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……カン・カン・カン・カーン・カン・カン・カン・カーン……
いつの間にか、気づくと、友達の友達の声は、なぜかとても低い場所から発せられていた。
地面に近い位置から聞こえてくる。
下半身の上に上半身が乗った普通の身体では、ないかのように。
下半身が無いかのように。
わたしは、彼女を見た。
彼女を見下ろした。
すると。
凍りついた血溜まり。
断絶した身体。
はみ出した内臓は冷却され、凍り付いて、触るまでもなく固そう。
今夜は、血も凍るような寒さ。
血も凍る寒さ。
傷口が凍り付いて、流れ出る意識と血と命も凍りついてしまうような寒さ。
上半身だけの、わたしの友達の友達は、凍りそうな紫色の唇から白い息を吐き出し、言った。
「ねえ、アタシの下半身、取ってきて。
取ってきてよ。
ねえ。
線路のどこかに落ちてるはずなの。
拾ってきて。
ねえ。
ねえ。
ねえ」
……そんなこと、あるはずが無い。
下半身が千切れた死体がしゃべるはずはない。いくら血の凍るような寒さでも、傷口が急速に冷凍されて血の流出が止まり、轢死体が上半身だけで長く生きながらえてしゃべるなんて、あるわけが無い。北極とかならどうか知らないけど、ここではそんなことになるわけがない。
だから。
わたしが見ているものは、全部、違う。
カン! カン! カン! カーン! カン! カン! カン! カーン!
……気づくと、
わたしは、遮断機の下りた線路の真ん中に立って、けたたましく鳴る信号灯の赤い光に照らされながら、探していた。
すぐ見つかるはず。
探さなければ。
電車が来る前に。
死んじゃう。
探さなければ。
……何を?
何を?
わたしは白い息を吐きながら、考える。何を? 何を探す? 今夜は血の凍るような寒さ。歯ががたがた言う。下半身? 千切れて飛んだ下半身? 誰の? わたしの? そういえば、下半身の感覚がうまく感じられない気がした。身体が千切れたわたしの上半身は、下半身を探せるだろうか。
強い光。
電車が近づいてきた。
電車の正面の、車内灯よりも強い白色光が、線路の上のわたしを照らす。わたしの意識がかすむ。
……!
…………!
………………!
ち、
が、
う。
わたしには足の感触がある。身体は断絶してなどいない。
あの時はただ、
あの時はただ、足が一瞬、すくんだだけ。
「違う!
これ、わたしの死に方じゃない!
わたしの死に方じゃない!」
わたしは、何かを叫んだらしい。
……ゴォーーーーーーー…………
……
……カン・カン・カン・カーン・カン・カン・カン・カーン……
……
……
……




