破壊
ノクサが瓦礫の上に立っていた。
足元には騎士が転がっていた。
アナーシャが低く言う。
「遺物が、応答している。」
ノクサは剣を手にしていた。
その立ち姿は以前から持っていたかのようだった。
「目的達成、と」
ノクサの足元には砕けた指輪と杖が落ちていた。
「剣はどうやって壊そうかな……」
ノクサの呟きは風に隠れた。
剣が妖しく輝いた。
ノクサが忌々しそうに剣を睨んだ。
「本気で壊すから、邪魔しないで。」
ノクサが抑揚のない声で言った。
剣を地面に突き刺した。
「正気か?」
アナーシャを無視してノクサが杖を取り出し構えた。
空気が揺れた。
剣の周りの地面が沈んだ。
「やめろ……」
アナーシャが力なく呟いた。
周りの地面が抉れ瓦礫が中心に引き寄せられていた。
剣の下が黒くなる。
連の隣でユーノが息を呑んだ。
「ぐっ……」
アナーシャが苦しそうな声をこぼした。
音が消えた。
突如パキン、という澄んだ音があたりに響いた。
刃に亀裂が走り、砕けた。
剣が砕けると同時に黒も消えた。
「終わった。」
そうノクサが呟いた瞬間アナーシャが倒れた。
「アナーシャ!」
駆け寄った連のブレスレットが光ったのは誰も気づかなかった。
「今日は帰るよ。」
倒れたアナーシャを一瞥し、ノクサは帰っていった。
「アナーシャに何したの?」
ユーノがノクサに聞いた。
「私は何もしてないよ。」
「『歴史』が勝手に守っただけ。」
「私は帰るよ、次はもうちょっと強くなっといてね。」
そう言い残しノクサは去っていった。
連とユーノがアナーシャを抱き起こしていると後ろから声をかけられた。
「さっきまで騒いでたのはあなたたち?」
そう背後から問いかけられた。
「誰?」
ユーノが身をこわばらせて言った。
「私は先生のお使いで来たの。」
「付いてきて。」
女は名乗らなかった。
「先生って誰だよ?」
「助けたくないの?」
アナーシャを指さして言った。
「連、今はついていこう?」
「……分かった。」
意識のないアナーシャを見て頷いた。
「ゲート展開。」
女は小さな機械を起動させた。
空間が歪み扉が現れた。
「付いてきて。」
女は振り返って言った。
扉の先は書庫のような空間が広がっていた。
「先生、連れてきたよ。」
女はチェックのインバネスコートにディアストーカーハットの人物の背中に声をかけた。
「探偵……?」
「ご苦労さま。」
振り返った人物は、水色の瞳をしていた。
「はじめまして、私は『文学』のナラティア。」
微笑を浮かべ、そう名乗った。
「『文学』ってことは十書の?」
ユーノが問い掛けた。
「先生に向かって失礼ですよ。」
「別に気にしてないから大丈夫だよ。」
「確かに私は十書の『文学』だよ。」
「そこにいるのは『歴史』かい?」
「そうだ。」
「だいぶ無理をしたんだね。」
アナーシャを見ながら言った。
「目を覚ますのか?」
「覚ますけどしばらく先だと思うよ。」
「目は覚ますんだよな?」
「もちろん。」
ナラティアは頷いた。
「ここじゃ何だし、移動しようか。」
部屋の外も本棚が広がっていた。
「うわぁ……」
ユーノが感嘆したような声を上げた。
「ここは王都の禁書庫だよ。」
「さて、この部屋だ。」
ナラティアが開けたドアの先には少年がいた。
「何か用か、ナラティア?」
部屋中に本と紙の束が積み上がっていた。
その中心で少年が本を広げていた。
「お客さんだよ、リンガリア。」
「そうか。」
「おれは『言語』のリンガリア。よろしくな。」
本を閉じ名乗った。




