とある忍者のVR②
俺の煽ったおかげもあるのか、予想外な事にラガ君の父親、ラードさんを助けに行こうと集まった人は多かった。その数なんと45人。俺の通り道を塞いだ短髪の男、グリアロさんとの話が意外とギルド内に丸聞こえだったらしい。そして、俺との会話後に決心したグリアロさんが、会話を聞いていた他の冒険者に大きな声で呼びかけたのだ。
「お前ら! 誰かしらみんな、ラードさんにお世話になった奴らばっかりだろ!!」
「そうだな…」
「そういえば、俺は剣の使い方を習った……」
「俺は新人の頃森の歩き方を教えて貰ったな……」
「俺なんてモンスターからの逃走中に助けて貰ったことがある…」
「今こそ、その恩を返す時じゃねぇのか!!」
「そう、だな…」
「恩を返すなら今のうちってか…」
「ラードさんが居なけりゃ、今の俺たちが冒険者を続けてるってこともないかも知れないしな…」
「野郎ども! ラードさんを助けに行くぞ!!」
「「「おうっ!!!」」」
と、こんな感じで深夜なのにも関わらず、ギルド内のボルテージは上がり続け、ギルド内にいた人だけには留まらず、家で寝ていた人を叩き起こし、酒場で騒いでいた冒険者の酔いを醒ました結果、これだけの人数の冒険者が集まったのだ。
聞いたところによると、グリアロさんを始め、今、ギルドの中堅と呼ばれる冒険者達は皆、多かれ少なかれラードさんにお世話になった事がある人ばかりなのだという。
まだ新人の冒険者に、冒険者としてのイロハを教えたり、狩りに1日引率して指導したり、剣術を教えてくれたり、とそれはラードさんにとって、息子ラガ君を育てるために、日中で出来るクエストをただひたすらにこなしていただけなのかも知れない。だが結果として、これだけの人数の冒険者が集まった以上、それは、何者でもないラードさんが慕われている証だろう。
深夜なのにも関わらず、これだけの人数が集まるのだ。俺はこれから救助するその人物に早く会いたいと思った。
そして、この事態に黙っていられるほど、冒険者ギルドも薄情で非人道的ではなかった。
クエストとして救出依頼を出すことは出来ないが、非常用などの備蓄として残っている回復薬などの消耗品を無償で提供してくれるという事になったのだ。もちろん、クエストが終わった後、残った回復薬などは返さなければならないという制約付きだが。それでも、A級に近い実力者がクエストを失敗した時点で、今回の救助は何が起こるか分からない、とても難易度の高い状態。回復薬はあればあるだけ用意しても困ることは無いだろう。
それと一番の言いだしっぺでもある俺の装備も貸し出してくれた。
俺は別に黒シャツ黒ズボンのままで良いと思ったのだが、グリアロさんに問われて、このまま行くと言ったら、呆れられ装備品を準備された。
という訳で、今の俺は、相手の攻撃を弱めてくれる魔法の服上下に、脛当て、籠手、それから腰にはナイフという格好だ。俺の持ち味は今のところ、【身軽】スキルを軸とした回避のスタイルなので、出来るだけ動きやすい格好が良いと言ったらこのような恰好になった。
本当は剣も借りたかったのだが、剣は筋力値が3以上はないと装備が出来ないらしいので諦めた。ステータスポイントを振るという方法もあるにはあったが、今回行く先では、何が起こるか分からないのでギリギリまで振り分けないことにしたのだ。こういうところは、自分で割り振る事が出来ないこの星の人たちにとって、俺たち旅人の利点でもあるので、今回はそれを活かす方向にした。極端に言えば、この中の冒険者全員が割り振っていないステータスで負ける可能性もあるのだ。これだけ人数がいたら、そうそう、そんな事は起きないと思うが万が一もある。何せ、トップの冒険者がやられているという、事態が実際に起きているのだ。万が一に備えておいて損は無いだろう。
