とある薬師のVR②
ラグ先生が言うに、この私達へのプレゼントは、この星の住人の方々が災害時に手伝ってくれるという私達プレイヤー、星渡りの旅人への期待と希望を込めたプレゼントらしいです。何でも住人の皆さんが募金してくれた金銭が私達プレイヤーへの支援として使われているそうで、講座で必要な武器や道具の支給などがこの支援金から出されているようです。
この話を聞いて、私は改めて私が思っているよりも、この星の人たちに期待されてるんだなと感じました。これはより、いっそう回復薬作りに励まなければ。まだ【調薬】のスキルもGET出来ていない私が言うのも何ですが……。
というか、隣の紫乃という男の子は、予めこの事を知っていたのですかね? だから、彼はこっちの方が金銭的に安く済むのだと言っていたんですね。確かに、このアタッシュケースに入れられた道具類を見る限り1つ1つ揃えるとお金掛かりそうですもんね。それが500Sの講座で【調薬】スキルまで手に入るということです。彼はそれを見越してこの講座を受けたのですね。改めて考えると凄いですね。みんな同じタイミングでこのゲームを始めたというのに、私よりも遥かに先を行っている気がします。見た目ヤンキーなのにやりますね。
「というわけで、さっそく授業をして行くわねー。まずは【調薬】で使う道具の説明からよー」
1つ1つ説明していくから実際にケースから取り出して確認してねーと、ラグさんは自前のなのかアタッシュケースをもう1つ取り出しました。
「まずはこれ。すり鉢とすり棒ね」
と、ラグさんがケースの中から取り出して見せたのは、言葉通りのすり鉢とすり棒。料理の際にゴマをする道具ですね。私もラグさんから貰ったケースの中からコンパクトに収納されているお椀サイズのすり鉢とすり棒を取り出してみます。
「このすり鉢とすり棒は、大体察しはついていると思うけど、さっきの時間説明した薬草や素材を磨り潰して混ぜるために使うものよ。使用前と使用後にはキチンと洗ってから使ってねー」
うん。大体予想通りの使い方だね。これで薬草を磨り潰して混ぜる姿を思い浮かべる。よし。イメージは完璧だね!
「では、薬草を用意したからさっそく薬草を磨り潰してみましょうか」
と言ってラグさんは、カバンから薬草を取り出して私達に1枚ずつ配ってくれます。
ふむふむ。【薬学】の授業でも見ましたが、ほうれん草のように細長くて、シソの葉つまり大葉ですね、その葉っぱのようにギザギザとした葉っぱです。
「こら、紫乃君! さっそく磨り潰したらダメよ。キチンと道具を洗ってからと言ったでしょ」
私が貰った薬草を見ている間に、隣の彼がラグ先生に注意をされました。
「なんで? 洗わないからって何か問題でもあるの?」
ですが、彼は注意されてもラグ先生に口ごたえします。むむっ反抗的ですね。中学時代はクラスに1人はこういう子いましたね。
「問題はあるわねー。紫乃君は、汚い道具で作られた薬は飲みたいと思うかしら?」
ですが、反抗的な彼に対してラグ先生はおっとりとした口調で彼の疑問を説きました。
「あー分かった。薬の品質が下がるんだな?」
そんなラグ先生の説明に納得したのか、彼は頷いてそんな事を言いました。
あれ? 話が噛み合ってないと思うのは私だけですかね?
「そうねー。汚い道具を使って作るものに高品質な物は作れないわねー。だから使用前と使用後はキチンと道具を洗うのよ」
な、なるほど。確かに汚い道具で作られている薬は回復量が少なそうですもんね。理解しました。私カナ、回復薬を作る際には必ず道具を綺麗に致します! というか、隣の彼はラグ先生の言葉を聞いてそれだけで品質が下がると一瞬で分かったのですね。何という頭の回転の速さ…。見た目ヤンキーなのに。
という訳で、私たちはすり鉢とすり棒を綺麗に洗います。あ、言い忘れていましたが、この教室には水道がというか、流し台があるのです。学校の理科室のような教室ですね。厳密に言うと水道管は通っておらず、水を生み出す魔法道具らしいのですが…見た目は普通の水道の蛇口です。なお、下水管と下水道はある模様ですね。
すり鉢とすり棒を洗った私達は、いよいよ薬草を磨り潰す作業に移ります。
「そうねぇー。今回は初級回復薬を作る予定だから磨り潰しは10回ほど混ぜるだけでいいわよー。それ以上は自分の気分次第ねー」
ラグ先生がそういうと私の視界右端に小さいウィンドウが出ました。
ウィンドウには、中心から左側にドンと描かれた円グラフがあり、真ん中に10という文字が書かれています。右側には縦に伸びた棒グラフのようなものが3つ。そして、上部には『混ぜろ!』と言う文字があります。
お? これはもしや薬草を混ぜるパラメーターですかね? この円グラフの真ん中の数字がラグ先生の言った10回混ぜるという数字という事?
