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とある地質学者のVR④


 カリーナ村へは、アカシヤから朝の8時半ほどに出発して、午後の1時に到着した。

 用意された馬車は2~3人用の小さな馬車で、馭者は1人。馬っぽいモンスターが1頭だった。


 馬車を導く馭者である男性はこの道25年というベテランの人だった。名前はコッチエレさん。旅の道中は、彼が馬車を引く馬っぽいモンスターに指示をだしながらも、人懐っこい笑みでお話してくれたので暇では無かった。何と言うか、当たりのタクシー運転手さんを引いた感じか。まぁ自動運転が進んだ現在、人が運転する車は本当の意味ではないのだが。閑話休題。

 そんなこちらが飽きさせない話を出来る、または、そのまま居眠りをしていてもそのまま寝かせてくれるというコッチエレさんの優しさとコミュニケーション力の高さに旅の道中は本当に快適なものだった。

 また、道中にモンスターが襲ってくるということが3回ほどあったのだが、コッチエレさんは戦闘も出来た。馬車を引いている馬っぽいモンスター、コッチエレさんの相棒であるというハーフモノケロスの半一角獣またの名を半ユニコーンのカバーロに巧みに指示をだしながら、敵モンスターを倒していく。その光景は馬だというのに、闘牛を思い起こさせるほどの迫力だった。

 その最初に戦闘を見た時は、流石は業界シェア率60%だと思ったね。戦闘も出来て、コミュニケーション力も高く、話も面白い。きっとこの輸送商会に入れる人は、某有名大学を卒業するぐらいの人物に違いない。この星に大学は無さそうだが。


「コッチエレさん。送ってくれてありがとうございました」


「いえいえ。こちらもリク様とお話出来て光栄でした。また、当商会をご利用ください。もし、その時私が空いているのなら指名することも可能ですので」


「はい。その時はまたよろしくお願いします!」


 では、私はこれで。と、コッチエレさんは、愛馬のカバーロと共に去っていった。本当に良い人だった。



 『カリーナ村』は、この星の人たちが、三つ子山と読んでいる3つの山のうちの1つ、『カリーナ山』の中腹にある小さな村だ。主要な産業はほとんどなく、村の人たちはそれぞれ自給自足の生活をしており、みんなで助け合いながら過ごしているのどかな村らしい。ただ、主要な産業はなくとも大きな特徴はある。それは、『カリーナ山』で見つかる古代の化石とそれを研究するために集まってきた者たちの『研究所』。それが、この『カリーナ村』最大の特徴だ。


 俺はコッチエレさんに聞いた通り、どこかのんびり、のどかな雰囲気が漂ってくるカリーナ村を歩きながら、村外れにあるという研究所を目指す。



「ここが『ミクロスコピウム』研究所か」

 カリーナ村の家々と明らかに違う作りの、ここだけ場違いな建物を前にして俺は呟く。よし、ここからはお仕事の時間だな。



「君が僕の依頼を受けてくれた人かい? 意外と早かったね」

 受付の女性に通された部屋にいた緑髪の男…俺よりも年下かな?は、何やら作業をしながら、俺をチラッと見てそう言うと、すぐに作業に戻った。


 まず部屋に入った瞬間抱いた第一印象は、意外とスッキリしてる、いや、物が少な過ぎないか? ということだった。

 もっと、なんか研究者の研究室ってイメージ的には、こうもっと汚いというか本や紙の資料やよく分からない機械や道具などが散乱していると思ってたのだが、こっちは、狙ったんじゃと疑ってしまうほど逆である。まず、10畳ほどありそうな部屋には机とイスしかないのだ。窓はあるが、カーテンは無い。他にあるものと言えば、あとは俺に依頼した研究者本人と今も何か一所懸命に書いてあるノートと万年筆ぐらいである。必要最小限の物だけで暮らすミニマリストという人たちがいる事は知っているが、これは余りにも物が無さ過ぎだろう。この人はちゃんと生活できるのだろうか? いや、今まで生きているのだから大丈夫なのだろうが。


 何やら一生懸命過ぎて声をかけづらいので、立ったまま5分程が経過した。


「よし! さっそく行こうか」

 それから、その緑髪の研究者はおもむろにノートを閉じてバッグに仕舞うとそう言った。


 いや、こっちとしては、何が何やらなのだが。


 まぁ、依頼主は研究者ということもあり、偏屈や気まぐれといった所謂変人を想定してきたので、俺はそのまま、その研究者に着いて行くことにした。というか自己紹介もまだなのだが…これでいいのか?


