自分以外の転生者に会う
第二話です
王都の門の前に着いた、やはりというか検問待ちの列ができている。どこの国でも国の中心の都はだいたいこうだ。国家元首が住んでいるだけあって他の都市よりチェックが少し厳しい上に当然出入りする人も多いと来て入るまでに少し時間がかかるものなのである。俺たちみたいな冒険者は身分を証明できればあっさり通れるのだが、馬車で町と町を行き来する商人なんかは馬車の中の荷物も確認されるし税も取られる。
周りを見てみると門から出てくる俺たちみたいな冒険者たち、いかにも薬草採取に行ってきますと言わんばかりの駆け出したち、門に並んでいるほうにも馬車に乗った商人とその雇われの護衛たち、あれはキャラバンだろうか? なんだか少し前のほうで騒いでるやつがいるようだ。
あれは兵士に支給される鎧を着ているから門番だろう。もう一方は黒髪かな?それで服装も全身真っ黒だ。何を言っているのかよく聞こえないがもう少ししたら別の門番たちに連れていかれるだろう。
もうそろそろ俺たちの順番だ。そう思ったところで横のほうで門番とさっきの黒髪の男が何か話している。だいたい年齢は14,5歳くらいだろう。顔立ちは比較的浅いほうだろう。全身真っ黒に見えたのはどうやら学ランを着ていたかららしい。
え、学ラン?!
「いやいや、身分証明証がない人が王都に入れないと身分証明証が手に入らないのは困るから救済として保証金を出せばはいれるってのはわかるよ、でもそれだと入れない人がでてくるじゃないか」
「一々一理あるね君は、規則なんだよ。今のルールだとどうやっても君を中に入れてあげることはできない」
「なら冒険者ギルドでギルドカード発行してもらいに行くまで監視しててくれていいからさあ」
……仕方ない「同郷」かもしれんしな。助けてやるか。
「門番さんちょっといいか?」
「なんだい?」
「久しぶりだな、お前も王都に出てきたのか?」
そういって俺は黒髪に声をかけた。
「えーっと?すみません誰ですか?」
「うーん俺そんなに変わったかなあ?まあこれ言ったら思い出すだろ、すいません門番さん俺とこいつだけの男の秘密ってやつで思い出させようと思うのでちょっと内緒話してきていいですか?」
「うん、男の秘密なら仕方が無い」
……門番ちょろいな。大丈夫か、この国。
「いいなあそういうの。僕も久々に故郷に帰ろうかなあ」
まだ訳が分からず混乱している黒髪を端のほうに引っ張っていき声をかける。
「おまえ、見たところ東洋人系の顔してるが?日本人か?韓国人か?」
「な!あ、ああ一応日本人だ」
「どうやってこっちに来たんだ、恰好からして転移のパターンか?」
「そちらは転生系ですか?」
「そうだ。とりあえず中には入れてやるから、俺と同じ村出身ってことにしとけ」
門番のところまでもどってどうやら仲間たちは先に入っているみたいなので俺たちも入ることにする。保証金は出しといてやった、ギルドに登録したらあとで返してもらえるからな。ちょっと離れたところでみんなが待っていたのでそっちへ行くことにする。
「なんかファンタジーって感じの街並みですね」
「別に敬語はいらんぞ」
「あ、そう?じゃそうする」
「あと苗字を持ってるのは貴族だけだ。地球の名前を使うなら下の名前だけにしとけ」
「じゃあ俺の名前はショウタだな」
ショウタを仲間の元へ連れていきとりあえず冒険者ギルドに連れていくことを伝えると、皆もとりあえずギルドには顔を出すようだ。なのでギルドに向けてショウタを案内しながら行くことになった。
「自己紹介がまだだったな。グレイだ。パーティー内での役割は斥候、遊撃だ」
「ルイーゼよ、役割は前衛ね」
「スティシア・アースフィアですわ、魔法使いですの、通称はステラですわね」
「キース、役割は回復が主だがだがたまに前に出ることもある」