とにかく、私はさっそく薬草を混ぜてみることにしました。
すると、円グラフの一番上にあった赤いマークが円に沿って周り始めます。どうやら、私の推測通りのようですね。このウィンドウは、この混ぜ混ぜ作業のパラメーターのようです。
私が早くすり棒を回すと円グラフの赤いマークも早く動き、遅く回すとマークも遅くなります。そして、マークが一周すると真ん中の数字がカウントダウンしていきます。
私はこの作業が面白くて、結局のところ10回を大幅に超えて30回ほどグルグルとしてしまいました。
「じゃあー次の作業に移るわよー。次に使うのはこれらねー」
と私達が混ぜ混ぜしている間に用意したのか、ラグ先生の机には、これから使うであろう道具が置かれていました。それらは普段見慣れている物ではありますが、どうやらこの世界では回復薬を作る時に使われる物となっていました。ラグ先生が用意していたのは、そう、どこからどう見てもコーヒーを入れる道具類でした。
私の両親は2人ともコーヒーが大好きなので私の家にもあります。それらは、コーヒーを自分で淹れる時に使われるペーパーフィルターやドリッパー、サーバーにドリップポットと呼ばれる品々でした。もちろん、貰ったアタッシュケースの中にも綺麗に収納されていました。
もうこの道具たちを見せられた時点で大体分かります。どうやって回復薬を作るのかを。それは私が思っている通り、コーヒーを淹れる作業…ペーパードリップという作業とほとんど同じ作業なはずです。
サーバーと呼ばれる容器の上に、ドリッパーと呼ばれる穴の開いたカップをセットし、そのドリッパーの中にペーパーフィルターをセット、そこにコーヒー豆を入れて、あとはドリップポットからお湯を何回かに分けて注ぐとコーヒーが出来るのです。
おそらく、回復薬を作る場合には、コーヒー豆のところに今混ぜて磨り潰した薬草を入れるのでしょう。
そう道具を見た瞬間に頭に浮かんだ私の考えは、案の定、ラグ先生がした説明とほとんど変わりませんでした。
フフフ…。あのコーヒー中毒者(両親)たちのせいで、私のコーヒーを淹れる技術は高いのですよ。
私は丁寧にそつなく作業を完了させ、磨り潰した薬草から回復薬を抽出します。ちなみに、今回は予めラグ先生がドリップポットにお湯を入れてきてくれていたのでそれを使わせていただきました。
「あらーカナちゃん上手ねぇー」
と、作業する私の姿を見てラグ先生も褒めてくれました。
「これであとは、ある程度冷まして瓶に詰めたら完成よ。だから、冷ましている間に今回は使わなかった道具の説明や他の説明もするわねー」
と言ってラグ先生は、説明を始めました。
アタッシュケースには入っているけど、今回使うことの無かった道具は、軽量カップ、スプーンの他に幾何学模様が描かれた魔法陣っぽい紙だ。軽量カップやスプーンの使い道は、そのまま薬草など素材の量を測ることが出来て、分量を調節するのに使われる。また魔法的というかゲーム的というか、この軽量カップやスプーンで量を測る際には、小さいウィンドウが出てきて重さを表示してくれるらしいし、どれだけ掬いたいと声に出すことでその通りの量の素材が掬えるという優れものらしい。うん。便利だね。この世界。
幾何学模様の描かれた紙は、やはり私の思っていた通り魔法陣らしく、10回使用したら効果が失われるという使い捨てだが、魔法の効果を使えるというものらしい。そして、ケースに入っているのは、熱と乾燥の魔法陣が2枚ずつらしく、熱の魔法陣はテーブルなどに敷いてから使うことでどこでも水を沸かせるようにとのこと。乾燥の魔法陣は、薬草を粉末状や固形にしたい場合に使うとのことだ。使い終わったら、どちらも生産ギルドか街の雑貨屋さんや本屋さんに売っているとのことなので、そこで補充すると良いとのこと。これで、アタッシュケースの中に入っていた今回使わなかった物の説明は以上だ。
次にアタッシュケースの中に、はいってはいないけど、資金があったら買い足して欲しい道具の種類をラグ先生は教えてくれた。
