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 朝食を食べ終えた男達三人組は家からすぐ近くにある森にやって来た。


「いきなりであれだけど……、今日は二人に気配察知を覚えてもらうね」

「気配察知ですか?」

「うん。その様子を見る限り知らなそうだね。海はどうだい?」

「俺も知らないぜ」


いきなりの言葉に首を傾げるソラとウミにダイチは悩むそぶりを見せる。


「そっか。うーん、二人は魔力で気配を探る方法は知ってる?」

「え、そんな方法があるんですか!?」

「そんな方法聞いたことないぜ!?」

「あれ? あー、そういえば他の人が使ってるのは見たことなかったかな……。じゃあまずそれを教えようかな。海は魔力の操作が苦手だし大変だろうけど頑張って覚えてね」

「おう! って、魔力の操作が関係するのか?」

「そりゃまぁ、魔術と同じようなものだからね。それじゃまずは、二人とも自分の魔力は感じられると思うけどその魔力を薄く周囲に漂わせることは出来るかい?」

「やってみます。薄くうすく……、えっと、こんな感じですか?」

「うん、ばっちり! 空は大丈夫そうだね。次は海なんだけど」


 ソラの周りに漂う魔力を見て頷いたダイチは心配そうな顔でウミの方を見る。ウミはどうすればいいのか分からないのか体に力をいれて今にも飛んでいきそうだ。


「う、うーん? 薄くうすく。薄く周囲に……、だー! 分からねぇ!」

「あはは、海は力を入れすぎだよ。一回深呼吸してごらん? 力が入りすぎて魔力を内側に押し込めちゃってるよ」

「んなこと言われてもよー……。よし、一旦落ち着こう……。ふー」


 ウミはダイチの言葉に頭を悩ませながら言われた通りに深呼吸をして落ち着く。そんなウミの様子を見て笑みを浮かべながらダイチはウミの周りを指差す。


「ちなみに今の状態が漂わせてる状態だからね」

「え!? っとと、さっきの状態さっきの状態。すーはー」

「うん、まぁ二人ともここまでは出来たみたいだから次だね。次は外にだした魔力を風に漂わせるように周囲に広げてみよう。まずは僕がいる方向に漂わせて見ようか」

「兄ちゃん、俺は風の魔法とか使えないぜ?」

「あくまで《ように》であって、その魔術を使ってではないから。でも、すぐに場所の情報を調べたいときは、海が言ったように風の魔法で流すから間違いではないけどね」

「えっと、とりあえず流してますけどこんな感じでいいんですか?」

「あ、そうそうそんな感じ。今僕にたどり着いたけどどんな感じがする?」

「とりあえず早く逃げなきゃって思うくらいには魔力の強さが分かります」

「ん? 魔力の多さじゃなくて強さが分かるのかい?」

「え? はい、多分」

「うーん、今、さっきよりも魔力を抑えてるんだけど変化とか感じる?」

「いえ、さっきと変わらないです。あ、それと何というか白い魔力な感じがします」

「……なるほど、それは生き抜くために必要な力だから大事にしないとね。今度ウルにも協力してもらおうかな。海の方はどう?」

「風のように風のように。あ、なんとなく兄ちゃんがいるってのと、ソラがいるってのは分かった」

「うん? 個人名が分かるのかい?」

「なんとなくだけど、兄ちゃんだなぁって思うくらい」

「その力は初めて聞いたかも。それが本当なら同士討ちを減らせるいい力になりそうだね。どちらかというと諜報とかに向いているけど」

「諜報? 俺は息を潜めて敵の懐にはいるみたいなことは出来ないぜ?」

「まぁ、できないだろうけど。人の魔力の違いが分かるってことは、その人がどこにいても特定出来るってことだから。今このときどこにその人がいるのかっていうのが分かるのは大分大きいよ。それに、正体を隠していても正体が分かるってのも強いね」

「そういうものなのか?」

「例えばだけど僕が何かしらの犯人で隠れたとする。それを魔力の感知だけで分かるんだ。逃げても無駄という状況に追い込めるんだから、犯罪した人にとっては魔力を覚えられたくないだろうね。それにいくら僕が姿かたちを変えても魔力は変えられないから特定できるね」