 その研究者は、そのまま研究室を出ると村の方ではなく、山の方へと向かって行った。すると、村と山の境目といった所だろうか木の柵があるあたりで、ようやくその研究者は口を開いた。以前として、歩みを止める気はないようだが。


「そう言えば、自己紹介がまだだったね。僕はトーレ。地質学者を名乗らせて貰っているよ。君は気に入ったよ。僕にあまり口を挟まないからね。前回に雇った者は色々とうるさかったんだ」

 と、急に喋り出したと思ったら早口でまくし立てるトーレ。


「えーと、口を挟まなかったのは、何やら一生懸命やっていたからだ……俺の名前はリク。一応『星渡りの旅人』だ。よろしく…」


「いや、そう考えてくれてるだけで合格だね。やっぱり必須条件に知力を書いてたのは、正解だったようだ。それにしても、『星渡りの旅人』か。ちょっと【看破】してもいいかい?」

 と、歩きながらも早口で喋るトーレ。


「ん? 良いと思うが…」

 【看破】って何ぞや? 咄嗟に承諾してしまったが…。


「おお! ありがとう! ではさっそく……ふむふむ。なるほど、僕たちとあまり身体の構造は変わらないようだね」

 と、トーレがさっそくと言った瞬間、俺の身体を何かが通り抜けた。なんかこう、見透かされているような…。トーレはトーレで、そのあとブツブツと独り言をしている。


「あのトーレ? 俺は今何かされたようなんだが、何をしたんだ?」


「え? ただの【看破】だよ【看破】。君の情報を見るための……って、あぁ『星渡りの旅人』ってことは知らないのか。【看破】って言うのは【スキル】の1つで、え? 流石に【スキル】は分かるよね? その【スキル】の1つで、生き物のステータスや能力、スキルの有無などを見ることが出来るスキルのことさ」

 と、トーレは1人でペラペラと喋り始めた。


 まぁ要するに、よくある【鑑定】の生き物バージョンということか。


「ただ、プライバシーの問題もあるからね。【看破】を使える人は相手に承諾を得てから使うのが常識だね。当たり前だけど、モンスターを相手にする時は、承諾はいらないけどね。ただ君も今感じたように、やられた側は少々不快感を感じるからモンスターにやった場合はほとんど確実に怒らせてしまうから注意が必要だけどね」

 と、トーレはニヤリと笑った。


 ふむ。情報が得られる代わりにデメリットはあるということだな。


「なぁトーレ。俺にもその【看破】スキルを取得することは可能なのか?」

 デメリットを聞いても、あればとても便利な気がしたので俺は質問してみる。俺的には是非とも欲しいスキルなのだ。


「ん? 知力のステータスが3ある君なら取得可能だよ? 何なら今からでも取得してみるかい? 僕の【看破】のレベルはⅣだからね。君にスキルを教えてあげることは簡単だよ? ただ、そのあとスキルのレベル上げに関しては、君自身が頑張るしかないけどね」


「本当か!? じゃあ、是非ともお願いしたいって……今から?」

 予想外の答えに俺は嬉しがりつつも、その後の言葉に首を傾ける。


「あぁ。スキルって言うのは、大抵の場合レベルがⅢやⅣまで熟練すると人にそのスキルを教えられるようになるんだ。これが面白いことに、人間独自の特性でモンスターには無いことが最近の研究で……って話が脱線したね。まぁ要するに、スキルを熟練させるとそのスキルを他の人にも取得させることが出来るという訳さ。それで、僕は【教師】スキルという教えた人のスキル取得率を高めるスキルを持っていてね。今、現場に行くまでに、少し時間が掛かるからその道中に、君に【看破】を教えることも出来るんだ」

 トーレはそう言って、どうする? 今取得するかい? と聞いてきた。


「そういうことなら、さっそくお願いしたい」

 というわけで、俺は【看破】を習うことになった。というか、講座も受けることなく、こんな使い勝手の良さそうなスキルを取得出来るとは、このクエストは本当に受けて良かった。



