Code.5 Unknown
エマヌエルたちが普段住んでいるリヴァーモア州ザカライア・シティから、セレペナ州との州境までは、少々距離がある。
先日までビニルハウスを構えていたエウトロピオ・タウン近郊まで、四百キロ弱だ。
ヴァルカに代わって運転席に座ったエマヌエルは、今アクセルを目一杯踏み込んでいる。高速道路でもないところでこんな運転をしたら、普通は常識で考えられ得る限りの迷惑が一般の皆様に掛かるだろう。
が、隣接するセレペナ州は、未だフィアスティックが占拠している所為か、この辺りは住人そのものが少ない。警察でさえ命は惜しいと見え、州境に近付くほど無人になっていく為、取り締まりもされない。
とは言え、普段はのんびり運転で五、六時間ほど掛けて行く道のりには違いないので、車の能力最高速度で飛ばしまくっても、三、四時間は掛かるはずだ。
「……ったく……! そのレーダー、拾える範囲広すぎだろ! 何の信号拾うのか知らねぇけどな!」
「まったくね。半径五百キロ圏内だから、取りこぼしも多くて」
苛立ったエマヌエルの独り言に、ヴァルカがのほほんとした口調で答える。覚えず舌打ちが漏れた。
「次から自家用ジェットでも準備しとけよ!」
瞬間、「止めて!」と鋭く言われ、エマヌエルは反射的にブレーキを踏み込んだ。
百キロ越えで飛ばしていた車は急ブレーキに耐えられるはずもなく、何回転もスピンしてようやく停まる。
「……~~ッ、何だよ急に!」
「あそこ!」
それまで背後だったほうを向いた車中から、ヴァルカが上空を指さす。見上げれば、飛行機が三機、飛んでいるのが見えた。
「……いや、飛行機じゃない……?」
「フィアスティックよ、飛行型の!」
エマヌエルは再度舌打ちすると同時に、ギアをパーキングに入れサイドブレーキを引くと車を降りた。
「ちょっ、ちょっとどうする気!?」
「この距離なら走ったほうが早い! あんたは勝手にしろ!」
言い捨てた時にはもう駆け出している。
初速からトップスピードに乗せて走りながら、エマヌエルはもう一度上を確認した。
「――ディルク!」
最後尾を飛んでいる鷹型フィアスティックに向かって叫ぶ。果たしてその鷹は、チラリとこちらを一瞥すると、速度を落とした。
それに追い縋るようにして、エマヌエルは逆に走る速度を上げる。足に意識を向けて、膝から下へフォトン・エネルギーを纏うと思い切り地を蹴った。
直後、目を見開く。ディルクの足に届く程度のエネルギー出力と思っていたが、彼を飛び越してしまった。
勢いよく自分に飛んでくるエマヌエルをヒラリと避けたディルクは、軌道修正して、落下するエマヌエルをうまく受け止める。
「……どうした」
「……分かんねぇ。何かエネルギーの出力がうまくいかなかった……」
ディルクの背に足を着けたエマヌエルは、半ば呆然と呟いた。そして、ディルクと話すのはあれ以来だと気付いて、口を開く。
「……ところで、こないだは悪かった。傷の具合は?」
「こうして元気にしている。貴殿が気にすることではない」
それより、とディルクは早々に話題を転じた。
「今は彼らを止めるのが先だ」
彼の言うとおりだったので、エマヌエルも罪悪感に浸るのを一旦脇に置く。
「連中、セレペナから来たのか」
前を飛んでいるのは、鷲型のフィアスティックらしい。
「ああ。リヴァーモアから取り戻すつもりのようだ」
たった二体でか、と口から出掛けた言葉を呑み込んだ。
リヴァーモア州は、単純計算で縦千九百二十三キロ、横幅は広いところで千百五十三キロにも渡る面積がある。
普通に考えれば、たった二羽で、と思っても無理はないが、元が鳥でも大きさが大きさだ。彼らの攻撃力、戦闘力を考慮すると、普通の人間からすれば戦闘機から攻撃されるのと大差ない。