そして、時刻は深夜午前2時15分。
すべての準備を終えた冒険者総勢45人は、男の子の父親がクエストに向かった『カニス・マヨルの森』通称オオイヌの森へと出発したのだった。
時刻は一刻を争う状況かも知れないので、道中は、輸送商会『アウリガ』という運送会社に夜間輸送を頼みこみ、大型馬車2台を出して貰い、森の入り口まで運んで貰った。
ここ『カニス・マヨルの森』は、森の名前にもなっているモンスター、オオイヌが群れで生息しているという場所であるらしい。鬱蒼と生えた森の高い木々が頭上を覆っていて昼でも薄暗くて探索するのは難しいという。森の規模も結構な広さがあり、すべてを探索するのには、丸一日は掛かるだろうとのことだ。
よって、今回は45人を5人ずつの9パーティーに分け、人海戦術によりまずは、ラードさんやその他クエストに失敗した冒険者を探すこととなった。
そして、俺はAパーティー、グリアロさんと同じパーティーとなった。元々パーティを組んでいる冒険者同士は、そのままそのパーティーとして行動して貰うので、俺のいるAパーティーは普段ソロや二人組で活動しているパーティーが集まった形となった。
「キシャァァ!!!」
木に化けたモンスター、トレントが自前の枝を上から下に鞭のようにしならせる。
それをグリアロさんは、持っている両手斧を横にしてガードしながら、トレントへと距離を詰める。
――――《パワースラッシュ》
グリアロさんが持っていたその両手斧が青い光を帯びると、上段から斜め下に振り下ろすその技で、トレントの身体は真っ二つになった。
「ドロップは無しか…」
トレントが粒子となり消えるのを確認してグリアロさんは呟く。
「まぁ、俺の戦闘スタイルは大体今の感じだな。基本としては、相手の攻撃をこの斧で防ぎながら、チャンスを見計らい一撃でバッサリだ」
後ろの方で戦闘を見守っていた俺たちの元へ戻りながら、グリアロさんはそう口にした。
「基本、攻撃手でもあれば、壁役もこなせるのが俺の戦い方だ」
いやいやいやいや、何この一撃で決めるっていうカッコ良さ! 俺が忍者を目指してなくて、今の光景を目にしてたら、絶対に斧を武器として選んでたよ!? それぐらいカッコ良かったんだけど。何このおっさん、平然としてるの。なんか、現実だと斧なんて…武器っていうか、木こりの道具? っていう感じで見向きもしないけど、ゲームの世界だとこうもカッコ良く映えるんだな。
と、こんな感じで、森を探索中に出現するモンスターを倒しながら、パーティーメンバーの実力を確認していった。
俺? 俺の実力は最初森に入る時に、少しバク転や宙返りなどして確認して貰った。何故か、俺の動きにみんな口をあんぐりと大きく開けていたが、このスキルとか魔法とかある世界でこれより凄いことなんて沢山あるだろうに。きっと曲芸とかいうのは、あまり見た事が無かったんだろうな。ちなみに、この動きを見たグリアロさんが俺に提案してくれた戦い方は、回避しながら戦場を駆け回り、回復薬を味方に投げつけていくという戦い方だった。え? 何その戦い方? 回復薬を投げつけるの? と疑問に思った俺だが、話を聞いてみると、投げつける用の割れやすい入れものに入った回復薬があるらしい。そういや、ギルドで支給された回復薬はなんで試験管なんだとは思ったが、あれってそういう意味だったのかよ。という訳で、俺の魔法のカバンには、試験管回復薬が大量に入れられた。もちろん。俺が『死に戻り』した場合のことも考えて、各メンバーキチンと一定数は保有しているが。
