決断
部屋は静かだった。
窓の外から朝日が差し込んでいた。
どこか、落ち着かなかった。
連は玄関のほうを見た。
あの後確認したが鍵は、確かに掛かっていた。
自分で閉めた記憶もある。
ノクサが出ていくとき、何かをした様子もなかった。
「……」
胸の奥がざわつく。
ノクサは、鍵を気にしていなかった。
彼女は入ろうと思えばいつでも入れるのだった。
連は視線を落とし、ブレスレットを見る。
白と黒が交互に連なった、簡素なもの。
それなのに、不思議と美しかった。
「……お守り、か」
握りしめると、じゃらと石と石が擦りあったような音をたてた。
ノクサは「一撃を入れる」と言っていた。
具体的に何をするのか、連には分からなかった。想像もつかなかった。
目を閉じるとノクサの声が蘇った。
「賢い選択を期待しているよ」
その言葉は、期待しているようで、同時に逃げ道を塞いでいたように感じた。
「異世界、か」
現実味のない言葉だった。
ノクサがいなければ、異世界にあるなんてことを考えることもなかっただろう。
ノクサという存在は、疑いようのない現実だった。
ドアの向こうに現れ、部屋の中にも現れた。
今も、どこかで「暇を潰している」のだろう。
選択は、もうこれ以上は先延ばしにはできない。
どちらを選んでも、もう二度と日常には戻れない気もしていた。
それに連が断ればノクサは「一撃を入れる」といっていた。
時計の針は、少しずつ確かに進んでいた。
夜九時。
静かな空間にチャイムが響いた。
「やあ」
やはりそこには彼女がいた。
「今日は自分で入れてくれるかい?」
「無理やり入るのも楽じゃないんだ。」
連は無言で鍵を開けた。
「鍵の音が、やけに大きく感じた。」
ノクサは心底楽しそう笑っていた。
「それは同意と取っていいのかい?」
「……ああ」