それは、固形型の回復薬を作る際に使う形を整える道具や、水を生み出す魔法陣の描かれた石など【調薬】のレベルが上がったら買い足して欲しいものや、あったら役立つものなど様々だった。
「それからねぇ。これは薬師じゃなくて何かを生産する人に言えることなんだけど、自分の作った生産物の効果を確認するために、是非とも【鑑定】スキルは取得をオススメするわ。【生産者の心得】っていうスキルで、ある程度代用は出来るのだけどね。それと薬師になるのなら【看破】極力持っていた方がいいわ。相手に薬を使用した時に実際の効果を確かめる時に必要よ。どちらのスキルも知力が3以上は無いと取得出来ないスキルなんだけどね。私からのオススメよ」
おー【鑑定】に【看破】スキルですと! ラグ先生がオススメするのなら是非取得しなければなりませんね。私は頭の中にメモメモと書き込みます。
「じゃあ私の話は一旦中断して、冷ました回復薬を瓶詰するわよー」
ラグ先生はそう言って、カバンから空の牛乳瓶とコルクで栓のされている試験管を複数個取り出しました。
牛乳瓶は分かりますが、試験管にも回復薬を詰めるのですか?
「では、瓶の説明をするわね。本当は回復薬に入れる容器は何でもいいのだけれど、私が今持っているこれらは言わば、販売するための規定のための瓶よー。こっちの牛乳瓶には5杯分で、薬草1つから出来る…そのサーバーの回復薬が1つ分入るわ。こっちの試験管の方は、10杯でサーバー1つ分ね。牛乳瓶は試験管2本分と言う覚え方もあるわね。あと回復薬を分けたからと言って回復量が変化するということは無いから安心してねー。サーバー内で出来ている状態がそのままの品質で回復量よ。もちろん、これに手を加えるのならその限りじゃないわよー」
なるほど。なるほど。例えば、サーバー内の回復薬の回復量が30ほどだとすると、試験管10本に分けても、試験管1本の回復量は30ということですね。
あれ? でもこれじゃあ、サーバー内の回復薬を分ければ分けるほどお得なんじゃ…。
「出来た回復薬をどれだけ分けても回復量は一定なのか?」
すると、隣の彼が私が思っていることと同じことを質問しました。むっ。私が質問したかったのに。
「いい所に気付いたわねー。本当はそうだったら回復薬の出回る数ももっと多くなるのにねー。残念ながら、この試験管1杯分が最小限回復薬で必要な量よ」
やっぱり、そうなのかぁー。そんなに上手くはいかないよね。
「逆に、牛乳瓶にいれたとしても2回に分けて服用しれば、キチンと2回分の回復量を得られるわ。一度に服用しても2回分の効果を得られるけどね」
とラグ先生の説明してくれました。
そして、私たちはさっそくサーバーから試験管に作った回復薬を注ぎます。
今回、試験管はラグ先生が用意して下さいました。本来ならば、ギルドや雑貨屋さんなどで10本100Sほどで売っているそうです。ちなみに、試験管立ても1つ100Sで売っているそうです。今回はこれまた無償で1つ貰いましたが。
私は10本の試験管すべてに回復薬を入れて再びコルクで栓をします。
「はい。二人とも上手に出来たわね。今回出来たのは、私が【鑑定】する限り、ちゃんと初級回復薬になっているわ。さて、ここで質問なのだけれど分かるかしら? 何故、回復薬を入れる容器は試験管なのかしら? 別に、入れる容器だけだったら牛乳瓶だけでもいいと思わないかしら?」
と、ラグ先生は突然私達に質問してきました。
うーむ…。確かに、容器に使用するのが何でもいいのなら牛乳瓶だけでいいはずです。そう統一されていた方が圧倒的に売り出しもしやすいはずです。うーむ。
私は頭を捻って考えますが、一向に答えが分かりません。でもそれは隣の彼も同じようです。
「ヒントは、試験管と牛乳瓶の違いよ」
ちょっとラグ先生! それだけじゃ分かりません。もうちょっとヒントプリーズです。ですが、ラグ先生がヒントを出したのにも関わらず答えが出ない私の隣で、彼はピンときたみたいです。
「もしかして、誰かに投げて使うのか?」
いやいや、投げて使うって随分と考えが暴力的ですね。人を助けるために使う回復薬を投げるとは、逆に相手を傷つけてどうするのですか?
