突撃
僕達は彼らの家に泊めてもらった。
一刻も早く周を助けに行きたかったが、夜が近いこと、準備が必要だということで、救出は明日になった。
(僕らは何故こんな世界に集められたのだろう? 本当なら今頃マンガなんかを読んで過ごしてるのになぁ)
僕は頭の中で色んな事を考えていた。
グローリーワールドって? 何故僕ら3人なんだ? 明日、どうやって周を助ければいいんだろう?
アレコレ考えていたが、流石に疲れが溜まっていたのだろうか、気付かない内に僕は深い眠りに落ちていた。
次の日の朝。
「起きろコラ。朝だぞ、準備しろ」
一足早く起きていた光太郎に叩き起こされた。
「んああ……ゴメン、すぐ起きるよ」
家の中のリビングにあたる所へ出てみれば、リューさんは既に出掛けているらしく、エルが朝食を作っていた。
「おはよう。昨日はよく眠れた?」
「うん。考え事してたら、いつのまにか寝てたみたい」
「疲れてたのね。じゃあこれ朝食だから食べて」
エルが朝食をテーブルに持ってきた。
得体の知れない木の実のスープ、得体の知れないサラダ、得体の知れない肉が並べられた。
「え……朝からこんなに……?」
「普通でしょ?」
「僕、朝は小食で……」
「ばーっか、お前そんなんだから身体が小せぇんだぞ。俺は簡単に平らげたぜ?」
光太郎がお腹をポンと叩いた。
そりゃそんだけ容量でかけりゃ入るだろうね、と言おうとしてやめた。
口は災いの元だからね、うん。
「とにかく、これから戦いになるかもしれないんだから、ちゃんと食べなさいよね」
「え、エルも来るの?」
「なによ。悪い?」
「なによって……別に悪くないけど、いいの? 僕らのことに巻き込んじゃって……」
「いいの。そろそろこんな時があるんじゃないかって思ってたから。その内国王にも私達がいるってバレそうだしね。兄貴ももうすぐ帰ってくるんじゃない?」
そういうとエルは支度を始めた。
僕はエルの作ってくれたご飯を何とか平らげた。
味は意外と美味しかった。
ちょっと失礼かな?
「あ、そうだ光太郎。少し話が……」
急にトビラが勢いよく空いて、リューさんが入ってきた。
その顔はとても焦っている。
「大変だ!! 城の者やロボットが俺達のことを探し回ってるぞ! 今すぐここから離れなければ。全員支度はできてる?」
「やば……僕、何も終わってないです」
僕がゆっくりと手を挙げた。
すると光太郎が僕の足元に軽い荷物を放り投げた。
「安心してください、荷造りしてますから。なんてな、飛鳥の分までやっておいたからよ。俺も周りの事が考えられるようになってきたんだ。第一、荷物っつっても俺らはそんなにないしな」
光太郎がニヤリと笑った。
「……ありがとう!」
僕は光太郎の新しい一面に驚きながらも、荷物を受け取った。
自分勝手な光太郎が他人の事も考えられるようになっていたなんて。
(少しづつ変化が生まれてきてる?)
「よし、それじゃあ裏ルートから行こう。僕達しか知らない道だ。こんな所で無駄に魔法を使いたくもないし、勝てるような人数じゃなかったからね」
そう言うとリューさんは台所の下の扉をカパッと開けやた。
そこには大人が1人通れるほどの幅の地下道があった。
「昔、父が魔法で作った道なんだ」
リューさんのお父さんがどういう人なのか気になったが、深くは聞かないことにした。
僕達は一列で中に入り、扉を閉めると光が一切入ってこない闇になった。
そこで、リューさんがあらかじめ持ってきていたランプに火を灯したことで、周りの視界が明るくなっていった。
その時、地上ではいくつもの爆発音が聞こえていた…………。
ーーーーーーーーーーパイプ町地上ーーーーーーーーーー
「場所という場所を探し出せ。隠れ場も見逃すなよ」
全てのロボットの指揮を任されている軍事指揮官のプライスが、ロボット達に指示を出している。
彼は一つ前の国王の時から国に仕えていた。
その時から彼は一目置かれている存在であり、借りた恩は2倍にして返すというほど仁義を通す男だった。
そのため兵士からの信頼も厚く、国民からの支持も得ていた。
〝彼なら次の国王になってもおかしくない〟
国民の誰もがそう思っていた。
ところが、先代の国王が突然いなくなってしまい、当時、国王の側近だった現国王『ガイクル』が国王に即位した。
なぜ彼が国王になることが出来たのかは誰にも分からなかった。
ガイクルは王に即位したと同時に、城の大半の兵士や仕えていた者をクビにした。
当然、いきなりクビにされて「ハイそうですか」などと割り切れるわけもなく、多くの兵士が反旗を翻した。
そして、いつの間にか作られていた数百体のロボットと兵士とで戦争が勃発する。
その時プライスは十数人の部下と共に、ガイクルと会っていた。
プライスは昔、ガイクルに命を助けられたことがあり、相手が誰であろうと借りた恩は2倍にして必ず返す。
プライスは部下と共にガイクルに手を貸すのを承諾した。
兵士とロボットの戦争は、序盤で兵士側が優勢であったが、次々と魔法使用回数が0になっていき、数が多いロボットに殺されていった。
元々この国では争いがなかったため、兵士の数が少なかったのだ。
そして次にその刃は国民へと向けられ、町を出て行くもの、反逆者として殺されるもの、捕虜として捕まる者が出てきてこの国は破滅していき、現在にいたるーーー。
ロボット達が次々と家を取り壊している。
「最近の国王、荒れすぎじゃないか?」
「そうか? 前からこんなんだった気がするが……。まぁ確かに子供2人のために町を壊すなんてやりすぎだとは思うけどな」
部下の2人が話し合っている。
「コラ、あんまり国王の悪口を言うもんじゃないぞ」
プライスが割って入った。
「しかしプライス隊長、どう考えても国王のやり方は仁義に背いてますよ」
「それは俺も気付いてる。だからといって今の俺達にはどうすることもできないさ。今はただ、国王の命令に従うだけだ」
「本当にそれでいいんですかねぇ?」
「どこにモ生体反応ハありまセンでしタ」
ロボット達が捜索を終えたのか、戻ってきた。
「そうか……」
プライスはう〜むと頭をひねった。
「本当はいないんじゃないですか?」
「あるいはそうかもしれんな」
すると1人の部下が叫んだ。
「隊長! こちらに通路らしき穴を発見しました!」
その部下は先ほどまで飛鳥達がいた家の残骸の所を指差していた。
プライス達が見に行くと、扉が壊れて下へと続く穴が見えた。
「なるほどな。俺達が来るのに勘付いてここから逃げ出したか。罠という可能性もなくはないが、恐らくはいるだろうな。よし、今すぐ俺達はこの通路を通っていくぞ」
「了解」
「お前達は先に城に戻れ」
「リョうかい」
プライスはロボット達に城へ帰るよう命令し、穴の中へと歩をすすめた。
「さぁ行くぞ、俺に続け。灯りよ!」
手から光の玉が現れ、自分が動くと光の玉も動き、周りを照らし、部下達がプライスの後を追った。