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「さてと、先にミラのことを伝えとかないとな。ただいま」


 家に帰りついたダイチはため息をつきたい気持ちを押し殺しながら家の扉を開けると、そこには先程別れたはずの二人が待っていた。


「あ、おかえりなのじゃ」

「おかえりダイチ。お邪魔してまーす」

「お前ら、どら焼きはどうした……」

「もちろん買ってきたわよ。お土産はダイチの妹さんに渡しといたから。ダイチの妹さんの料理が美味しいって聞いてたから。前から食べてみたいと思っていたのよね。どうせなら食べようと思ってお願いしに来たの」

「少しは遠慮する気持ちを持てないのかお前らは」

「大丈夫よ、無理って言われたら帰るつもりだったし。まぁ、ミキちゃんは優しいからいいですよって言ってくれたけどね」


 ミキはアリスに優しいと言われて照れた表情でありながらも嬉しいのかニコニコと微笑みを隠せずにいた。


「えへへー、別に優しいわけではないですよー。ただ、ご飯は大勢で食べた方が美味しいってだけです。あ、ダイチお兄ちゃんおかえりなさい」

「あ、うん。ただいま。美樹、無理とかはしてないかい?」

「え? 無理なんてしてないよー。料理作るの楽しいもん」

「それならよかった。それとなんだけど、この子供……、ミラをうちで預かることになったから。今日は歓迎会でも開こうと思ってるんだけど夜の分の食材はあるかな?」

「あ、ミラちゃんから聞いてるから大丈夫だよ。正体のことも聞いたし。多分歓迎会やるだろうからって、さっきウミお兄ちゃんとソラお兄ちゃんが買い物に行ったから食材の方も大丈夫」

「あ、聞いてたんだ。そうか、正体のことも聞いてたのか。それも踏まえて大丈夫なのかい?」

「うん! だってなにかあってもお兄ちゃん達がいるから大丈夫だよ。ミラちゃんも怖い感じがしないし」

「ワシの信用があるととらえていいのか、ワシが弱いと思われてることに憤りを覚えればよいのか悩むのぉ」


 ミラは悩み顔で腕を組みながら困り眉で呟いていたが、ダイチは気付いていない振りをしてミキの言葉に力強く頷く。


「そうだね。お兄ちゃん達が守るから大丈夫だ。料理で手伝うことはあるかい?」

「今のところは大丈夫! 夜は手伝ってほしいけど」

「分かった。じゃあ大人しく待っておくよ」


 ダイチがミキとの話を終えてテーブルに向かうと両手に荷物を持ったソラ達が帰ってくる。


「ただいまー、ミキ。これぐらいで大丈夫?」

「あ、おかえりなさい。うん、これぐらいあれば大丈夫! 夜の分もこれだけあればいけるよ」

「良かった。それじゃあ冷暗所に置いとくね」


 しばらく時間が経って料理を作り終えたのかミキの声が聞こえる。


「よし、出来た! ダイチお兄ちゃん手伝ってー」

「あっちに持っていけばいいのかな? 全部もっていって大丈夫?」

「うん! あとは持っていくものが無いから」

「ほら、海と空も手伝って。ミラも手伝ってくれれば嬉しいんだけど」

「うむ! 分かったのじゃ。ワシもそのくらいは持ち運び出来るのじゃ」

「おー、ミラは小さいけど力はあるのか? なら、大丈夫かな」

「うむ? あ、そういえばワシ、この姿じゃった……。た、多分いけるのじゃ!」

「おいおい、待っといた方がいいんじゃないのか? 無理してする必要もないぜ?」

「大丈夫じゃよ、任せるのじゃ。なにもしないでご飯を食べるのは何か嫌なのじゃ!」

「おー、えらいえらい。それじゃあミラちゃんこれ持っていってくれる?」

「うむ! 任せるのじゃ!」


 いつの間に買っていたのか、子供用のコップと子供用の皿に盛り付けられた料理をトレイに乗せて、プルプル手を震わせながらテーブルに持っていかせた。材質は木である。


「ふー、やはりこの姿じゃと力があまり入らんのじゃ。魔力を封じられてるからブーストも出来んし」

「魔力を自由に使えたら力を封じ込めた意味がなくなるもんね。とはいえ、契約には命の危機を感じたら使ってもよいって書いといたから大丈夫でしょ」

「おー、そうなのじゃ? それなら少しは安心なのじゃ」

「いつの間にそんなこと書き足してたんだ……。まぁ、契約のせいで死なれるのは嫌だからいいけどさ」

「意外に優しいのじゃな、お主らは。俺らのための礎となれ位のことは言われると思っておったのじゃが」

「まぁ、正直ミラにやってもらいたいこともないし。ミラにやらせるくらいなら自分でやった方が早いからな……。その腕輪は言うことを聞かせるためのものではなくて、変なことしないようにつけただけだし。というかそういわれるかもしれないと思ってたのに、よくつけれたよな。僕なら最期まで抗いそうだ」

「まぁ、正直なところ行く宛もなかったからの。死んだときは死んだとき位に考えておった。今はデザートのために生きておるようなものじゃ。美味しいと思えるものを食べるのは久しぶり過ぎていつ以来かも分からんほどじゃがの」


 ミラは目の前の料理を穏やかな表情でスプーンを使って食べ始める。ミキはミラの言葉を聞いて悲しくなったのか俯きながら、用意してたデザートを少し多めに皿によそってミラの前に持ってくる。


「えっと、ミラちゃん。デザートも作ったんだけど食べる?」

「おー、本当か? もちろん頂くのじゃ! ミキの作るものはどれも美味しいのじゃ」

「うん、ありがとう。もっと食べてもいいんだよ?」

「あー、美樹? あんまり甘やかさないようにね」

「う、うん。善処します」


 とはいえダイチもそこまで本気で言ってるわけではないのか表情は厳しいものではない。そんな中、アリスが目の前の食事を美味しそうに食べながらダイチの方を向く。


「皆の評判が高いからどんなもんかと思ってたけど、想像してたものよりかも美味しいわね。これからもたまに来ようかしら」

「一応トップ冒険者なんだから少し考えてから行動するようにな」

「あら、ちゃんと考えてから行動してるわよ。考えてなかったら今頃ミキちゃんをここから部隊に連れていってるわ」

「さすがにそれはやめろよ? 美樹が行きたいなら止めないが、それにしてもまだ早い」

「分かってるわよ。だから、してないじゃない。連れていくならちゃんとミキちゃんから許可を貰うわよ。ついでにダイチからもね」

「俺はついでかよ。まぁいいけど」


 一番重要なのはミキの気持ちだからかダイチもそこまで気にしていないようだった。


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