30話 休日、レティの悩み。
「うーん、なにをしましょうか」
今日一日は、全員休みの日。
ガストンは料理教室に行った。そんなものあったのか、この街。
今より料理が上手くなるのは、想像できないな。
シエラは日が昇る前からポーターズと一緒に近場の川に釣りに行った。帰りに露店巡りをしてアクセサリーを眺める予定らしい。
釣りは私の趣味だが、シエラに教えると「精神鍛錬にもいいかも」と言ってやってみたいと言っていたのだ。
ポーターズは護衛と荷物持ち。精神の支配は安定しているのだが、やはりというか、シエラを一番気にかけている様子がみられる。シエラは見た目が幼いので、庇護しなければいけないという深層心理があるのだろう。
で、私、レティは。
休みと言われると、何をすればいいのか。
前世では病弱といえども、本を読む、美味しいものを探しに行く、長風呂をする、専門店に鉱物を探しに行く、などなど。やる事はあったはずだが。
この世界では。本屋は無い。美味しいものはガストンに任せればいい。温泉はあっても風呂屋はない。鉱物探しは明日からの鉱山ダンジョンで出来るとして。
「……なにをしましょう」
少し、焦りを感じている。
休みの日と決めたのだから、目的のための行動ではなく、自分のやりたいことをやりたいのだが……
「やりたいこと。目的以外の、やりたいこと……」
釣りに合流してもいい、な。なんとなく全員バラバラで行動する物だと思っていたが、休みの日というのは同じ趣味を持った者と共に行動したっていいのだ。
……前世では全て一人だったから、思考が偏ってしまっているのだろう。
というわけで、シエラに合流しよう。
釣竿や餌は、ポーターズが余剰分を持っているはず。もし無くても、河原で石拾いでもしよう。
ドベルグから鉱山側に半時間ほどの所にある、小川。
こちら側は魔の森側と違い、魔物がとても少ない。
鉱山ダンジョンのおかげで地面の魔力も少ないらしく、水もあるので安全に畜産ができるという。
ドベルギウス伯爵領が、木材、石材、金属、そして食肉を輸出し、バルトフェルト伯爵領が、穀物、野菜、果物、そして武器防具を輸出する。ふたつの領は、昔からそうやって相互を補って強くなってきたという。
アメジストとゼノス様の関係も、さもありなんと言うところだろう。
「シエラ、来ちゃいました」
「レティ!! わあ、レティだ!来てくれたのね!」
丁度魚が釣れたところだったようだ。
ポーターズが魚を針から外し、絞めて血抜きをして、氷の詰まった籠に入れる。
言ったことをちゃんと出来ている。シエラがポーターズに教えたのだろう。
「邪魔してごめんなさいね? 釣果はどうかしら?」
「そんな!ちょうど寂しいなって思ってたところなの。レティが来てくれてとても嬉しいわ! ……魚は、どうなのかしら?はじめてだから基準がわからないわ」
たしかに、はじめてだったか。
ポーターズが籠をもってきて見せてくれる。
……ううん、これは宿の主人にもお裾分けしないといけなくなるか? 冷凍で何日保つか次第だね。
「小さいのをリリースしてもこれだけ釣れるんですか。釣れやすい川なのか、シエラの腕がいいのか」
「多いのかしら? 釣りすぎたら、街のお友達にも分けてあげていい?」
シエラには、友達が多い。いつの間にと思うが、子供はたった数時間、なんなら数分で友達をつくってくるものらしい。
しかし、友達全員に私の素晴らしさを説いているというのは、どうなのだろう。今のところ負の感情はシエラに向けられていないが。むしろ私が聖人のように思われているが。……まあ、害はないのでいいだろう。
「ガストンと相談しながら、残りは自由にしていいですよ。お友達も喜ぶでしょう」
「やった! ありがと、レティ。 そうだ、せっかく来てくれたんだし、一緒に釣るわよね?」
「もちろん、そのつもりで来ましたよ?」
「じゃあ、勝負しましょ! 沢山釣れた方の勝ち! 負けた方は勝った方に、帰りに露店でアクセサリーを買うこと!」
「ふふ、いいですね。私に似合うアクセサリーを今のうちに考えておくことです」
「そのセリフ、そのまま返すわよ! ふふ、楽しくなってきたわね!」
対決、か。そういうのは、前世でも今世でも、やったことなかったな。とてもワクワクしている。
たまには、こういうのも悪くない……。
ちなみに、勝負は五十対ゼロで、惨敗。
シエラには、赤い宝石が綺麗なブレスレットを買ってあげた。
ここまで読んで頂き有難うございます。
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