そう私が思っているとラグ先生が口を開きます。
「紫乃君正解よー」
「えぇー!!?」
ラグ先生の言葉に私は驚きのあまりひっくり返りました。
先生! どういうこと何でしょうか!??
「ほらカナちゃん。さっきの授業で回復薬は別に飲むだけが回復方法ではないと教えたでしょ?」
「はい。習いました。確か傷口に回復薬をかけるだけでも傷が治ったりするんですよね」
私はラグ先生の言葉に先程の授業を思い出しながら答えます。
「それで、牛乳瓶と試験管の違いは、ガラスの厚さなの。牛乳瓶より試験管の方が割れやすいでしょ? いざっていう時、例えば、戦闘中とか逃走中の時は、上品に回復薬を飲んでいる暇はないでしょ? そんな時に即座に回復出来るように試験管を割って回復するの。そして、それは味方から回復薬を必要としている相手に使った方がより早い場合もあるでしょ? だから投げて壊れて回復薬が身体にかかるように使われているってわけよ」
ラグ先生に解説をされ私はようやく意味が分かりました。そうですよね。緊急時には、すぐに回復出来るほうが良いですもんね。
もう少し実践的な話をするなら、後衛さんの魔法使いや弓使いの方がこの試験管の回復薬を持っていることが多いそうで、前衛さんのHPが少なくなってきたら、後衛さんが試験管を投げて前衛さんを回復させるのだとか。ふむふむ。勉強になります。私にパーティー戦闘などという実践の日が来るかは知りませんが。
「では最期になったんだけど、少し大事な話をするわよー」
そう言ってラグ先生は私たちの注意を引きました。
「これは大体の人が勘違いすることなんだけどね。さっき回復薬を作って貰ったから分かると思うんだけど、実は回復薬自体を作るのは簡単だったでしょ?」
ラグ先生が私達に問いかけます。
思い返してみれば確かにそうです。ここまで回復薬を作るのに簡単に言えば、薬草を潰してお湯で濾しただけに過ぎません。これなら誰でも回復薬が作れてしまい【調薬】のスキルを取得する意味があまり感じられません。
「本来、回復薬を作るの誰にでも出来ることなのよね。作るだけなら。という前提がつくけどね。例えば、薬草をただ茹でるだけでも回復薬を作ることは出来ちゃうわけ。じゃあ、何故私が教えたのは、色々な道具を使った手の込んだやり方なのと疑問に思うわよね? その理由は、このやり方が一番薬草の効果を引き出すことが出来て、高品質な回復薬を作ることが出来るという事に尽きるのよ。薬草を茹でるだけでは、回復量が変わらなかったり、減っちゃたりするから、最悪薬草を食べた方が回復出来るって本末転倒なことになっちゃうの。私たち薬師が長年研究してきた結果が、今貴方たちに教えた最も効率的な回復薬の作り方なの。大体の人は自分である程度の回復量がある回復薬を作ることは出来るから勘違いしちゃうんだけどね。間違ったやり方でやっていると、どこかで必ず品質の良い回復薬を作れなくなるわ」
だから、ここから数日の間は、貴方達に教えたことは作業量も多くて、他のやり方の間違った人たちの回復薬がより早く出回って広まると思うんだけど、貴方達の方が正解なのだから手間を惜しまず、キチンとした回復薬を作ってちょうだいね。
と、ラグ先生はおっしゃいました。
「そして、最後に回復薬を作ることだけが【調薬】の役割ではないわ。【調薬】の役割はもう一つ。それは毒や麻痺などの『状態異常』に対抗するための薬を作ることも【調薬】の役割よ。そっちの方も頑張ってちょうだい。何かあれば私が相談に乗ってあげるからいつでもいらっしゃい」
これで本日の授業は終了です。とラグ先生は締めくくりました。
やっぱり、この『講座』を受けて良かったと思います。この講座を受けなかった人たちは絶対に損です。私はラグ先生の教えをしっかりと守って高品質な回復薬を作りたいと思います。
――――☆スキル【調薬Ⅰ】を獲得しました。
