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ある犬の独白 -雑談より、たまごと周防パトラから-

作者: T-M.ホマレ
掲載日:2026/03/09

そのままでも、割り落としても、混ぜても、火を通しても通さなくてもイケる物。

──万能の食材、「卵」である。


卵は、火を通すタイミングでさまざまな料理(けっか)に変貌する。

殻ごと茹でればありのままを味わえるゆで卵に。

生のままご飯にかければそれだけで日本人のお手軽定番食になる。


火を通す前に卵黄を醤油や出汁、ポン酢などと合わせて混ぜればちょっとした調味料として成立する。

無論、卵白の方はお菓子作りなどに使用できるのも忘れてはいけない。


混ぜずに焼いても、混ぜて炒めても。

混ぜずに煮えた鍋に落としても、他の食材と混ぜてあらゆる方法で火を入れても。

どんな角度からでも食材としてアプローチできるのはとんでもないポテンシャルである。


また、卵を割る際のコンコンと叩く音、パキャっと割る軽い音も耳に心地良い……いや、これは環境によるか。


ともかく、やり方次第でなにものにもなれる存在、そのひとつがこの「卵」という食材だ。




さて一方。

そのままも、落とすのも、混ぜるのも、日を通さないのも通すのも……。

すなわち、ありのまま話す雑談も、眠りに落とすASMRも、音をMIXす(まぜ)るDTMや作曲も、日を通してやるゲーム枠もそれ以外もイケる者。

──万能のVtuber、「周防パトラ」である。


「ちょっとむりやり感あるって? それはそう。まぁ万能なのは合ってるし」


ともかく。

彼女は、その場面によってさまざまな才能や技能を発揮し、さまざまな作品(けっか)に帰結させる。

ありのまま喋れば「面白い雑談配信」に。

「とてもめずらしいある種のげーむ」をやれば周防パトラチャンネル特有の定番配信になる。


音楽系統の能力を混ぜて組み合わせれば、オリジナル曲として成立する。

もちろん、BGMやオケ作りが可能になることも忘れてはいけない。


各種の能力を組み合わせても、あるいは組み合わせなくとも。

誰かに提供しても、あるいは自らコラボしても。

どんな角度からでも配信や活動としてアプローチし、それを達成するのはとんでもないポテンシャルである。


また、当然のこと「ASMRの女王・周防パトラ」としての技術をふるう際に産み出す音は耳に心地よく、数多のイッヌ達を眠りに落とす……これは、彼女が頑張って整えた環境によるものもある。


ともかく、やり方次第でなにものにもなれる存在、そのもうひとつがこの「周防パトラ」というVtuberだ。




しかしながら。

そんな万能な両者でも、それぞれは混ざり合わないのである。

……言わずもがな、料理と料理人としての話である。


否、本人はまずもって確実に「混ざり合える」ことを主張するであろう。

さりとて、混ぜ合わせたからといってちゃんと混ざり合うとは限らない、というのが世の常なのだ。


「……だって、食べてる本人が苦しそうだったり、なんならマイナス方面の感想をポロッと口にしたりするんだもんな。たまに成功するけど」


苦笑をひとつ。

そして、はたと気づいた。

どの料理配信でも、「料理」はともかく「笑顔」は大量に産んでいるではないかと。

少なくとも、毎回すごく笑っている「わんちゃん」はここにひとり、いる。


「ひとり?いや1匹?……まぁリスナーネームなんだからひとりであってるか」


すこし、益体もない思索に頭を持っていかれる。今は深掘りする話ではなかった。


閑話休題。

そう、ある意味でとんでもなく綺麗に混ざり合っている、という見方もできるのだ。


なにせ、「周防パトラの料理配信」はとにかく面白い。

配信としてはこの上なく成功しているコンテンツといえよう。

「嫁」というタイトルに比してサムネイルの火力が高すぎることにはじまり、彼女の料理配信で笑わなかった記憶がない。


「というか、むしろほぼ終始笑顔なんだよなぁ。お笑い方面なのは否めないけども」


そういう点において、あの配信が大好きなイッヌ諸氏は多いと思う。


「けど、たまに危なそうな時があるのはよくない。普通に心配なんだよね」


ただでさえ、包丁でいろんな調理器具を代用したり、ものを壊したりするんだから。

たかが料理と侮るなかれ、調理中の事故事例などいくらでもあるのだ。


「……というか、火と刃物を扱うなら危険を伴うのは当然では?」


そこに油が入るとますます危険だ。

なぜか?