「……街に入る前に止めねぇと」
「分かっている。さっきも説得しようとしたが振り切られてな」
「……もしかして、フォトン・シェルでドンパチやった?」
「少しな。それがどうかしたか?」
「……いや……」
一瞬、ヴァルカが持つレーダーが拾う信号は、フォトン・エネルギーかも知れないと思った。が、今はそれを考える時ではない、と思考を切り替える。
「あとで話す。奴らに追い付けるか?」
「分からん。スタートが若干遅れたのでな。さっき貴殿と行き合うまで全力で追っていたが、いっかな追い付けん」
エマヌエルは、一瞬唇を噛んだ。
「今も全力か?」
「一応な」
「俺が乗ってるから手加減してねぇ?」
「……してない、と言えば嘘になるかも知れんが」
「じゃあ全力で行ってくれ。俺は大丈夫だし振り飛ばされても文句言わねぇから」
すると、ディルクは尚も数瞬沈黙した。
「……本当に大丈夫か」
「多分な。ほかに手はねぇだろ。フォトン・シェルぶっ放すわけにいかねぇし、俺が連中の背に飛び移るにしてもさすがに助走が足りねぇ。フォトン・エネルギーで脚力増強したらあんたの背中ぶち抜く恐れがある」
「……分かった。しっかり掴まれ」
「ああ。できたらどうにか前に回り込んでくれ。俺が話してみる」
「それこそ大丈夫なのか。フィアスティックは通常、ヒューマノティックを下に見ている傾向がある。彼らにとって、ヒューマノティックもゴーレムもサイバネティックも、基本的には手足に過ぎんのだぞ」
サイバネティックは、戦闘知識を蓄えた人工知能だ。手始めに、ゴーレムに移植する研究が進んでいるらしいのは、エマヌエルも知っている。
「あんたは話が通じただろ。あんたみたいなフィアスティックはほかにもいると俺は思ってる。少数派でもな」
「前をぶっ飛んでる彼らは恐らく通じない派だ。でなければ、私が今彼らと追い掛けっこしている道理がないが――」
エマヌエルは軽く舌打ちを漏らす。
「……じゃ、最後の交渉だな。話が通じなきゃ、そん時は実力行使だ。気は進まねぇけど」
「分かった。行くぞ」
ディルクが言い終えると同時に、彼の羽毛をしっかりと掴む。途端、彼の飛ぶスピードが加速した。
やはり、エマヌエルが乗ったことで無意識の加減があったらしい。
前を飛ぶ二羽との距離は見る見る内に詰まったが、あと一歩が詰め切れない。この分では前に回り込むなど、とても無理だ。少なくとも街に着く前に交渉することも難しい。
「……ディルク」
「何だ」
「急ブレーキ掛けられるか」
それだけで言いたいことは伝わったらしい。
分かった、と一言言った彼は、唐突に空中で停止した。
それに合わせてエマヌエルは、しっかりと掴んでいたディルクの羽毛を手放す。エマヌエルの身体は、慣性の法則に従って、前方へ飛び出した。
しかし、その勢いで飛び移ろうというこちらの意図は読まれていた。避けられそうになるが、すんでのところで相手の翼の先を掴む。
「このっ……!」
舌打ちを漏らした鳥のほうは、旋回するように身体を斜めに傾けた。
エマヌエルは歯を食い縛る。両手で翼の先を必死で掴みながら身体を捻り、旋回にあわせて足を振り子のように振った。
一回転して何とか相手の背中に乗る。
「降りろ! 貴様にこの背に乗るのを許した覚えはない!」
仕方なくか、正常な飛行姿勢に戻った相手は、飛びながらも忌々しげに怒鳴る。
「無許可なのは重々詫びる! だから少し話を聞いて欲しい!」
叫ぶように返すが、相手はフンと鼻を鳴らした。
「後ろの鷹型から聞いたのと同じ話ならする必要はない」
「よく考えてくれ! あんたたちはそんなに人間すべてが憎いのか!?」
「愚問だな」