「ではさっそく、【看破】の取得方法について説明しようか。【看破】とは、スキルこそ取得してしまえば、ステータスウィンドウのように、相手の情報が閲覧できるというスキルなのだが、その本当の実態は言わば、相手を見極める目の良さとも言える」


「目の良さ?」


「そうだ。元々は、相手の服装や体格などの外見から、相手の性格や職業、趣味、思考など内面を把握する能力の延長が【看破】のスキルとして、分かりやすくウィンドウに表示される形になったと言われている」


 なるほど。あれだな、薬指にマメがある人は美容師っていう、身体的な特徴を見つけて、理論づけて推測するという感じだ。んー例えるなら、探偵のように、小さいヒントの中から物事を見極める力といった方が近いかな。それが【看破】の元々の性質だとトーレは言いたいのだろう。


「よって【看破】スキルの取得の仕方というのは、相手の特徴から何かを推測するという、この一連の行動を何回か繰り返しすることだ。だから、君には今から僕について予測したことを次々と述べて貰う。これが、一番早く【看破】スキルを取得出来る方法だ。ちなみに、予測が外れていても経験値は入るらしいが、やはり知らなかったことを予測して当てる方が経験値は高くなるという統計結果が出ているので、そこは頑張るのだな」

 とトーレは相変わらず早口で一連の説明をし終わった。


 そういうこともあり、何処に向かっているのかは分からないが、道中、俺がトーレに推測したことを質問して、トーレがそれに当たっているか当たってないかを繰り返すという話が延々と続けられた。


 質問「トーレは地質学者だよな?」

 回答「なんだその質問は? そんな分かり切った事を言っても経験値は上がらないぞ?」


 質問「トーレはミニマリストだよな?」

 回答「あぁそうだな。正解だ。まぁ俺の部屋を見たら誰でもそのことに気付くだろうな」


 質問「トーレは俺よりも年下だよな?」

 回答「君の年齢は27歳だったな…僕の年齢は23歳だ。まぁ正解だな。だが経験値は微妙ではないか?」


 質問「トーレはコーヒー派じゃなくて、水派じゃないか?」

 回答「そうだ。今みたいなちゃんと考えてする質問の方が経験値は高いな。ちなみに答えはYESだ」


 質問「トーレはちゃんと計算してバランス良く食事してそうだよな」

 回答「うん…まぁどちらかというとそうだな。流石に1つ1つの栄養素を測ったりはしないが、バランス良く摂取してるのは確かだな」



 と、このような問答を続けること20何回目。


――――☆スキル【看破Ⅰ】を獲得しました。


 ついに、俺は【看破】のスキルを取得することが出来た。主に、トーレが毒舌過ぎてこちらのSUN値が削られることもあったのだが、何とか乗り切ることが出来た。まぁ、慣れてしまえば問題は無いんだけどな。質問にはキチンと答えてくれるし、口が少々悪いだけで、根は良い子だと分かるからな。それに、俺の同級生にもこういう奴結構いたし、俺はある意味最初から慣れてたとも言える。


「どうやら、取得出来たようだね。うん君は中々の素質を持っていると思うよ。この前、研究者仲間にもやってんだが、そいつは50問ほど質問してやっと取得出来たからね。まぁそいつの聞き方も悪かったのだが。20回で取得は十分に素質があると見ていいよ」

 と、トーレは相変わらずマシンガントークで言った。最後にデレたのが印象的だったが。褒める時もあるのね。



「さて、ここが目的の場所だ」

 トーレに説明もされず、連れてこられた場所は、岩肌がむき出しの採掘場? 採掘跡のような地層と同じ色をした岩が辺りにゴロゴロと転がっている山の斜面だった。


「それで、今更なんだがトーレは俺に何をさせたいんだ?」


「ん? 言ってなかったか? 君にはここで古代モンスターの化石を僕と一緒に掘り出して貰うんだよ」


「古代モンスター!!??」

 何それ、おもしろそう。もうちょっと詳しくお願いします。


「あぁ。僕は地質学の中でも古生物学という研究をしていてね。主に化石から過去に存在していたモンスターを研究して、現在のモンスターへとどう進化していったかなどを調べているんだ。君には、その発掘の手伝いをして貰いたくてお願いしたんだよ」