「何かおかしいな…これだけこの森を歩いたんなら、そろそろ、オオイヌが出てきてもいい頃なんだが…」
30分ほど森の探索していると森の異変を察知したのかグリアロさんがそう言った。
「確かにオオイヌ、オオイヌとあれだけ騒いでおいて、ここまで一体も見ていないな」
俺はグリアロさんに言葉を返して道中出てきたモンスターを思い出す。これまで、戦ってきたのは、木のモンスタートレントに、あとはコウモリとネズミ、ウサギぐらいである。
トレント以外は、俺も戦ってみたが、俺でも倒せるようなモンスターばかりであった。トレントは、単純に俺の火力不足なせいで、倒すのにも時間が掛かるので辞めておいた。本来の目的としては、人命救助が目的な訳だしな。
ただ、そんな事を話していると、フラグが立つわけで……。
「ガゥルルルル!!!」
と、話して数分程でそのオオイヌと呼ばれるモンスターは俺たちの前に姿を現した。
「いや、デカすぎるだろ!」
まず、オオイヌを見て俺が最初に思ったことはそれだ。グリアロさんたちがオオイヌオオイヌとうるさかったのだが、どれ程の大きさの犬なんだと気になってはいたが、まさかここまでデカいとは…。俺の想像を遥かに超えてきた。それは、クマやライオンなどといった大型動物が比較にもならないほどの、大きな犬だった。おそらくダンプカーほどの大きさがあるのではないだろうか。
「ヒイラギ! 避けろ!!」
と、俺がそのオオイヌを見て立ち尽くしていると、横合いからグリアロさんの怒号が聞こえた。
俺はその言葉に咄嗟に我へと返り、横っ飛びで転がり込む。
刹那――――。俺が先程までいた地面に、大きな爪痕が残された。
危なかった――――。こんなの食らったら一発で死に戻りである。そう思って俺は改めて気を引き締め直す。
――――《パワースラッシュ》
――――《トリプルアロー》
――――《スピードスラッシュ》
その間に、他のパーティーの面々は、オオイヌへとそれぞれ攻撃を繰り出す。
グリアロさんと剣士の攻撃は避けられてしまったが、弓士の放った三本の矢はオオイヌの前足へと前段ヒットした。
「まだだ! 総員注意!」
グリアロさんが叫び、オオイヌの攻撃に全員が身構える。
「ガウ! ガウ! ガウ!」
だが、その心配は杞憂に終わった。
前足に三本の弓矢が刺さったオオイヌは、そのまま森の中へと走り去っていったのだった。
こうして、初のオオイヌとの戦闘は、相手側の逃亡により幕を閉じた。
「グリアロ、やはりこれはおかしいな…」
戦闘終了後、C級ランクの剣士がグリアロさんと相談を始めた。
なんでも、オオイヌの行動が明らかに変だったとのことだ。その根拠となる理由とは、一般的にこの森のオオイヌは群れで行動しているモンスターであり、今のように一匹で行動している個体などはいないという事らしいのだ。俺としてはあのオオイヌが群れで襲ってくるとか恐怖しかないと思うのだが……勝てるモンスターなんているのだろうか。いや、そのオオイヌ相手に臆さず戦っていた俺のパーティーのメンバーも凄いけどさ。
「あぁ。その事だが、今しがた他のパーティーからも連絡が届いた。どうやら、森のあちこちで同様の事態が発生しているらしい。そして、何れも俺たちと同じように攻撃を1、2回受けると逃走していったらしい」
と、グリアロさんは、空中でウィンドウを操作しながら剣士に答えた。おそらく、メニュー項目の『メール』を開いているのだろう。何でもその機能は、手紙を購入した際に追加される機能らしく予め登録している者同士で、メールつまりは連絡を取り合えるという機能らしい。
「それと、森の南の方で、オオイヌが沢山集まっているところをCチームが発見したらしい。至急集まってくれとのことだ」