万が一油で燃えた場合、直感に従って水をかけるとよけいに悪化するトラップがあるから、というのがいちばんの理由だと思う。


「たしか、土やら燃えにくい素材の布団やらで空気、というか酸素を遮断するのがいいんだっけか」


……それ専用の消化器もあったはずだが。


配信上では、パトラちゃんが料理の候補として「揚げ物」と口にするとわんちゃん達が必死で阻止しようとする、というのが定例と化している。




ともかく、それほどに「周防パトラ」と「料理」の相性はむずかしい。

「面白い」と「危険」の線引きは難題なのは、テレビや他ジャンルのYouTuberでもよくある話だ。


「いや面白いのは狙ってないよ!?」という声が飛んでくるかもしれない。

それはそう。だけど、おもしろコンテンツであることを否定することはできない。

残念ながら、あるいは喜ぶべきか、アレは「面白いモノ」なのである。



「まぁ、一方で万能になんでもこなす子が、他方ではポンコツを披露するっていうのは可愛いものよな」


そう、大前提としてやはり彼女は万能である。

本人はよく「なんもできない」みたいなことを口にするが、そんなことは絶対にない。

本人に対して言うのもなんだけど、周防パトラを舐めないでもらいたい。


「いろんなことに手を出してると、自分で器用貧乏だと感じることはあるけれど……」


しばし、自分自身の心当たりを考える。

そして彼女と比べてみる。悲しいほどに、その反面で嬉しいことに、結論は確固として変わらない。


「僕はあるいは器用貧乏かもしれないけど、それで言ったらパトラちゃんは器用万能に近いんだよな……」


音響、作詞、作曲、編曲、歌唱、面白いゲーム配信に本の出版。

この辺りは、手を出したことがあったり喉から手が出るほどに望んだことがあるものたちだ。


それに加えてシチュエーションボイスの脚本とプロデュース、エゲツない難易度のギター演奏もするし、数多の曲を作れるということは各楽器の打ちこみなどDTMerとしても熟練ということになる。


もちろんASMRは言わずもがなである。

というか他のやつできる上で本命がASMRなの改めて凄すぎん?


「うーん自分と比べると圧倒的上位互換。悲しくなるほどに素敵やね」


自分はどの分野もその道のタマゴにすらなれたことがない。タマゴだけにね。ガハハ。

……激ウマギャグは置いといて、話を本筋に戻そう。


周防パトラは料理を除いて万能だ。料理以外ならなんでもできる、というのはお約束的な部分も含めてだいたいの「わんちゃん」にとっての共通認識なんじゃないかと思う。




本人も言っていた。

周防パトラは「母親であり妹であり恋人であり友人である」と。


「……なんだ、やっぱり万能じゃないか」


万能の方向性が違うって?