 お、おう…俺より年下なのになんかすげぇな。


「ん? じゃあクエストの募集要項に器用のステータスが必要だったのは、この一緒に発掘するためだったんだな」


「そうだね。化石って結構デリケートだったりするんだ。器用のステータスが3以上は発掘の時に壊さないようにするための保険かな。あぁそうだ、君にはもう道具を渡しといておくよ」

 と、トーレが喋りながらカバンから取り出したのは、小さいハンマーとブラシ、タガネ、スコップなどだった。あと軍手も貰った。


「それで、今回発掘したい化石は、すぐそこなんだけど…1つだけやらないといけないことがあるんだ」


 ん? やらなければいけないこと? なんだ? ちょっと、トーレが真剣な顔して言うから恐いぞ。


「これは、完全に僕のミスなんだけど…君、何か食べ物を持っているかい?」


「へ? 食べ物?」

 トーレの以外な言葉に、ちょっと身構えていた俺は拍子抜けして変な声が出てしまった。


 ははぁん。食べ物が欲しいということは、お腹が空いてしまったんだな。だが、弁当を忘れたトーレは俺に何か食べ物がないかとねだってきたと。フフフ…こいつめ、可愛いところもあるじゃないか。良いだろう。お兄さんが食べ物を恵んであげようじゃないか。


「君…。何か盛大に勘違いをしていないか? まぁ何を思おうが君の勝手だが……。食べ物が必要と言うのはこの場所にいる石竜へのお土産に必要ということだ」

 トーレは俺にジト目をしながらやれやれといった感じで話した。


 なんだ…俺の勘違いか。


「って、へ? 石竜? お土産?」

 俺はトーレの言葉を聞いて反応し、改めて意味を反芻して驚く。


「あぁ、詳しい説明は省くが、この山の中腹から山頂までは石竜に守られているんだ。実際に道中、モンスターの1匹も見なかっただろ?」


「た、確かに……」

 俺はトーレと話をしながら歩いていた道中を思い出す。村に向かう馬車での道中では、何度かモンスターの襲撃はあったが、トーレに着いてきてからここまでの道中では一回もモンスターに出会っていない。


「それは、その石竜がこの山に住んでいるおかげでモンスターが近寄らない、例え迷い込んでくるモンスターがいたとしても、そのモンスターを駆逐しているからなんだ」

 トーレは一旦息継ぎをして話を続ける。


「そして、いつしか村の中では、普段この山を守って貰っている石竜に、山へ立ち入る際にはお土産を持っていくという習わしが出来ていったんだ。だから、僕は君に何か食べ物を持っていないかと質問したんだ」

 決して僕がお腹が減っているとかいう理由ではない、とトーレは付け足した。


「な、なるほど……」

 俺はトーレに頷く。だが、何故トーレは俺の考えていることが分かったのだろうか? 俺ってそんなに顔に出やすいタイプなのかなぁ。自分では全然そんな自覚ないんだけどな。思い返せば、ウォーモさんにも何かを言う前にチョップされたし。


 とりあえず、お土産が必要ってことは分かったので、俺はさっそく魔法のカバンに手を入れて、ウィンドウを出現させる。


「クッキーとアジぐらいしかないな…」

 結果、俺が持っているのは、ノンノさんから貰ったクッキーと釣ったアジぐらいだった。このゲーム、一応、空腹パラメーター的なものはあるのだが、俺はウォーモさんにご飯に誘われたり、ノンノさんとお茶したりと、飲食を結構しているから昨日は気付かなかったんだよなぁ。今日の馬車の中でお腹が減ったので初めて知ったぐらいだ。なお、その時はノンノさんのクッキーで過ごした。お土産にってめっちゃ貰ったんだよな。具体的には10個入りの5袋ほど。いや、ノンノさんこんなに作ってどうするつもりだったのさと貰った時に思わず言ってしまったが、本人曰く、余ったら余ったで知り合いやご近所さんに配るつもりだったんだと。いや、それを全部貰った俺が言えることではないんだけどね。ほら。おばあちゃんの、これ持っていきなさい攻撃には勝てないやん? あれと同じだ。


「何故、その2択なのかは知らないが……それなら、アジを持っていった方が石竜は喜ぶはずだ」


「なるほど。じゃあアジで」

 俺はウィンドウからバケツを取り出し、アジを準備する。むむっ。少し魚臭いな。誰のせいだ。あ、俺のせいか。というか、魔法のカバンに入れておいても、食べ物って腐るのかな? これはあとで、確認しないとな。今回は……まだ大丈夫だろう。