――――☆スキル【生産者の心得】を獲得しました。
――――☆知力のステータスポイントを獲得しました。
――――☆器用のステータスポイントを獲得しました。
――――☆メニュー項目に『レシピ』の機能が追加されました。
――――☆『レシピ』に『回復薬の作り方(ドリップ式)』が追加されました。
ラグ先生の講座を受けてから、ゲーム内時間で3日ほどが経過しました。私は日々、回復薬作りに精を出しています。ギルドで薬草を買い、ラグ先生から教えて貰った方法で回復薬を作り、作った回復薬を納品クエストでお届けしたり、一番初めに訪れた回復薬を売っているお店に卸したりして、得たお金でまた薬草を買うという繰り返しです。ちなみにですが、街の中をお散歩したりはしましたが、未だに街の外には出ておりません。勿論、戦闘も一切しておりません。が、そのおかげもあり生産スキルの方はだいぶレベルが上がってきています。そんな私のステータスがこちらです。
☆----☆----☆----☆----☆----☆----☆
☆名前:カナ
☆ステータス☆
・体力:1
・魔力:1
・筋力:1
・知力:3
・魅力:1
・器用:4
・運 :1
☆使用可能ポイント:3
☆スキル:【薬学Ⅰ】【調薬Ⅱ】
【生産者の心得】【鑑定Ⅰ】【看破Ⅰ】
☆----☆----☆----☆----☆----☆----☆
知力は、講座を受けた後に出たポイントを使って3にまで上げました。器用の方は、自力で獲得したポイントと講座で獲得したポイント、それから使用可能ポイントを使って一気に4にまで上げちゃいました。やはり、生産の作業には器用さのステータスが影響するようで、これを上げたことにより回復薬の回復薬量も少しですが上げることが出来ました。自由に使えるポイントについては、知力と器用に割り振るか迷ったのですが、何かあった時のために一応残しておくことにしました。
スキルについては、殆どの時間を回復薬作りに費やしていたので、3日でⅡまで上げることが出来ました。これは割と自慢なのです。おそらく、プレイヤーの中で私より上の【調薬】を持っている人はいないんではないでしょうか。ラグ先生の講座を一緒に受けた紫乃という男の子は、回復薬の納品などをあまり行っていないようなので。結果、私が一番と言うことです。ひゃっほい! ちなみに、これは私が回復薬を卸しているお姉さん情報です。私の他にも回復薬を売りに来る人がいるそうですが、全員が女の子ばっかりで男の子は来てないとのことです。
【鑑定】と【看破】のスキルについては、生産者ギルドの方で講座が開講されていたので、ラグ先生の言う通りに取得をしました。【鑑定】は出来上がった回復薬の回復量を見るのにとても便利です。【看破】は今のところ使い道がありませんが……いつか、誰かに回復薬を使用した際に使う時が来るでしょう……。本来はモンスターなどの強さを測るのに使うようですが。あいにく、私はそちらの使い道とも縁がありません。
【生産者の心得】というスキルは、自分が作った生産品の情報を見ることが出来るという【鑑定】に似たスキルなのですが、【鑑定】の方が記載されている情報も多く、見ることが出来るアイテムの幅も広いので今のところあまり使い道のないスキルです。スキルレベルも無いようなので、効果が増える訳もなく、今後使い道があるのか心配なスキルですね。
☆----☆ メニュー ☆----☆
☆ステータス
☆所持金
☆ヘルプ
☆レシピ
☆----☆----☆----☆-----☆
それと、メニュー項目にも、新しい項目が増えました。『レシピ』機能です。
