36話 鍛冶師、鉄をつくる魔法。
「ガストンじゃねぇか! おうおう、美人さんたちも…… なんだ?パーティメンバーか。 お前に限ってコレ、じゃねぇもんな」
「コレっていうな、コレって。違ぇよ」
ガストンほどでないがガタイのいい男が、小指を突き立ててニヤついている。
人間属性でスキャンしたところ…… 元冒険者か。片足に大きな怪我の跡がある。
「はじめまして。ガストンのパーティメンバーのレティです。今日は鉄の加工の見学をさせていただきに来ました。よろしくお願いしますね」
「わたしはシエラです! よろしくお願いします!」
「おうおう、二人とも別嬪さんだねぇ。俺はハルト。よろしく頼む。ガストンからいい子達だって聞いてるし、好きなだけ見てってくれ!」
ガストンの知り合いの鍛冶師の店、「ハルト鍛冶店」にやってきた。
ここでは、新人冒険者向けの安価で丈夫な剣、ナイフ、家庭用の鍋やカトラリーなどを製作、販売しているという。
切れ味は微妙だが、とにかく丈夫。雑に扱っても壊れないので、緊張や興奮で武器の扱いが雑になる初心者にオススメらしい。
「さっそくだが、今日は丁度注文がいくつか入っててな。鉄鍋の製作を見せられそうだ。……暑いけど大丈夫か?」
「ええ、シエラも私も問題ありませんよ」
「しんどくなったらすぐに出るんだぞ? じゃ、入ってきてくれ」
ハルトに連れられ、店の奥へ向かう。
すでに窯に火は入っていて、数人が槌を打っている。結構な熱気が襲い来る。
シエラの水と風の混合魔法、『アクアミスト』で私たちは熱から守られているが…… それでもたしかに暑い。
ハルトの弟子が数名、金槌を振るっている。
真剣だ。これが鍛冶師か……。
「鉄鍋の材質は…… まあさすがにわかるよな、鉄だ。だが鉄だけじゃあなくて、炭や…… 他の金属も混ぜ込んだりする。剣を作る時の配合は企業秘密だが、鉄鍋のは見て覚えれるなら覚えていってもいいぞ」
炭素鋼に、合金か。
思ったよりもこの世界も進んでいるのか? いや、こんなものなのか……? 表に出てこないだけで、意外に局所的な文明は進んでいるのかもしれない。
しまったな、こういうのも勉強しておくべきだった。面白い。
「鉄以外を混ぜるとどうなるの?」
「そうだな、説明するより見せたほうが早いか……」
ハルトが、数人の弟子の間を歩く。
シエラを先頭に、私達もついていく。
「コイツが打ってるコレ。ナイフだな。音をよく聞いてくれ…… で、次はこっち。こっちは鍋だ。これも音を聞いてみな。……違うだろ? 混ぜ物次第で、粘りと密度が変わってくるんだ」
「確かに全然違うな……」
「見た目は同じなのに、金槌の反動が違う……」
さすが二人。私には……わからなくもないかな?くらいの違いだ。
「鉄は硬いほうがいい、ってわけでもなくてな。粘り気、言ってしまえば柔らかさも重要なんだよ。剣なんかだと、硬すぎると太刀筋が悪けりゃパキッと割れちまう。割れない程度の粘りと、ちゃんと切れる硬さ、両方が大事なんだぜ」
前世の刀鍛冶の話で聞いた事があるな。
玉鋼がどれほど素晴らしいのかの話だったか。
それから、鉄鍋の製作を見せてもらう。
溶けた鉄を冷やしながら、金槌で形を整えていく。ただの溶けた鉄から鍋の形になっていく様は、とても興味深かった。
「うーん、イメージ湧いてきた、かも……? アイアンゴーレムもいっぱい倒したし、土魔法で鉄もつくれそうな……」
「試してみたらどうです?」
「ここで試してもいいのかしら? 魔力の巡りが邪魔になったり……」
シエラがハルトを窺い、ハルトはニカッと笑って答える。
「シエラちゃんだっけ? ここは魔法的な処理はしてないから、汚さないなら魔法使ってもいいよ。ていうか俺も見てみたいな。鉄を出せるの?」
「出せ、そうな…… 要は、砂や土なんてイメージせず、このドロドロの粘土みたいな鉄を出して……冷やし固めて…… あれ? あ!? 魔力消費が高すぎないかしら!?」
シエラが慌ててる。なんだ、暴走……は無いだろうけど。どうしたのだ。
「シエラ、大丈夫ですか?」
「レティ、ちょっと待ってね…… 土魔法……火魔法……水魔法…… よし。『アイアンバレット』! できた!!」
シエラの手のひらに、鉄の玉が現れ、それが鋭く変形した。
とても殺傷力がありそうだ。
「すっごい魔力消費! これは慣れるまで大変そうね……」
「すげーな嬢ちゃん…… これを高速で撃ちだせば、アイアンゴーレムにも負けねぇんじゃねぇかな」
土魔法だけではなく、火魔法と水魔法も必要なようだ。
しかしこれで、また更に火力を高めることが出来ただろう。
……雷魔法もあわせてレールガンとか、できないのかな。
今度シエラに相談しよう。ロマンは大事だ。
ここまで読んで頂き有難うございます。
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