グリアロさんは、空中で何やら操作をしながらそう言った。
俺たちが合流地点へと到着すると、もう既に他のパーティーは全員が揃っていた。
「よし、これで全員揃ったな」
この中で最も実力のあると言われるパーティーのリーダーが俺たちを見てそう言い、俺たちが休憩に入るのと同時に状況の説明と作戦内容を話してくれた。
「この先、500メートルほどにある森の拓けた場所で、ラードさんが救出しようとしたと見られる冒険者パーティーが倒れているのを見つけた。ただ、その周りにはオオイヌが少なくとも20匹群れを成していることも確認できた」
と、俺のパーティーメンバーは冒険者を見つけたというところでホットしたような表情を見せ、オオイヌが群れでいる事を聞いて表情を引き締める。
「肝心のラードさんは?」
俺が説明者に質問すると、すぐに答えが返ってくる。
「残念ながら、ラードさんと見られる人物は見つからなかったが、Dチームがここに来る途中、ラードさんがやったと思われる戦闘痕を見つけたそうだ。おそらくだが、この近くにいる事は間違いないだろう」
そう説明者は言い切って話を続けた。
「だが、まずは人命救助が優先だ。よって、お前たちAチームの休憩が終わり次第、総員でオオイヌの群れに突入する。作戦は、大きく分けて二段階。まず遠距離攻撃が出来る者たちによる全方位からの集中攻撃でオオイヌたちに攻撃を仕掛ける。そのあとオオイヌ達が動きにくい林の中へとおびき出し各個撃破だ。」
といって、その後は作戦の詳細を細かく詰めていく。
流石、みんなギルドで中堅と呼ばれているメンバーなことはある。あれよあれよと言う間に、作戦を立て終わり、いよいよオオイヌの群れに突入するだけとなった。
オオイヌの群れに全方位から遠距離攻撃は、ちょうど日の出と同じタイミングで行われた。
魔法使いや弓士による遠距離からの総攻撃は、オオイヌをただ誘き寄せるためのものではなく、この攻撃によってすべてを終わらせるといった猛烈な攻撃の数々が放たれた。
上空から降ってくる大量の矢の雨や、巨大な岩石を始め、吹き荒れる風の刃。燃え盛る炎の渦。そのどれもが渾身の力で放たれた大技だった。
だが、MPの回復で魔法使いたちが攻撃を辞め、弓士が矢をつがえ直したその間。立ち込める煙の隙間から俺が見たのは、今の総攻撃を受けてもまだ立ち上がってくるオオイヌの姿だった。
俺は、その一匹が全速力でこちらに向かって来るのを見て、咄嗟に近くにあった木に飛び移り、その突進を回避する。こうして、作戦の第二段階へと移行したわけだが、戦場は一気に苛烈を極める戦いへとなっていったのだった。
「よっと!」
俺は、さながらサルのように、木と木の間、枝から枝へと飛び移りながら戦場を駆け回っていた。
「おりゃ!」
そして、冒険者の頭上から、試験管の回復薬を投げ当て、傷を負った冒険者回復させる。
これが、戦場でステータスの低い俺に与えられた役割だった。
傷を負った冒険者を見つけては、回復薬を浴びせ掛けていく。その一つ一つの行為はちっぽけなのかも知れないが、徐々に徐々にだが、回復の出来ないオオイヌたちとは違って、冒険者たちはオオイヌ相手に優勢を取っていった。
――――《横凪ぎ一閃》
そして、ついに一つのパーティーが受け持っていたオオイヌすべてを倒した。
それからは、明らかに勝負の均衡はこちら側に傾いた。その一つのパーティーが他のパーティーに加勢を始めたことで形勢が一気に冒険者へと変わったのだ。