この『レシピ』機能というのは、生産者が覚える機能ということで、作った生産物の作り方を自分で登録出来たり、人から教えて貰ったレシピを登録出来たり、教えてあげたり出来ちゃう優れものな機能です。ただ、制限としては自分が作れる生産物でないとレシピとして登録できないようで、例えば、薬師である私が料理のレシピを教えて貰ったり登録したりすることは出来ないみたいです。ぶっちゃけて言うなら、今の私には、回復薬を作る際にウィンドウにレシピを出しながら作る工程を確認するか、新しい作り方を登録したい場合にしか必要のないものです。え? それはなんでかって? それは、私にはまだプレイヤーの友達、ましてや、一緒に回復薬を作っているような知り合いがいないからだよ! 友達も知り合いもいなければ、レシピを教え合うことも出来ないじゃないか!! まさか、こんなところで、友達がいないことに悩まされるとは……。良いもんね! 私にはラグ先生とお店の店員のお姉さんがいるもんね! 全然寂しくなんかないやい。ぐすん…。
そして現在に戻りますが、私はゲームが始まって4日目にして、ようやく街の外に出る決心を致しました。
そうは言っても、戦闘の出来ない私が丸腰で街の外に出てもあっけなくモンスターにやられてしまうだけです。それで、何かいい案がないかとマイフレンド店員のお姉さんに相談してみたところ、お姉さんは、私の代わりに戦ってくれるモンスターを飼えばいいんじゃないかと、超名案なアドバイスをくださいました。
そう言う訳で私は今、ペット屋『カネス・ヴィナティキ』という何とも長い名前のお店兼従魔ギルドへと訪れていました。生産ギルドのように、周りの建物よりも背の高い3階建ての建物です。実は、店員のお姉さんに街の外にいけないかと相談したのは2日前の話なので、私は一度ここに訪れているので知っているのですが、この建物の2階から上が従魔ギルドとなっていて1階がペット屋となっています。従魔ギルドが従えるモンスターをペット屋で売っている感じですね。共同経営とでも言うのでしょうか? とにかく、私は代わりに戦ってくれるモンスターを仲間にするためにペット屋に来ていました。
店内は割と明るめの空間で、ペットのための装備品や毛並みを整えるであろうブラシなどの道具コーナーが入り口から左手にあり、右手側にはガラスケースに入った小動物、もとい小モンスターなどの愛玩用のモンスターが未来のご主人さまを待っています。
「ごめんよ。私はあなた達のご主人にはなれないんだ……」
私は、ガラスケースからこちらに向けてくる目線キラキラビームを浴びながらも脇を通り抜けます。
そして、少し奥に入ったところにあるのが、小モンスターよりも大きいサイズのモンスター売り場で、こちらはガラスケースに入るわけもなく、ましてや店内に檻がある訳でもなく、指輪やイヤリングなどの装飾品が置いてあるだけだ。その理由は、それらの装飾品の中にモンスターが格納されているからだ。私達が最初にギルドに登録して貰った魔法のカバンの言わば生物バージョンがこの装飾品なのだ。正式名称は確か『オーナメント』。まんま英語で装飾品という意味だと思うけど、この星では生物などのモンスターを格納する機能を持っているらしい。
だが、私の目的の場所はここでもない。確かに、大きいモンスターは魅力的でもあるが、私の今の所持金ではとてもじゃないが買えないのだ。
私は『オーナメント』に格納されているモンスターのコーナーを見向きもせず通り過ぎる。そして、店内の一番奥にある目的地へとたどり着く。そこはカウンターの向かいに店員さんが立っており、後ろに巨大なガチャガチャが設置されている場所。
そう、それは、ガチャ。
VRゲームが主流になった今でも昔のソーシャルゲームの名残で存在するユーザーを金蔓に変える運営の悪魔の手法。
だけど、このゲームに課金機能などついてはいない。お金が減るのだとしたら、このゲーム内通貨が減るだけなのだ。
そう私は今日、このガチャをするために、ガチャでモンスターを仲間にするために、ここに来たのだ。
女神様! どうか私に可愛くて戦闘の出来るペットを授けて下さい!!!
次話は、とある忍者のお話です。




