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 ミラを連れたダイチはソラとウミを家に送り届けたあとミラと二人でウルの家を訪ねることにした。


「という訳で連れてきたんだけどどうしよう」

「いや、流石に説明はしてくれ。今俺が分かってるのは、手錠された幼女を連れてきた友人が困った顔をしてるって状況だから、むしろ俺が困る状況だから」


 何の説明もせずに手錠を付けた幼女を連れてきたダイチの第一声があれだったからか、流石のウルも困惑した表情で頭を抱える。そんなダイチを見て呆れたまなざしでミラが見つめる。


「うむ、流石のワシもそれはどうかと思うのじゃ」

「とはいえなんと説明したものか……、話せば長くなるんだけど……」


 そう前置きしたあと今までのことをウルに説明した。ウルはダイチの言葉に相槌をうちながら最後まで話を聞き終えた。


「なるほどな、とりあえずミラ? だったか。今から俺達の上司に会ってもらうぞ。その人に質問されたことをちゃんと答えることが出来ればとりあえず命は取られないはずだ。その代わりその手錠は着けたまま生活することになると思うが」

「うむ、それはいいのじゃが、ワシに質問したところで時間の無駄に終わるだけじゃと思うのじゃが。もしワシが嘘を教えた場合はどうするつもりなのじゃ?」

「俺達の上司に嘘がつけると思わない方がいいぞ。何故か分からんが嘘を見破ってくるからな」

「そ、そうなのじゃ? それと生活するにしてもどこで生活するのじゃ? 研究所で生活とかは嫌じゃよ?」

「その点は確定じゃないが、多分大地の家で生活することになると思う。もしくは俺の家だな。まぁ研究所とかじゃないからその点は安心していいんじゃないか?」

「うむ……、分かったのじゃ。とりあえずその上司とやらに会わせてほしいのじゃ。出来れば早く眠りにつきたいのじゃ」

「分かった。ちょっと待ってろ。すぐに連れてくる」


 そう言って奥にいったかと思うと、数分後に一人の女性を連れて現れた。その女性は年齢的には十代後半ごろにしか見えず髪が銀色の美しい優しそうな女性だった。その女性が現れてから部屋の雰囲気が変わり上から押し潰されそうな位の圧力を感じる。


「こんにちは、私の名前はアリスよ。よろしくねミラちゃん?」

「う、うむ。よろしくたのむ……、その、出来ればでよいのじゃが圧力を解除してくれんかの?」

「あらやだ、ごめんなさい。ウルから龍が現れたって聞いたからいつもの癖で圧力をかけてたみたい」

「うむ、解いてくれて助かるのじゃ。流石にさっきの状態じゃまともに会話も出来ぬかったのじゃ」

「えっと、本当にごめんね? 大丈夫?」


 アリスは威嚇するつもりではなかったのか心配そうな声で少し落ち込み気味だ。ミラと同じ視線になるように腰をかがめてのぞき込む。ミラは心配そうなアリスに笑顔で頷く。


「うむ! 大丈夫なのじゃ、それじゃあどんどん質問をしてほしいのじゃ。ワシは早く寝たいのじゃ」

「あらあら、うーん。それじゃあまず一つ目の質問なんだけどあなたは人を食べたことはありますか?」

「うむ、無いが。全くないとは言えんのぉ。襲われたときに噛みついたことはあるのじゃ。それも食べるということになるのかの?」

「うーん、まぁそれは正当防衛だしね。それじゃあ質問を変えるわね。獣を食べるように人を食べてお腹の中に入れたことは?」

「ないのじゃ。人の前で言うことでもないのじゃが人は美味しくないのじゃ。普通にウサギとか焼いて食べたほうが美味しいのじゃ」


 少し言いにくそうにそれでいて顔をしかめて首を横に振る。襲われたときに噛みついたことを思い出したのか吐き気を堪えるようなしぐさをする。


「それはそうよね。それじゃあ自分から襲ったことは?」

「それはないのじゃ。というか襲う必要性を感じないのじゃ」

「あらあら嘘はついてないみたいね。うーん、それじゃあ必要性を感じないって言ってたけど他の龍がなんで襲うのかとか分かる?」

「それはそこの男にも教えたが、昔からいる龍はワシと同じで襲う必要はないのじゃ。じゃが最近産まれた龍は神の介入によって人を襲わないと生きていけなくなったのじゃ。なんでそんなことを神がしたのかはワシにも分からんのじゃ」