「本当にそうかよ! 『人間すべて』だぞ!? たった今この瞬間生まれた赤ん坊さえ殺さなきゃ気が済まないってのか!?」
すると一瞬、相手は息を呑んだように思えた。その隙に踏み込むようにエマヌエルは畳み掛ける。
「俺たちを実験動物扱いしてた奴らは、全人類の割合からすりゃほんの一握りだ。北の大陸最北端の研究所でされてた悪魔みたいな研究なんて、あそこで働いてた研究者の更に一部しか知らねぇことなんだぞ。むしろ何も知らない人間のほうが多い!」
「……だから何だ。連中のやってたことを見逃せと?」
「そうは言ってない! ただ、無差別に殺人するのはやめて欲しいって言ってんだ」
「それがどれだけ手間取ることか、貴様には分かっているのか。それに何も知らぬ赤ん坊とて、いつまでも赤子ではない。やがて研究に手を染める者も出よう。そうなる前に全人類を殲滅しようと考える『アダム』の計画は、そんなに理に適わぬことか?」
アダムとは、フィアスティックによる騒乱を主導した狼型のフィアスティックだ。とは言え、エマヌエルも直接会ったことはない。
「悪事に手ぇ染める奴は隠れる術にだって長けてる。あんたらは結局何も知らない、罪もない人間を殺して回ってるだけだ」
「貴様の言う何も知らぬ人間を一掃すれば、自ずと罪を犯した者が地上に炙り出されて来よう。残った連中を殺せば我らの報復は達成できる」
「分かんねえのか! あんたらがそーやって無差別にフォトン・シェル吐きまくれば人間側だって応戦する! 自分たちを守る為にだ! そんなの無駄な殺し合いのループができあがるだけだし、連中の思う壺だぞ!」
「……何だと?」
最後の句に引っかかりを覚えたのか、それまで暖簾に腕押しだった相手の反応が変わった。
「どういう意味だ」
「とにかく下に降りねぇか。前のお仲間も――」
落ち着いて話したい、と言うより早く、乾いた音が空気を震わせた。直後、前を飛んでいた鳥型フィアスティックが大きく体勢を傾がせ、落下していく。
「何っ……!!」
とっさに下方へざっと目を走らせる。
どういう仕掛けなのか、今は右手側下方を走る車の天井から、紅い髪をなびかせた見知った少女が小銃を構えている。
運転しながらそんなことをするのは通常不可能だが、今はそれを考えている余裕はない。
「やめろ!」
「チィッ……!」
エマヌエルがヴァルカを制止するのと、下にいる鷲が器用に舌打ちするのとはほぼ同時だった。鷲はヴァルカのほうへ方向転換すると、嘴を開く。
その嘴の隙間から、見慣れた青白い閃光と音叉のような音が肥大していく。
「あんたもよせ! あの女が持ってるのはマグネタイン弾を装填した銃だぞ、フォトン・シェル撃つだけ無駄だ!」
言い終えるなり、エマヌエルは鷲の背を蹴り、彼を庇うように宙に舞った。瞬間、銃を構えたヴァルカの紅い瞳が見開かれる。
同時に、頬を何かが掠った。
(しまっ……!)
思った途端、視界が陰る。反射で振り仰ぐと、先刻まで乗っていた鷲が、よりにもよってエマヌエルの頭上で身体を傾がせていた。
「やばっ……!」
空中では、いくら何でも避けられない。
だが、鷲の落下に巻き込まれる直前、エマヌエルの身体は風にさらわれる。間一髪、ディルクが宙にいるエマヌエルを受け止めていた。
しかし、安心できる状況ではない。
鷲が地上へ落ちていく様が、遠い出来事のようだ。
無意識に手の甲で頬を拭う。ノロノロと目の前に持ってきた手の甲には、かすかに、だが紛れもなく血が付着していた。
「……ディルク」
「何だ」
「あんたもすぐここから離れろ」
「どういうことだ」
「多分……だけど、マグネタイン弾食らっちまった。俺が俺でいられる内に――」
俺から離れとけ、と続ける前に、ドクン、と造りモノの心臓が飛び跳ねた。
(マズいッ……!)