俺は、ひたすら木と木の間を飛び回って、冒険者達に回復薬をばら撒く。時たま、オオイヌが俺を見つけて攻撃を仕掛けてくるが、俺は回避だけに重点をおきその攻撃を避ける。そして、俺が避けたことによってオオイヌに出来た隙を見逃さずに、冒険者は攻撃を加える。一瞬の隙も見逃さないその冒険者たちの行動は流石ギルドで中堅と呼ばれることだけのある、しっかりとした戦闘力だ。
「よし、行けるぞ! みんなで押し切れ!」
と、優勢は完全にこちらの方であった。
20匹ほどいたオオイヌもその数を一桁ほどに減らしている。
誰もがもうあとは時間の問題だ、そう考えていた時、事態は大きく動いた。
「うわぁ!」
俺の近くにいたCランク冒険者が1人、一瞬のうちに粒子となったのだ。
そこには、一目で分かるほど使い込まれた装備に身を包み、一振りの業物の剣を携えた男が立っていた。
「そ、そんな…」
「嘘だろ…」
「ラードさん! どうしちまったんだ!」
その様子に、冒険者たちは困惑した。
それは、俺たちの救出対象の人物、今ここにいる冒険者の中で誰よりも強い男が敵として立ちふさがった瞬間だった。
その男の一振りで、また一人、冒険者が粒子となった。
「か、【看破】の出来る者は、早くラードさんかどうかを確認しろ!」
俺たちの作戦を伝えた男の一人が真っ先に我に返ると、戦場に全体に響き渡るように大声を発した。
その言葉でみんな我へと返る。
――――《ジャストガード》
近くにいた冒険者にまた剣を振るおうとしたラードと見られる人物に、横合いから誰かがその攻撃を防いだ。
グリアロさんである。
「ラードさん。あんた一体どうしちまったんだよ! あんたは間違っても仲間に剣を振るうような人では無かったはずだ!」
斧と剣で鍔迫り合いとなっているグリアロさんが、ラードと見られる人物に叫ぶ。
「……」
だが、グリアロさんの声が聞こえているのかいないのか、その判断は出来なかったが、その代わりに返ってきたのは、剣での一撃だった。
「くっ!!」
小柄だが筋肉質のグリアロさんがその一撃を食らって吹き飛ばされる。
俺は木の上からその状況を見て、咄嗟に回復薬を投げつけ――――ようとしたところで、俺の乗っている木が大きく傾いた。
そう、そのラードと呼ばれる人物は、俺の乗っている木を丸ごと斜めに切り落としたのだ。
俺は態勢を崩しならもその木から隣の木へと飛び移ると、またしても移動した木が傾いた。
「完全に俺のことを狙ってやがる!!」
飛び移っては切り落とされ傾く木を足場に、俺は間一髪で枝を足場にしながら次の木へ、また次の木へと移っていく。
――――《横凪ぎ一閃》
すると、飛び移ること五本目の木だろうか、そこでようやく他の冒険者が助太刀へと入ったのか剣戟を止めてくれた。ふと見ると止めてくれたのは、俺たちに状況を説明してくれたリーダーの人のようだった。それから、それを境に次々と繰り出される技の数々。
だが、ラードと見られる人物は、それを平然と剣捌きだけで受け流した。まるで、一つ一つの技の受け方はこうだと見本を見せられているかのように、その剣捌きは美しかった。
「相変わらず、惚れ惚れする剣捌きだぜ…」
と冒険者側も受け流されてはいるが、多勢に無勢でとめどなく技を繰り出していく。
「解析終了しました!!」
その時ようやく【看破】が終わったのか一人の冒険者が声を張り上げた。
「その人は間違いなくラードさん本人です!」
まぁそれはそうなんだろう。こんな綺麗な剣捌きが出来る人がそう何人もいないだろうよ。
「ですが、ラードさんは今悪魔に身体を乗っ取られている状態です!!」
「あ、悪魔だと!!?」
「『星雲』のモンスターが、なんでまたこんなところに!」
「ラードさんを乗っ取るなんてどれだけ上位の悪魔なんだ!」
と、その報告を受けて冒険者たちが次々と声を上げる。