 ミラがダイチを指さしながら質問に答える。神に対して何か思うことがるのか少しだけ殺気が漏れていたが、それ以外は特に感情を交えず淡々と答えていく。


「これも嘘はついてないっと、それじゃ次が今日のところは最後でいいかな。今あなたを押さえつけてるその手錠だけどあなたが本気を出したら壊すことはできる?」

「うむ、絶対に壊せないとは思えんのじゃ。じゃから今はまだ無理じゃがしばらく……、そうじゃな半月ほどもあれば力も戻るじゃろうから、この程度の魔道具は壊せるじゃろうよ」

「あらら、それは困るわね。うーん。それじゃあ私たちが壊してもいいって言うまで壊さないって約束できるかしら? 出来るならこの契約書にサインして?」

「うむ? この契約書はまたなんというか……、えらい昔のを持ってきたのぉ。さすがにこの契約書は破ることは出来ぬが、ふむ、まぁええじゃろ。その代わりじゃが力を制限するんじゃ。衣食住はしっかりとしてほしいのじゃ」


 古い紙に書かれた契約書を見て少し眉をひそめたが、契約するのは変わらないからか抵抗もせずに受け入れていた。ちゃっかりと自分の世話を任せてはいたが。


「うーん、今のミラさんってどのくらい食べるの?」

「そうじゃなぁ、人間と同じ量じゃと思うぞ。エコモードじゃからな!」

「なるほどね、まぁ、そのくらいならいいかしらね他にも要望はある?」

「うむ、そうじゃなぁ……」


 細かい要望を出しつつ、二人で擦り合わせていったミラとアリスは何だかんだで最後には仲のいい姉妹のようになっていた。


「うむ、それじゃあワシはこれからダイチの所で世話になるということでよいのかの?」

「ええ、そうよ。ダイチならまぁ、大抵なんとかしてくれるでしょうからがんがん甘えちゃいなさい」

「おいこらちょっとまて」

「うむうむ、それじゃあ贅沢なスイーツとかも食べさせてもらってもよいのかのぉ?」

「ええ、ええ、がんがん食べさせてもらいなさい。私が許可するわ」

「ほわぁ、それじゃあイチゴの乗ったパフェとか食べたいのじゃ!」

「それは私も食べたい! でも、そういうのおいてるお店がなかなかないのよね」

「なん、じゃと……、わしの贅沢スイーツライフ……」


 ミラは本当に食べたかったのか契約書を書く時よりも絶望に染まった顔になっていた。


「まぁ、それ意外でも美味しいスイーツはあるから。あんことか美味しいわよ?」

「どら焼きとかあるかのぉ?」

「どら焼きなら確かあったわ。今から一緒にいく?」

「おー、食べたいのじゃ!」

「それじゃあいきましょうか。ウル、ダイチ。あとよろしく」

「え」

「え、ちょっ、……行きやがった」


 言葉を挟む余裕すら与えずに、アリスはミラの手を取って外に駆け出していった。外に出られる機会を逃したくないアリスはもうダイチ達には見えない位置に逃げる。


「とりあえず、俺は家に帰って家族に今日のことを伝えてくる。俺の意見を無視するどころか聞いてすらもらえなかったが」

「まぁ、それはアリスのことを最近かまってなかったお前が悪い」

「いや、あいつももういい大人だろうに」

「あー、はいはい。とりあえず俺は部隊のところに行って後始末してくる」

「頑張れ、俺は美樹になんて説明をすればいいのかわからん」

「まぁ、全部説明しといた方がいいと思うぞ、後からになって龍でしたとか聞いたら困惑するだろうし」

「まぁ、そうだな。別に隠すことでもないししばらく住むことになったって説明するか……」

「美樹ならそこまで気にしなくても大丈夫だろうさ。もう少ししたら坊主達がいなくなるし、丁度いいんじゃないか?」

「まぁ、部屋はまだ空いてるからいいが。皆ミラのこと信用しすぎじゃないか? なんであんな怪我を負ってたのかも聞いてないし」

「確かにな。怪我を負ってた理由とかは聞いといてくれ。とはいえ悪いやつに見えないってのがあるからな。おまえもそう思ったから連れてきたんだろ?」

「まぁ、そうなんだけど。とりあえず要観察って感じかな。それじゃあまた今度な。早く帰って説明しなきゃ」

「おう、またな。頑張れよ」


 ダイチは少し家に帰るのが憂鬱そうな顔だったが急いで家に帰っていく。ウルはそんなダイチを苦笑しながら見送る。


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