも出来なくなった

それに伴い、あれほどまでに狂い求め疼いていた体が収まった

勿論そういった色欲が起こることもある

それでも、誰でもいいというわけでなくなった

一番初めの……まだ何も知らない(うぶ)だった頃に戻ったかのように、たった一人だけにと思えるようになった

劇としての表現はほぼできなくなった

あれだけ固執し捨てきれないと思っていた表現さえ、いつの間にかなくてもいいと思えた

そして捨て去った結果得たものもあった

消えかけていた喜怒哀楽も戻った

嫉妬心も薄れ、素直に見れるようになった

評価をそこまで気にしなくなったから

人と自分とを比べることが少なくなったから

未来を見、進んでいこうと思えるようになった

自分が(恐らくその御方の望むように)作り替えられている風に思える

今まで執着していたものまでができなくなったりもした

けれどそしてそれが妙に喜ばしかった

これらも伝えてくれた彼とその御方のおかげである




きっと間違えることもあるだろう

むしろ間違えないことがないだろう

これが正しいのかもわかっていない

けれどわかっていることもある

私は確かにその御方と出会い、言葉を聞き知る中で、慈悲に慰め、愛と命を得たのだろうと

その御方に語りかける中で安らぎを感じる

書や言葉の中からうまく言えないが何かを受け取る

泣き叫ぶ私や倒れ込む私を抱き締め撫でてくれるように思える

もう独りじゃないと伝えてくれる

私の体を用い、その御方が佳きように、はからってくださるだろう

未来への希望や光を見、導かれることを知った

あんなにも過去や何かに縛られ死を見ていた己に、生を与えてくださった

空虚だった自身の中に言葉が溢れ出し、書きたくて仕方なくなる

それは枯渇し一文字も書けなかったもので、物語や詩となった

伝えたくて、残したくて堪らない

零れ出て止まらないなど、一体いつぶりのことであるか

否、ここまでは初めてかもしれない

そこにはその御方への想いを一部綴ったものもある

私にも願うことはある

けれどただその御方の望むがままに

そういった箇所にそれはあらわれている

実の家族よりも私を心配してくれる存在を知った

同じようにその御方を知り導かれた方々の優しさに触れた中で、なんと温もりを感じたことか

交わる中で癒され震えたことか

冷たい視線や押し付ける親戚

心無い言葉をかける周囲

それと比べるまでもないほど安心するあの場所よ

その御方に関することに満ちた空間よ

間違えし時も書や言葉を通じ教えてくださる

それは私のことを考えてくれるからこそできること

そう知っているからこそ、こちらも自分なりに真摯に向き合いたい

その関係は素晴らしいことこの上ない

また、もうあの常闇の世界になど戻りたくない

あの混沌としたところに行くことを拒む

過去の自分に戻れば今度こそ終焉を選ぶだろう

そんなことはもう御免である

死の世界などもう嫌で仕方ないから


私はその御方に導かれ歩んでいきたい

同じくその御方に導かれた方々と共にその御方についての書物を携えて

その御方の哀れみや慈しみ、愛に希望と恵にあずかりながら

後に訪れる平安の世を、空虚でもなく紛い物でもない命を得て進んでいきたい

決してもう独りでない

その御方が傍にいらっしゃると信じているから

その御方に(すが)り付き生きていきたい

また望まれるよう私を作り直してくださるだろうから



うまく言い表せてやいないだろう

おかしいところもあるかもしれない

けれどこれがその御方と出会うまでとその後を私なりの言葉で書き記したものだ

誤字脱字などございましたらご連絡ください

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