夏服になった私は豊胸したい 3
そのまま近くの商店街のフルーツカフェへ移動する。カフェと言っても、利用客は中高生が一番多い、値段設定も低めのところだ。果物を多用したドリンクとアイスやソフトクリーム、食べものはフライドポテトやサンドイッチくらいしか置いていない。女子のお客が断然多い。
おにぎり食べたいな、と思う。お腹が空いた。お腹が空いてる時に甘いものを食べるのはちょっとね…塩辛いもん食べたい。
…やっぱ帰れば良かった!ヒロちゃんはさっきからミカちゃんをチロチロ見て嬉しそうにしてるし…。でもミカちゃんは…
ミカちゃんはマンゴーとタピオカの入った、なんかドロッとした甘そうなオレンジ色の飲み物を頼み、ヒロちゃんはコーラとポテト、タダはジンジャーエール、私はポテトとグレープフルーツジュースを注文した。
「なあ」とヒロちゃんが私に言ってくる。「ポテトLサイズ買って半分やろうか?」
うん!て本当に喉まで出かかったけどなんとか押さえた。彼女になるかもって子と来てんのに、私とポテトを半分こしたらダメだよね。でもどうしよう。すごく嬉しい。
「酸っぱそう」と私のグレープフルーツジュースを見て言うタダ。
「うん、酸っぱそ~~」とミカちゃんはキュートに酸っぱい顔をして見せてから、自分の甘ったるそうなジュースをチュッとストローで一吸いした。薄桃色のグロスを付けた唇が少しだけとがって、やっぱりミカちゃんエロい。
ヒロちゃんのせいかもしれないが、私もナイスバディの女の子が好きだ。
いいなぁミカちゃん。と思う。私もミカちゃんくらい…Cカップくらいあったら確実にボタンをはずしてるよね。なんだったら3個くらいはずしてるかも。半パイ見えてもいいくらい…
…そっか、さっきヒロちゃんがポテト分けてくれるって言ったのは、私をミカちゃんと対等な女の子としては見ていないからだな?
ミカちゃんとヒロちゃんの様子を伺う横から、タダが私のポテトに当たり前のように手を伸ばしてきた。
「うまっ。ポテトうまっ」
「ちょっと」と私。「自分で買ってきなよ」
「ちょっとだけじゃん」と言いながらまた手を伸ばす。
「もう」と睨むとタダが笑って「いいじゃん」と言う。
そんなタダをニコッと笑ったミカちゃんが聞いた。
「もしかしてユズちゃんとイズミ君は付き合ってんの?」
「付き合ってない」と答える私。付き合ってたらポテトくらい私からあ~んしてあげるよ。
何も答えず私を見るタダ。なんで何も答えないんだよ。
しばらくとりとめのない話をした後ミカちゃんが私とタダに言う。
「ねえねえねえねえ二人とも~~ヒロちゃんからライン回してもらっていい?」
私のをって事?それでタダのもって事?もしかしてミカちゃんすでにタダ狙いとか…
「ヒロちゃんの事いっぱい聞きたいの~~」とミカちゃんは甘えるように言った。
…嫌だけどな私。この子とラインする事になってヒロちゃんの小学の時の事とか聞かれるの。むかしの写真とかも見せたくないし。それに絶対めんどくさい。
でもめんどくさいって言えないよね。ヒロちゃんが連れて来た子だから。
タダが言った。「ヒロトが送るっていうんなら良いは良いけど、でもオレは返事は遅いし結構スルーする」
「他の女の子ともそんな感じ?」とミカちゃん。
「そこまで女子とはしてない。クラスの連絡くらしか。うちの高校スマホの校内使用厳禁だもんな?」
タダが私に振る。
うん、とうなずいた私にミカちゃんが聞いた。「ユズちゃんはヒロちゃんともイズミ君ともラインしてんの?」
最初タダの事を『タダ君』て呼んでたのにいつの間にか『イズミ君』に変わっている。
「そんなにしてないよ」と答える。
私がそう答えてる間に、ミカちゃんは残りの甘ったるそうなジュースをチュウっと飲んで、上目遣いでタダを見つめた。
あ~~ほらもう~~~~!ヒロちゃん呑気にポテト食べてる場合じゃないじゃん。あんたに告った子、もうタダの方に心行きかけてない?
「よしじゃあ」とタダが立ち上がった。「大島帰ろ」
「へ?」
「へ、じゃねえよ。オレら邪魔だから帰ろ」
「え~~」と甘ったるい声でタダに言うミカちゃん。「邪魔じゃないよ~~まだ一緒にいよ?」
ヒロちゃんがタダと、タダに促されて立ち上がった私を見つめて言った。「お~~じゃあまた連絡するわ」
「なあ」と外へ出たとたんタダが言った。「どうアレ」
「どうって…どうもない」
ハハハ、とタダが笑う。「どうもあるくせに」
うるさい。あんたに関係ない。
「なんかわかんねえけど」とタダ。「やたらオレの事見てたような気がする」
いや、私も感じてたけど。ちゃんとタダも感じてたんだね。
「前にもあったじゃん」と私。「ホントはタダと仲良くなりたい女子がやたらヒロちゃんに話しかけたりさ。私も言われた事あった。タダと仲良くなりたいから他の男子とはあんま話さないくせにヒロちゃんとはよく喋るって」
「あ~~…」ちょっと下を向くタダ。
「どうする?」とまたタダは話を戻す。「ヒロトがあの子と付き合ったら」
どうするって…どうも出来ないじゃん!邪魔したいけど。
「どうもしない」
タダが私をじっと見て言う。「へ~~~」
ていうか、私たちはこのまま家の近くまで一緒に帰るのか?
タダはヒロちゃんといつもいたから慣れているのもあるけれど、小学、中学の時も他のヒロちゃんの周りにいた男子のようにうるさく騒いだりはしないヤツだったから、他の男子よりは話すのも楽。それでも同校の知ってる子に見られて一緒に寄り道して帰ったみたいに思われたら、タダも嫌なんじゃないかな。
「ねえなんか用事ないの?」と聞いてみる。
「ん?」とタダ。「どっか寄りたいとこあんの?いいよ、一緒に寄るけど」
いや、そんなつもりで言ったんじゃない。
「じゃあ」と一応聞いてみる。「タダはあの子を…どう思ったの?その、ヒロちゃんの友達としてだけど」
ハハハ、とタダが笑う。「やっぱ気にしてんじゃん」
「そうじゃなくて」と気にしてるのはあくまでも否定して聞く。「ヒロちゃんはタダならどう思うかなって思ってあの子を見せたんじゃないの?」
「さあどうだろ~な~。なんかちょっとエロかったな」
タダもそういう風にちゃんと思うんだ…コイツあんまりそういうの言わない感じなのに。
そうだよね、男子はやっぱああいう子と歩けたら嬉しいんだろうか。別に好きじゃなくても嬉しいんだろうか。そして嬉しいと好きになっちゃうんだろうか。