「メリルですー、探索、補助、魔法攻撃のできる妖精使いですのー」
「ショウタです。田舎から出てきたばかりでまだ何にもわかりませんがよろしくお願いします」
「堅いわね、別に敬語じゃなくてもいいわよ、ねぇみんな?」
ルイーゼが敬語はいらないよね? と周りに確認すると皆も特にこだわりはないのか各々了承の返事を返した。
ステラがショウタを観察している。まあすぐにステラの興味はなくなるだろう。特に変わった部位があるわけではないからな。
「あの?ステラさん?どうしたの?そんなにこっちみて」
「ショウタ、そいつはきれーな顔してその実はとんでもねぇよ。だからちょっと照れてるところ悪いがすぐにステラの興味はなくなるぞ」
「ない、ないですわ。角も尻尾も耳もないですわぁ」
「ある意味ステラさんに興味を持たれなくて幸運でしたねー」
「なによ、それじゃ私に好かれた人は不幸だとでもいうつもりですの?」
「変態に目をつけられる事が幸せなわけねーだろ」
「変……態……?」
「そうだこいつは人間の先祖返りした特殊な部位が大好きなんだ」
「まあ見てればわかるんじゃないかしら?」
「違いねー」
ギルドへ向かう道すがら通り道にある今後ショウタが世話になるであろう店を紹介していく。
「あら、あなたなかなかいい尻尾を持っていますわね。わたくしとイイことしませんか?」
俺は何も聞いてない。何も聞いてないぞ。
「お嬢様系魔女っ娘キター、とか思ってたのに」
ショウタもこんなことを呟きながらドン引きしている。いや一応その分類ならばステラは十分その中にカテゴライズできると思うよ。ただ変態なだけで。
前のほうに人だかりができている。できれば喧嘩とかやってないといいなぁ。めんどくさいの一人抱えてるし、乱入したがるのが一人いるので。
現実は非常だ。予想通り喧嘩だった。ムキムキのおっさんがとっつき合いをしている、昼間っからあんなに酔うまで酒飲むなよ。幸いまだ互いの獲物は抜いていないようで、できればそれを抜く前に決着がついてほしいところだな。
ルイーゼがうずうずしている、もう背中のロングソードに手がかかっており乱入する気満々だ。
それにしてもなかなかあのおっさんたちやるなぁ、そこそこ大きな依頼でも達成してそのお祝いだったのかな?あ、腰の刃物抜いちゃった。互いにあれは携帯用のナイフかな?
あ、ルイーゼがとびこんでいった。あーあ、かわいそうに。
「なかなか楽しそうなことをしているわね」
「ああぁん?」
「なんだねぇちゃん引っ込んでろ」
「獲物まで抜いちゃって、これは私への挑戦状なのよね?」
「は?なにいって」
「ごちゃごちゃ言わず私も混ぜろぉ」
そういってルイーゼは素手で飛びかかっていく。ああ、暴走しちゃった。ルイーゼは最初の一発で男を一人昏倒させるともう一人のほうに向きなおって拳を構える。周りのやじ馬たちも突然の美女の乱入で盛り上がっている。
「いいぞー」
「もっとやっちまえー」
「ああ、俺も殴られたいぞー」
「どうしたおっさんどもなさけねぇぞー」
中の3人に向かってヤジが飛ぶ。変なのが混ざっていた気がしたが気にしてはいけない。
「ああ、大人のお姉さんみたいな感じでちょっといいなと思ってたのに」
ショウタくんはまたしても俺のパーティメンバーの裏の一面をみて絶望している。うちがあまりにおかしな奴ばかりのせいでショウタが耐えられなくなったか。ルイーゼはあのあとなぜか殴り倒した奴に慕われるんだよなぁ。しばらく一か所に滞在していると、いつの間にか酒場にいるおっさん達のの姉御になっていたりして、一緒に活動しているとむさいおっさんに突然からまれたりするのである。ああ、もう一人も倒されたか。久しぶりの王都での舎弟一号二号かあれは。
ルイーゼは放っておくことにしよう。そのうち戻ってくるだろう。