 という訳で、化石発掘の場から少しだけ奥に入った所に俺は連れてこられた。


「おぉ! 凄いなこの石像! 細部まで細かく作られている…」

 そこには、祭壇のような台座が置かれ、おそらくこの山を守る石竜を模したであろうドラゴンの石像が、その祭壇の両脇に鎮座していた。

 俺はそのドラゴンの石像の1体に近づき、俺の頭付近にある口に手を伸ばし撫でる。


「君は話を聞いてなかったのか? それが石竜本体だ」


「え?」

 トーレの言葉を聞いて俺は撫でていた手を止める。そして、トーレに向けていた頭をギチギチとまるで俺が石になったかのように、その石竜へと振り返る。


「グルルルルッ!」

 石竜が喉を鳴らした。


「うわっ! ちょっと待っ…助けてトーレ!!!」

 そして、次の瞬間。俺はひょいっと石竜に襟首を咥えられ、地面から足が離れた。


「た、食べられる! トーレ! 早く助けてくれ!」

 俺は石竜に咥えられてプランプランと揺れながら、必死に助けを求める。


「ははっ! どうやら石竜は君のことが気に入ったみたいだね! 初対面でこんなに好かれる人は僕も初めて見たよ。大丈夫、ドラゴンというのは総じて頭の良い生きものだ。君を食べたりなんかはしないはずだよ」

 と、何故か今日一番のテンションで語っているトーレ。いや、だから笑ってないで助けてよ!!


「って、あぁ。やっと降ろしてくれた……ってんんんんn――――」

 やっと降ろされたと思ったら、今度は、俺の上半身ごと噛みつかれた。いや、食べたりはしないって言ったじゃん!!


「まぁ、甘噛みぐらいはすると思うけどね」

 外でトーレが何か言ったが、石竜の口の中では、何を言っているのかほとんど聞き取れなかった。


 というより、早く助けてくれ!!!




「酷い目にあった……」

 あれから、石竜の戯れにつき合わされた俺は、もう身体中が石竜の唾液でベトベトとなっていた。咬まれるわ、舐められるわで大変だった。


「1体目が終わったと思ったら次は2体目が来るんだもんなぁ」

 あっちは遊びのつもりでも、体格差の問題でこっちは命がけなんだよ。何回か宙にも投げ出されたし…紐無しバンジーとか初めてやったわ!


「ははっ! 大丈夫さ、その唾液が付いている限り、君は石竜にマーキングされているということだからね。並大抵のモンスターは君に近寄らなくなるはずだ」


 いや、そうは言ってるけど、トーレも近寄らないのはどうかと思います。


 なんだよ。この石竜の唾液が臭いって言うのか! 確かに臭いは…あるが……だが、これでモンスターは近寄って来ないんだぞ! ミニマリストで実利主義の君なら普通は近寄ってくるはずだ。よし、君が近づいてこないのなら、こっちから近づいてやる。そして、俺はトーレに駆け出す。


「うわっ! ちょっ…待ってくれ! 僕に近寄るな!」

 すると、トーレが即座に逃げ出した。


「くそ! 負けてられるか!」

 絶対にトーレもベタベタにしてやる!!!

 こうして、俺とトーレの追いかけっこがスタートした。




「なぁこれは、酷くないか?」

 結果、惨敗しました。岩場の隅にまで追い込んだまでは良かったのだが、そのあと、トーレが水魔法を俺に放ってきたのである。ベトベトが無くなったのは良いが、今度はビチャビチャである。あぁ風呂に入りたい。この星に風呂ってあるのかな……。


「すまない…水魔法は流石にやり過ぎた。だが、君も悪いんだぞ…ベトベトで僕に抱きつこうとして……」

 まぁ、俺も悪かったしな。トーレが謝ってきたので、俺も謝った。これでチャラである。


 結局、俺は服を脱いで乾かしている間に、上半身裸でトーレの作業…化石の発掘をすることとなった。


 発掘の作業事態は、トーレに教えて貰いながら、さほど問題もなく進んだ。


 ハンマーやタガネを使って、化石の周りの土や石から化石を取り出したり、ブラシで土埃を払ったりと細かく集中力のいる作業だったが、流石はゲームといった所かドンドン作業が進むのでそれが面白くもあった。日が傾き始める頃には、俺とトーレ合わせて30センチほどの小さい化石3つと2メートルほどの大きい化石1つを地層の中から取り出していた。