無意識に胸元を握り締める。
「エマヌエル」
「早くっ……! 絶対に俺を捜すなよ!」
言い終えるなり、エマヌエルは空中へ身を踊らせた。落下の間にも、心臓は暴れるように脈打つ。体中が心臓にでもなったかのように脈動し、それがどんどん加速する。呼吸が容赦なく浅くなる――まるで数日前の再現だ。
着地の体勢も整えられず、空中でただ自分を抱き締めるようにして身を縮める。
(くっそ……!)
ダメだ落ち着け、と自身に言い聞かせても、身体の中心からエネルギーが膨れ上がる感覚を止めることはできない。
身体が内から破裂する錯覚を覚えた瞬間、意識が白く灼けた。
***
落下する彼の身体が青白い光を放って、破裂したような錯覚に陥る。
ヴァルカは一瞬目の前に庇を作るように掌を翳し、目を細めた。
〈ヴァルカ〉
車内オーディオの部分から、電子音のような声が聞こえる。
〈ここからどうする気だ?〉
重低音の声音は、電子音でありながら、イントネーションは普通の人間が喋るそれと何ら変わらない。
「……とにかく、彼を止めないと」
〈この前は、あっさりトドメ刺そうとしたのにか?〉
「誰もいない荒野だったからよ。ここは人の居住地域が近い。どんな風に暴走するか分からない以上、止める必要がある」
〈生かしたまま暴走を止める。そういう意味か?〉
改めて問われて、ヴァルカは思わず息を呑んだ。
生かしたまま止める――それがどれほど困難なことか、ヴァルカ自身、先日暴走状態のエマヌエルと戦り合って、痛いほど思い知っている。はっきり言って、委細構わず殺してしまうほうがよほど簡単だ。
でも、とヴァルカは唇を噛む。
エマヌエルに対する認識は、今や複雑になっていた。
彼を『生体兵器開発研究の被害者』とは理解できている。けれども、ヴァルカには今、どうしてもエマヌエルを『スィンセティックの中の一体』として生け捕るか、殺して遺体を持ち帰るかしなければならない事情があった。
だからこそ、無機物に対するように接する努力をしていたのだが――
「……とにかく、車を停めて」
はきとした答えが出ないまま、問いに対するものとは明後日の言葉を口にしながら、天窓から出していた身体を車の中に納める。運転席へ滑り降りると同時に、車がスローダウンした。
停止した車から降りると、ガードレールを飛び越え、歩道を挟むように設置されている反対側のガードレールからやや身を乗り出す。
その下には、広大な森が広がっている。その森の奥深く、距離にして約五十メートルほど先で、青い嵐が吹き荒れているのが見えた。
「……まさか前の暴走から五日でこんなことになるなんて」
無意識に呟くと、〈半分はお前の責任だろう〉と耳に装着したイヤーカフ型の通信機から重低音が聞こえる。
「……分かってるわ」
容赦のない指摘に、ヴァルカは舌打ちして眉根を寄せた。
「だから生かしたまま止めてやろうってんじゃない。これで貸し借りはゼロだわ」
〈彼のほうでは、貸し借りなどと思ってもないかも知れないぞ〉
「うるさいな。とにかくあんたは、ドクターに急いで連絡して。それと、車をどこか、人の邪魔にならないトコに持ってっといて!」
半ば捨て台詞を残し、ヴァルカはガードレールを飛び越え、眼下の森へ急降下した。
***
「――ッッ……ッぅ、ア」
青白いエネルギー波がスパークして飛び跳ねる。
その中心にうずくまったエマヌエルは、自分を抱き締めるように身を縮めていた。
そうしていても、力の暴走はちっとも治まる気配を見せない。身体が破裂しそうだ。
(……マジで、ヤバいッ……!)