「そんなことはどうでもいい!! 原因が分かったんだ! 悪魔を引きずり出せば、俺たちの勝ちだ。一気に決めるぞ!!」
と、自ら回復薬を飲んで復活したのか、他の冒険者たちの渇を入れるグリアロさん。
だが、その時正体がバレたことによるのか。ラードさんに動きが見るからに変わった。
「ケケケケケケッッ!!!」
突然、悪魔の笑い声を上げたラードさんの目が黒く光りだしたのだ。
「なっ!」
「暗い!」
「目が! 目がやられた!」
冒険者たちがそんな声を上げた束の間、その冒険者たちは身体を真っ二つに斬られ、粒子となって砕け散った。
ただ、その攻撃による効果は範囲が狭いのか、木の上にいる俺には届いていなかった。
そして、その攻撃によって出来た一瞬の隙を俺は見逃さなかった。背後からの投げナイフ。俺はその悪魔のほんの一瞬、ほんの一瞬の隙を見て、腰にあったナイフを無意識のうちに投げていた。それは、俺に脈々と受け継がれた忍者の血か。それとも、ただの偶然か。
俺はその悪魔に攻撃することが出来ていた。
「!!!」
悪魔に乗っ取られたラードさんの背中にナイフが突き刺さり、粒子が飛び散った。
一瞬の間のあと、咄嗟に背中のナイフを拭いた悪魔だったが、その傷口からは悪魔の黒い尻尾が確かに飛び出していた。
「ヒイラギ良くやった!!」
そんな言葉と共に、目を潰されたはずのグリアロさんがいつの間にか、その悪魔の目の前で斧を振りかぶっていた。
「ラードさんあんたの教えのおかげだ。悪魔の叫びを聞いたら目を瞑れってな!」
――――《兜割り》
グリアロさんの放った攻撃は、ラードさんの身体もろとも真っ二つにした。
「ギャギャギャガガグガギャ!!!」
すると、ラードさんの身体が粒子になって砕け散ったかと思うと、その砕け散った身体から、黒い悪魔が叫び声を上げながら飛び出してきた。
「ヒイラギ! トドメを刺せぇ!!!」
グリアロさんのその言葉に反応して俺は木から悪魔のいる場所へと飛び降りる。
だが、俺はただの攻撃では効かないこともまた直観で分かっていた。
だから、俺は飛び降りながらステータス画面を咄嗟に開いて操作をする。
そして、魔力の値に、使えるポイントを全て注ぎ込んだ。
その瞬間から俺の身体中に魔力のエネルギーが流れ込む。否、元々流れていたいたであろう魔力のエネルギーを感知出来ただけだ。
「おおおお!!!」
俺はその新しく感じたエネルギーをとにかく、目の前の悪魔を倒したい一心で無我夢中で力を込める。
――――《魔晶拳》
無我夢中で生み出した俺の一撃は、悪魔を木端微塵の粒子へと変えたのだった。
ペルセウスの街。冒険者ギルド前。
「パパ…!!!」
「ラガ!!!」
あれからずっと起きていたのか、ラードさんを見つけたラガ君が走り寄ってきた。
ラードさんは、寄りかかっていた俺の肩から手を離し、走り寄ってきたラガ君を両手を広げ受け止めた。
「ラガ…心配かけたな。パパが弱いせいでお前にまで迷惑をかけた」
「ううん。僕パパが強いってこと知ってるもん。だから、全然心配してなかったよ…。だけど、パパ、帰ってきてくれて本当に良かった……」
と、最初口では強がっていたラガ君だったが、ラードさんお父さんに抱きしめられたことで安心したのか
目からは大粒の涙が零れ、わんわんと泣いていた。
「あぁ。そうだな。でもラガを泣かせるパパは弱いよ…。本当にごめんな…」
その後、気が住むまで泣いたラガ君は、そのままラードさんの腕の中でスヤスヤと寝息を立てていた。
その表情は、昨夜までの暗く険しいものではなく、雨が上がりスッキリ晴れた空に掛かる虹のような寝顔をしていた。
――――☆ クエスト達成!!!