 そして、トーレから色々と化石や地質学の話を聞きながら、発掘作業をしていたので、なんと俺は【地質学Ⅰ】というスキルも取得できた。トーレに効果を聞く限りでは、採掘の時に補正が掛かったり、土、石などを【鑑定Ⅰ】スキルで見るときに詳細に見ることが出来るらしい。まぁスキルが無いよりはあったほうが良いのは、確かなので持っておいて損はないだろう。


 ちなみに、そういう事もあり、帰り道には【鑑定】スキルも教えて貰った。覚え方は、【看破】の時とほぼ同じで、物に対して、その外見から物の使い道や構造などを推測するというものだ。これにも俺は適正があったのか、【看破】の時と同じく20回ほどの問答で取得することが出来た。でも、トーレの【教師】スキルのおかげが大きいとは思うけどな。



「では、これが今回の報酬だ。今回の発掘で僕の研究は大いに進むことだろう。1人じゃ1度にこんなに沢山の化石を持って帰ることは出来なかった。君が手伝ってくれて本当に良かった。感謝する」

 研究所の前まで着くと、トーレはウィンドウを動かして俺に報酬を渡してきた。


「それに、君との仕事中はとても楽しかったし、あんなに笑ったのも、走ったりしたのも子供の頃以来だ。久しぶりに有意義な時間を過ごせた。もし良かったら、また次も――――」

 と畏まって話してくるトーレの言葉を俺は途中で遮る。


「また次に化石を取りに行く時は俺に言えよ! 付き合ってやるからさ! だってもう俺たち友達だろ?」

 友達に畏まって頼みごとをする必要はないんだぜ? 一度友達になったんなら気軽に声を掛けてくれれば良いんだよ。


「あぁ、そうだな……また、一緒に化石を取りにいこうか。リク…!」


「もちろんだぜ! トーレ!」

 そして、俺たちはお互いに拳をぶつけ合わせた。




「あぁ、そうだリク。これは前回研究したものなんだけどね。良かったらリクにあげるよ!」

 そう言って、トーレがカバンから取り出したのは1つの化石だった。


「これは…タマゴの化石?」

 それは、直径が40センチほどはある楕円形の灰色の化石だった。


「そうだね。僕が研究した限りでは古代竜のタマゴの化石さ。もうこのタマゴについて、大方研究はし尽くしているからリクに譲ろうと思うよ」


「古代竜? こんな貴重そうな物を貰って良いのか?」

 トーレの言葉に俺は目を開き驚きながら言葉を返す。


「あぁ。リクになら譲ってもいいよ。それに、大方研究をし尽くしたと言っても、まだ研究できてないこともあるんだ……それで、僕の研究者仲間に化石から生き物を復元させる研究をしている者がいる。明日彼女に会いに行くといい」

 あとは言わなくても分かるね? トーレは、ミニマリストらしく必要最低限のことだけをそう最後に付け足して、口元に笑みを浮かべた。


 つまりは、俺にこの古代竜のタマゴを復元させろということだ。


 俺の、この星での目標は、ペットとかと一緒にのんびりと過ごすこと。丁度いいな。ペットはこれといって種類は別に決まっても無かったのだ。古代竜でも何ら問題ないな。むしろ、カッコ良さそうだし、強そうだし大歓迎だ。


「ありがとう! 復元したら絶対に大事に育てるぜ!」

 こうして俺は未来の相棒を見つけたのだった。


「ところで、リク……まだ、石竜の唾液が臭うんだが……」

 最期にトーレは鼻をつまんでそう言った。


「お前まだそれを言うのかーー!!」

 俺だって我慢してたんだよ!! 俺は再びトーレに襲いかかるのだった。


 そのあと、研究所の裏手にあるドラム缶風呂で、キッチリと身体を洗い、服も洗濯した。替えの服は、トーレに村の雑貨屋さんでトーレに買って来て貰った。ちなみに、初めてのドラム缶風呂は最高だったと言っておこう。山の中腹にある村ということもあり、星も綺麗に見えたしね。





――――☆ クエスト完了!!!








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