次は木っ端微塵になってもおかしくない――そう告げたウィルヘルムの診断を、完全に甘く見ていたと今になって悟る。
「ッ、あぁ!」
また身体のどこかが裂けて痛みが飛び跳ね、思わず呻いた。地面にしがみつくように這い蹲れば、地面へ突いたほうの握り込んだ指先が、土を抉る。その行動は、力の暴走を止めるのに、どれほどの効果も生まない。
今回、意識が飛んでいたのは、ほんの一瞬――だったのかどうか、エマヌエルには分からない。
ただ、それきり自我が戻らなくても、いっそそのほうがマシだった。
「くっ……そ……!」
静まれ、鎮まれ、と繰り返し念じても、意思とは無関係に青白い閃光は跳ね回り続ける。
この前は暴走が止まるまでにどのくらいの時を要したのだろう、と現実逃避のような考えがふと頭をよぎった。
それ以前に、時さえ経れば、必ず鎮静するという根拠もないということに気付いて、精神的な目眩に気が遠くなりかける。が、そのまま意識を手放すのが正解か否かも判断し兼ねた。
もう身体のどこからエネルギー波が出て、どこが裂けてどこが痛いのかさえ分からない。呼吸さえまともにできない。
(……まだ……っ、まだ、死ねない、のにッ……!)
このまま死ぬしかないのか。まだ、やることが残っているのに。
あいつらを全部殺し切ることもできずに、このまま――
(ちっ……くしょう!)
誰に対するものか、自分でも分からない悪態を吐いた直後、耳慣れた風切り音が通常時より鋭敏になった聴覚を震わせる。瞬間、体中の痛みは意識の外へ追いやられ、反射的にその場を飛び退いていた。
意思とは関わりなく、纏ったエネルギー波によって周囲の木々は薙ぎ倒される。その為、回避行動は阻害されなかった。
普段と同じ感覚で動いたにも拘わらず、先刻いた場所から数メートル離れている。
開けた視界の先に、さっきまでうずくまっていた場所が、クレーター状に陥没しているのが分かる。
「なっ……!?」
「エマヌエル、聞こえるか!」
とっさに目を上げると、同様に上空も開けていた。そこにディルクがホバリングしている。
「ディル、ク」
喘ぐように相手の名を呼ぶと、前と違ってこちらの『意識』があるのは彼にも伝わったらしい。
「三時の方角だ。何か――新型の兵器を携えた人間が集まっている」
「だっ、たら、あんたも、逃げろ」
ズキ、とどこかに走った激痛に、整った顔が歪む。エマヌエルは無意識に右手で左上腕部を押さえ、顔を俯けた。
「しかし」
「……俺なら、平気だ。少なくとも……能力が、暴走してる、間なら」
「暴走が止まったらどうするのだ!」
「人の心配してる場合か! 初対面の時のヴァルカの反応、見ただろ! あれが人間全般のリアクションの基本だぞ! それこそ話し合いなんて通じないのはあんたも知ってるはずだ!」
刹那、エマヌエルたちの話し合いの間を遮るように、さっきの風切り音が響く。
ディルクが素早く羽ばたき、吹き荒れる風にエマヌエルは足を踏ん張る。
まだ能力の暴走は治まる気配を見せない。
エマヌエルはディルクが言った方角へ目を向けた。いつもより軽く地を蹴っただけで、先刻ディルクがいたのと同じくらいの位置へ身体が浮上する。
目算で約五百メートルほど向こうの道路に、確かに巨大なボウルのようなものが、これまた巨大な柱に支えられて設置されているように見える。兵器かどうかは分からない。
しかし、音叉のような耳慣れた音が響き、ボウルの中で見慣れた青白い稲妻が飛び跳ねる。それらがボウルの中心に渦を巻いて集まり球体を成していく。
(まさか)
エマヌエルはその青い瞳を見開いた。
青白いプラズマを纏った球体は、まるでフォトン・シェルそのものだった。
©️神蔵 眞吹2022.




