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学園の門番と、バグったヒロイン

「バベルの関所」を物理的に凍結させ、衛兵たちから「凍った悪魔一行」として指名手配されかかりながらも、俺たちはついに目的地へと辿り着いた。

目の前に広がるのは、白亜の巨塔が幾本もそびえ立ち、空を飛ぶ魔導艇や魔法の箒が交差する、この世界の知の結晶――「魔法学園アイギス」だ。

「……凄いですわ。これが、中央大陸の最高学府。……我が騎士団の詰所とは、魔力の密度が桁違いですわね」

アリアが、メイド服のスカートを翻しながら、圧倒的なスケールの正門を見上げる。門柱には、巨大な水晶が埋め込まれ、そこから放たれる淡い光が、不純な魔力を持つ者を拒絶する「結界」として機能していた。

「ふん、名探偵の私にはわかるわ! あの門を通るには、家柄か、それとも莫大な寄付金が必要よ。……あんたのその、凍りついた『20円』じゃ、門前払い確定ね」

ルルが、冷たく輝く氷の推薦状を指差して、意地悪く笑う。

「……ふっ、甘いな。俺はこの学園の『創造主(設定者)』だ。……といっても、この学園は俺が中学二年生の時に、テスト勉強から逃避するために一晩で書き上げた『Q53:美少女しかいない、俺に都合の良い学園』というボツ案がベースになっている可能性が高い」

「「…………最低ですわ(ね)」」

二人の冷ややかな視線が突き刺さる。

俺は、震える手で「氷の推薦状」を正門の水晶にかざした。

ピキィィィィィィィン!!

「……っ!? な、何事だ!?」

水晶が、推薦状の冷気に反応して一瞬で凍りつき、過負荷オーバーロードで粉々に砕け散った。

警報代わりの爆音が響き渡り、中から武装した学生魔導師たちが一斉に飛び出してくる。

「……不法侵入者か!? いや、この魔圧……まさか、噂の『砂漠の凍結魔』か!」

「……あ、違う。違うんだ! 推薦状を出しただけなんだ! ほら、これを見てくれ!」

俺が必死に氷の封筒を突き出すと、学生たちが怯えて一歩下がる。その時、人混みを割って、一人の少女が悠然と歩み寄ってきた。

長く艶やかな銀髪に、吸い込まれるような紅蓮の瞳。

彼女が歩くたびに、周囲の花々が一瞬で咲き誇り、次の瞬間には枯れ果てる。……命のサイクルがバグっている。

「……騒がしいわね。私の『静寂の読書タイム(設定)』を邪魔するのは、どこの馬鹿かしら?」

彼女が口を開いた瞬間、周囲の空間が微かに歪んだ。

俺は直感した。こいつ……俺と同じ、**「設定の重み」**を背負っている。

「……あんた、名前は?」

「……失礼な男ね。……私はセレス。この学園の生徒会長にして、**『Q1:全属性の魔法が使えるが、くしゃみ一つで半径1kmを消滅させる』**という、呪われた宿命を背負う者よ」

「「…………設定が盛りすぎですわ(ね)!!」」

アリアとルルのツッコミが炸裂する。

だが、俺は確信した。彼女こそが、この学園編における最大の「バグの塊」であり、俺がデバッグすべきメインヒロイン(仮)なのだと。

「……面白いわ、その氷。私の『熱すぎる魔力』を抑えるのに、ちょうど良さそうね。……学長に繋いであげるわ。ただし、私のくしゃみが出る前に、用件を済ませることね」

セレスが、どこか挑発的な笑みを浮かべて俺を見つめる。

俺は、手持ちの20円と、砕け散った校門を見比べ、遠い目をした。

「………俺の学園生活、初日から退学処分になりそうなんだけど……」

夢の魔法学園ライフは、爆発と凍結、そして盛りすぎた設定の美少女と共に、最悪の形で幕を開けた。

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