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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
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Welcome back, Blue blood Memories.

掲載日:2014/07/17

 天使に悪魔、人魚に魔法使い。ファンタジーだ、この上もなく。

「だから君もファンタジーだよ、僕にとっては」

 そう向かいのアンティークな椅子に座る彼に言えば、呆れたように溜め息一つ。

「お前の目の前にいる、実際に存在している、認識可能な私を“ファンタジー”? 呆れるね全く。お前の頭の中身の方がよっぽどファンタジーだ」

「ケンカなら言い値で買うよ」

 すぐ傍にあるテーブル、その上の果物カゴに入っているのはリンゴやオレンジ、ブドウなんてのもあるけれどつまり、皮をむくべき果物たちだ。当然横には果物ナイフ。

 風にふわりと揺れたカーテンと太陽光に、その刃先が光った。それを見ている僕を見ている彼の目。

 眼。

 切れ目のような瞳孔を持つ、その眼。

「いくらお前が暴力に長けた人間であっても、吸血鬼の私に勝てると思うのは全く、本当に、」

 ファンタジーだ。

 そう言い切る前にガタンッと音を立て、僕の座っていた椅子が倒れる。そして彼の首には果物ナイフ。

 無意識にぺろりと唇を舐めて、僕は目を眇める。

「そんな安く売ってくれるとは思わなかったよ。お礼に首をむいて(・・・)あげよう」

「果物の皮のように?」

 そう問いかけて彼はふっ、と知的に笑う。ああ、その美貌、黒いコート、血の気の無い肌。貴族とはこういう人物を指すのだろう。とっくの昔に失われたような、その誇り高き様相。

 確かに彼は吸血鬼だ。失われたはずの古きを今なお、継続して持つ不老不死。

 その笑みについ気をとられたら、首に冷たい感触がした。

 目だけを下に向ければそこには、彼の白い腕が見えた。冷たい感触は首を這い、広がり、ゆっくりと力を入れてくる。

 首を絞めているのだな、と確認して、目を前に向けた。先程の笑みはなく、ただじっとこちらを見てくる眼。

「……抵抗しないなら、続けるが」

 細くなってきた気道から声を上げる。

「嫌だ」

 そうしてそのまま見詰め合う。互いの首にナイフと手を掛け合いながら。

 視界が歪む。けれど、彼の首には血の一滴もこぼれない。それが何だか悔しい。当然、ナイフを握る手は少しもぶれさせないよう、最大限の注意を払っているから。

 しかしそろそろ傷がつく。

 僕の視界は歪んで揺れて、どうしようもなくなってきたから。

「……っ、ぃう、の、ぁ、っぁだ」

 死ぬのは嫌だ。

 そう彼に訴えかければ、首を圧迫したまま立ち上がり、そっと僕を横たえた。ああ、木でできた床は乾燥していてどこか生温いね。不快感はないけれど、少し落ち着かないよ。

 はくはくと喘ぐ僕の口に彼もまた、自身の口を近づける。

 そうして柔らかく、優しく、囁くように。

「死なないだろう。お前は息を止めた瞬間、吸血鬼として生きるのだから」

 声を出そうとして、けれど手が強張っただけだった。それはナイフを持つ手であり、彼の首は、その白い首は、赤く滲んだ。

「っ、――っ」

 ごめんと抗議の意味で呼んだはずの彼の名前は、もはや音にすら成らない。

「ねえお前、私はもうロミオとジュリエットにはうんざりなんだ。お前はこの茶番が大層お気に入りだったようだが、私はもう待てない。いくら退屈だからといって記憶を失くし、人間として私に出逢い、また愛しそして死んだ瞬間戻るといってもね、寿命まで待てないぞ。どうか私を、」

 ――冷たい腕で抱き締めてくれ。

 意識が途切れる瞬間、ひやりと口に触れるのは、蘇生する彼の愛への祝福。

タイトルの Blue bloodは貴族の血を意味しています。吸血鬼って貴族っぽいよねということでつけました。


読了ありがとうございました!

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