「そっか、魔力を覚えられたらどこにもいけないってことは、仲間のところにすら戻れないからバレた時点で終わりなんだ」

「そうだね、この力を大々的に発表すればそういったものは近寄らなくなるだろう。でも、発表しなければそういったものたちを捕まえることが出来る。とはいえ、それを信用してもらえるのかどうかってのもあるし、危険な目に遭うだろうから僕たちだけの秘密にしておこうか」

「なんかよく分からないけど、兄ちゃんたちがそういうならそうする」

「少しは考えような。まぁ、海はそういうの苦手だし……。空、よろしくね」

「えっと、考えるのは僕の役割だと思ってますから大丈夫ですよ」

「おう、そういう難しい話はソラに任せるぜ!」

「あはは、うん」


 ソラは諦めてるのかウミの言葉にただ乾いた笑いで頷くだけだった。ダイチは呆れた顔でウミを見てすぐに次の説明に入る。


「それじゃあ、次だね。空は風の魔術で魔力を早く飛ばせるようになろうか」

「はい、どのぐらいの早さとか目安はありますか?」

「うーん、ここから僕たちの家までの距離を一瞬で把握出来るのが一番だけど、うーん。自分の隣に五人ずつ、前と後ろに人が五人ずつ入る距離を想像して、その空間を瞬時に把握出来るようになれば奇襲は防げるから、一先ずはそこを目標にしようか。常時その距離を把握できれば文句なしだね」

「常時ですか、でもそんなことしてれば魔力がたりなくなりませんか?」

「若いうちからこの方法を使ってれば、体が魔力に慣れて魔力量が増えていくんだよ。だから、今のうちにこの方法で魔力の量を増やそうと思って。体がものすごくだるくなるけど、次の日には何事もなくなるから安心して。それに、慣れてきて展開する魔力を最低限まで薄く出来るようになればそこまで魔力は消費しないよ」

「若いうちから使えばもっと魔力量が増えていたんですか?」


ダイチの言葉に疑問を覚えたのかダイチの顔を見る。ダイチは疑問に思うと分かっていたのか苦笑いしつつすらすらと答えていく。


「まぁ、そうだね。でも、子供の時に魔力量が多いと情緒不安定になりやすいからね。だから基本的に、空たちよりも少し下位の年に始めるんだよ、まぁ、空たちの場合は、子供の頃から模擬戦とかで魔法を使ってたから、今ぐらいから始めても他の人よりは多いと思うけどね」

「おー、それは嬉しいです」

「なぁなぁ、兄ちゃん俺は?」

「海はまず安定して周りを把握出来るようにならないとね。こういう細かい魔力操作とかは苦手だし」

「分かった。それぐらいなら頑張ればいけそう。風の魔術で流すとかはちょっと難しいけど」

「まぁ、ゆっくりで大丈夫さ。学校の人たちもそこまでは覚えてないだろうからね」

「お、じゃあこれが出来れば他のやつに一歩差をつけられるな!」

「まぁ、そうだね。これが出来るようになればそうなるんじゃないかな」

「じゃあ頑張らねえとな! 変なやつらがいないとも限らないし」

「あはは、まぁ、貴族の人たちはめんどくさいのもいるだろうけど、いい人もいるから貴族ってだけで判断しないようにね」

「分かった」


 他にも細かい説明をしてから森の中に入る頃には時間が結構経っていた。


「おっと、話してたら時間が早く過ぎちゃうね。とりあえず二人とも周りに魔力を展開した状態で森に入ろうか。どっちかが倒れたら僕が連れて帰るから安心して倒れていいよ」

「出来れば倒れたくないんですが」

「倒れるまで魔力を使わないと増えないから。倒れるまでやってみよう。とはいえ目標を決めないとやる気がでないだろうから、今展開してる状態を維持してお昼まで持つように頑張ろうか。大丈夫二時間くらいだしなんとかなるよ」

「こ、この状態で二時間」

「無理じゃね? ……ちなみに兄ちゃんはどのくらい持たせられるの?」

「え? うーん。今の空たち位のでいいのならずっと出来るよ。寝てるときは難しいけど。出来なくはないね」

「ど、どれだけ魔力があればそうなれるんですか」

「あはは、さすがに魔力量が多くてもずっと出来るのは無理だよ。消費するだけじゃなくて魔力の回復速度がないとね。これも、今の修行を続けてればだんだん早くなっていくよ」

「そうなんですか。まぁ、それなら……」

「頑張ろうぜ」

「さてと、それじゃあ入ろうか」

「はい」

「おう」


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