9話 土産の悩み、尾行、新しい仲間(?)
「ふむ、どうしましょうか」
「なにかありましたか?」
「なあに、レティ?」
魔の森への道中。
二泊の泊まりがけのためにそこそこの荷物をもったガストンと、小さめのリュックを背負ったシエラと共に歩いているのだが。
「伯爵の奥様とお嬢様に差し上げるお土産、候補はいくつかあるのだけど、どれが最適か考えてました」
「なるほど…… 俺は女性にプレゼントなんてした事ありませんから、お役に立てそうにないですね……」
「甘いものはどうかしら? 深層なら、珍しい果物とかもあるんでしょう?」
「果物。悪くはないですが、もう少しインパクトを持たせたいですね……ティタノベアの脂肪から精製する美容オイルなんてどうでしょう?あの薬師にサクッとつくらせましょう。 ……ああ、それと」
ガストンは気付いているが、同じ冒険者だからと警戒していないようだが。
後ろから、悪意をもった人間が三人、つけてきている。
「悪意をもって、街からつけてきているパーティがあります。そちらもどう利用すべきか考えてました」
「殺す? 試したい魔法があるんだけど」
「し、シエラ、まずは話し合いで……」
殺すのはもったいない。人間は雑草のようにポッと生えてきたりはしないのだから。
それに、三流とはいえ冒険者が三人。常人よりは強いその力を効率的に活用したいではないか。
「絡んでくるまで放置でいいでしょう。二人は手を出さないように。傷をつけると手間が増えますから」
「わかったわ、レティ」
「……良いのか悪いのか。まあ、悪いことをする方が悪いよな」
それから暫く。
魔の森の浅層を進み、中層に差し掛かるあたり。すこしだけ開けた場所にでた。
いままでの冒険者たちが、休息のために拓いた広場だ。
焚き火の跡がいくつかあるのがわかる。
……そこでようやく出てきた。
随分と小物臭のする顔と態度と歩き方だ。自信があると思い込んでるクセに努力もせず、自分がこの程度で燻っているのは貴族やギルドマスターなどの管理者のせいだと、半ば本気で思っている。私じゃなくても見透かせるだろう、こんなもの。
「おうおう、お前さん方。新人の低ランク共が、ギルドマスターと随分と親しいようで。特別扱いされてんだろうな…… 気に食わねぇんだよ。だが!俺は慈悲深い。ここで痛い目みるか、ギルマスからぶっこぬいた美味い話を俺らに寄越すか。選ばせてやろう」
……はあ。こいつら、冒険者ランクはそこそこだが、本当に頭は弱いようだ。弄りやすくていいけども。
ギルマスは貴族。ソレと懇意にしてる新人。
普通なら、貴族の子供のお遊びか、隠れた実力者、なんかを想像するはずだ。
貴族の子供だとすれば、触るのは危うすぎる。なにかあれば、一族郎党が国にいられなくなるのが一番優しい末路だ。
今回は、こいつらも運が良かった。私は元王族だが、籍は無いし。
隠れた実力者の方だが、私はとても慈悲深い。
「よし、決めました。ちょうど帰りの荷物の心配もしていたところです。ポーターとして改造…… いや、雇いましょうか」
「改造って言っちゃいましたねレティさん」
「あなたの為でもありますからね、ガストン。荷物を持ちながら、火に焼かれたくないでしょう」
「いやいや、荷物を持っていなくても火には焼かれたくないですけども」
ふふ、軽口を叩けるほどに打ち解けられている。仲間たちと仲良くできて、私は嬉しいよ。
「なにをごちゃごちゃ言ってんだボケ! ……気が変わった。ボロボロに叩き潰して、身包み引っぺがしてココに置いていってやる!」
と、ようやく雑魚共が武器を抜いた。
シエラがブチギレる前に…… パチン、と指を鳴らす。
「な、あ、が……ッ!!」
雑魚共は急に転倒した。
何故か? 私が雑魚共の筋肉を硬直させたからだ。バカの体は操りやすくて楽でいい。
「おまえ、なにをした!! ぶっ殺してやる!!」
ああ、声も態度もまだ大きいか。
横隔膜を止めて…… ふふ、静かになった。
「私としては、このままあなた方をここに放置して進んでもいいんですよ。わかりますよね。……だけど、私は真に慈悲深い。私を受け入れるのであれば、全てを赦し、私のために働ける体でいさせてあげましょう。大丈夫。一日三食付き、街にいる間は寝床もありますし、トイレ休憩も認めます。衣服も支給しますし、病気や怪我も絶対にさせません。そう、受け入れるだけでいいんですよ。……いい子ですね、これからは私たちの荷物持ちとして、幸せに生きましょう」
「はい…… レティさま……」
「ありがとうございます……レティさま……」
「お荷物……お持ちします……」
精神を完全に掌握したので、横隔膜と筋肉の硬化をといてあげる。廃人化させず、長期間有効な洗脳をするには、しっかりと精神を掻き回さなければいけない。死の恐怖からか、簡単に上手くいって良かった。
よし、これで荷物が多くなるのも問題無くなった。
肉体強制健全化と筋力増大を付与して……と。
「新しい仲間もできて、これからの旅も楽しくなりそうですね。よろしくお願いしますね、イチ、ニ、サン」
「はい……レティさま……」
……ガストンもシエラも、なんだか凄く変な顔をしている。
なんだ……?
「……レティ、それってこいつらの名前?」
「そうですが?」
なにか、名前に問題でもあっただろうか。
「レティの言うことが絶対正しいのはわかってるんだけど、さすがにセンスというか、なんというか……」
「シエラに同意です。さすがに、それは無いっていうかですね……」
狂信的なハズのシエラと、未だにビビッて反抗なんかしないガストンからの苦言……。
あれ、もしかして、私、ネーミングセンス、本当に、本当に無い……?
ここまで読んで頂き有難うございます。
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