そうかもしれない。だが、逆に考えてみるとどうだろう。

つまり、万能の方向性を合わせる。技能面での文脈を存在としての文脈に組み込んでみる。


つまり。


音楽家であり、歌手であり、ゲーマーであり、話し上手であり、作家であり、母親であり、妹であり、恋人であり、友人である。


……と。


「ごめんやっぱ変だわ」


残念、試みは失敗である。

いちばん最初にタマゴの話を例に挙げたが、これはタマゴの料理への万能性と摂取できる栄養素における万能性を同じ項目でくくるようなものだった。


たとえば、


ゆで卵になり、目玉焼きになり、炒り卵になり、かき玉汁になり、メレンゲになり、タンパク質になり、ビタミンA・B・Dになり、鉄分になり、脂質になる。


という具合になる。

「であり」を「にあり」にしてる分すこし違和感は軽減してはいるが……。


「ゆで卵になるし目玉焼きになるしタンパク質になる。って言い方はやっぱ変だよね。突然の栄養素」


そこからさらに思考を進めてみる。

周防パトラはその発揮する性質によって音楽家や歌い手やゲーマーになれるし、周防パトラの中には母や姉や恋人の要素を含んでいる。

タマゴはその性質によっていろんな料理(けっか)として完成するし、タマゴの中にはいろんな栄養素を含む。


「まぁ、これなら対比として問題ないか」


実際のところ、タマゴのいろんな料理に使える点に救われた人は多いだろうし、一方でタマゴの栄養素に日夜救われている人は多数いるだろう。


そして「わんちゃん」は──僕は、「周防パトラ」に救われたし、今なお救われている。




「そのとき」がいつだったかはもはや覚えていない。

とにかく眠れず、とにかく寂しく、とにかく安心できず……少なくともそのとき僕は、色々と病んでいた。


眠るためにBGMを探していたし、寂しさや不安を紛らわせるために「誰かの声」を求めていた。

やがてASMRというものを知り、さまざまなASMRを渡り歩いていた。

すると、自動的にYouTubeからASMRをおすすめされるようになる。


「パトラちゃん自身もよくハムスターの動画がおすすめに〜とかで話題に出すよね」


そうして、いつのまにかよく視聴するASMRに「周防パトラ」が入ることになる。

その時はまだ、チャンネル登録もしていなければ「周防パトラ」という名前すら認識していたか怪しかったけれど。


いつのまにか。本当にいつのまにか。

気が付いたときには、僕はすでに「周防パトラ」と出会っていた。


それに気づいたとき、僕は「周防パトラ」のチャンネルを知った。

同時に、Vtuberのことも知った。

それから、いろんなものを見て。大量のアーカイブも見て。


ハニストを知った。

かつて所属していた事務所を知った。

独立勢であることを知った。

ぶいちゅっばの歌を知った。

それを皮切りに、彼女の楽曲を知った。

歴戦のゲーマーであることを知った。

いつも長時間配信していることを知った。


特にOPで使用されていたMVの「生きててえらい」という言葉は、病身と病心にこの上なく効いた。


事務所のことを知ったのはアーカイブだったかコラボの切り抜きだったか。

いずれにせよ、後から見たものであるため、僕がパトラちゃんと出会っていたのと彼女が独立したの、どちらが先だったのかは判然としない。


名前すら覚えずにASMRを聴いてる期間が長かった。

それから、アーカイブや切り抜きをひたすら漁っていた期間もそれ相応に長かった。


「もっと早くに、と思うこともあるけど、こればっかりはしょうがないよね」


そもそも僕はそれまで、「YouTubeの配信」をリアルタイムで見たこともなければ、当然チャット欄に書き込んだこともなかったのだ。

それどころか、動画やアーカイブにコメントを残すことすら、したことがなかった。




そして、そのときが訪れた。

意を決して、今まさに配信しているところを見に行く……いわゆる「リアタイ」しに行ったのである。


生まれて初めて、Vtuberの生配信を見た。

それから初めてチャットに参加するようになった。

初めてYouTubeにコメントを残した。

そして初めてスーパーチャットなるものを送った。


今なお、「周防パトラチャンネル」以外でチャットやコメントをすることはほとんどない。

少ない例外がパトラちゃんの他チャンネルでのコラボ時か、友人の配信に遊びに行く時くらいだ。


それほどまでに、「周防パトラ」は僕の心に刺さり、そして僕は救われた。

冗談抜きに命を救われたといっていい。

それこそタマゴの利便性や栄養価なんぞ目じゃないくらい、人生に必須の存在になった。


今でも、ASMRに癒され、ゲーム配信で笑って癒され、いろんな配信においてその可愛さに癒される。

「心の栄養素」とはよく言ったものだ。

それはときに、どんな栄養素よりも大切なものになる。


「だって実際に僕は救われたし……ごはんを食べる気力がなければ、どんな栄養素だって摂れないもんね」


そう、僕は気づいた時にはすでに、パトラちゃんによって救われつつあった。

そしてよりはっきりと認識したとき、僕はもっと救われた。

それまでより眠れるようになり、それまでより笑えるようになり、それまでより生きられるようになった。


ときにどんな栄養素だって、心の栄養に敵わない場合がある。


僕にとってパトラちゃんとの出会いは、まさにその「ときと場合」であった。


……僕は「見るからには最初から最後までちゃんとじゃないと」と思う傾向がある。

ゆえに、大長編的なゲームの配信には追いつけないことが多い。


それでも、周防パトラチャンネルが動き続ける限り、僕はそれを見に行くだろう。

ひとつに、勝手ながら救われた恩があるから。

ひとつに、配信が面白いから。

そしてなにより、パトラちゃんが好きだから。


僕自身、未だに完全なる再起は果たせていない。

それでも、状況は確実に好転している。

そのための「こころの栄養」をくれたあなたを。

ずうっと応援すると決めている「わんちゃん」が一匹(ひとり)、ここにいるのです。


「……フットワーク重いし資金もないから東京遠征とかはできないんだけど、ね」


せめてこころは近くありたいものだ、と。

ひとりの(リスナー)はここに、独白するのであった──。

本作は、2026/03/08に配信された、『【雑談】萌え声の酔っ払い【周防パトラ】 』にて出てた話題に触発されて書いたものです。


「卵だけで作文を原稿用紙3枚書いた」とか「長文のファンレター」とか「ノートレベルで書くならなろうとかに上げて欲しいけどね」みたいな話題をしているところで急に執筆欲が湧き、そのまま書き上げた次第です。……ノートには届かない分量だけれども。


4〜5時間でザザッと突貫して仕上げたので微妙に無理矢理なところもありますが、多めに見ていただければ幸いです。



おまけ:厨二ファンタジーキャラ「周防パトラ」のステータスとスキル設定(妄想)

本人が好きそうなので(私も好き)。

そしてなんか思いついちゃったので。

いつかこの設定を再利用する日がくる……可能性はゼロではない。かもしれない。書けたら書くわ!


"赤き悪魔の女王"周防パトラ 悪魔/炎/赤

火力:A 耐性:B 体力:S 知力:B+ 技術:SS- 奥義:EX

※備考:知力はジャンルによって倍加補正、技術は料理時のみ大幅な下降補正がかかる。


パッシブ:みんな〜〜

接敵時、味方に≪耐久バフ≫か≪火力バフ≫、敵に≪耐久デバフ≫か≪火力デバフ≫のいずれかをそれぞれ付与する。


アクティブ1:女王のASMR

敵に確率で≪睡眠≫を付与し、味方全体の体力と精神異常を回復する。


アクティブ2:料理は火力(パワー)!!

炎をまとったフライパンを敵に叩きつける。その後、敵を巻き込む広範囲爆炎攻撃が発生する。


奥義:悪魔の女王喫茶店(ハニーストラップ)

ランク:EX

緑、青、紫、白と悪魔の女王4人の影を召喚し、自身とともに順番に攻撃する。

緑:≪筋力バフ≫を五重獲得したのち、ダンベル・バーベル・重機など重量物を召喚し、ふたりで投げつける。

青:一瞬で建物を建築し、そこからふたりで銃撃を行う。建築と装備の組み合わせにより、全レンジ対応の攻撃を行える。

紫:巨大な梅酒瓶を召喚し、倒す。零れた梅酒の津波が敵を襲い攻撃。その後、酒気により敵味方全体に≪混乱≫を付与する。

白:2人でギターをかき鳴らし音波攻撃を行う。最終段では、同時に大量の蒼い蝶が現れ敵に向かっていく。この攻撃は防壁を貫通する。



この手の妄想設定作成はもう20年くらい、自作を中心にいろんなところでやってるので、「パトラちゃんで小説を書く」「パトラちゃんは厨二的なものがお好き」となればこっちも抑えておかねばというもの。

……しかし、作品化するかはちょっと慎重に考えるのでいったんここで、という次第。


それこそ拙作「ChronuKris-クロノクリス-」でも似たような設定をやってますが、アレくらい膨らんでしまったらそれはもうたいへんなことになりますので、ね……。

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