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【人間属性】の追放王女と改造された仲間たち 〜バイタルもメンタルも”完璧”に調整します〜  作者: クロン・ベリル


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3話 ゴブリン退治、爆音、焼き切れる魔力回路。

本日3話目の投稿です。前話をお読みになられていない方は、前話からお読みいただけますようお願いします。


「ガストン、知覚強化と肉体強制健全化には慣れましたか? 今日から追加で、筋力リミッター小解放と闘争心増大をかけますね」


「え、あ、はい……!」



あれから何度か、ドベルグ近くの魔の森のゴブリン退治の依頼を受け、今日も今日とてゴブリン退治。

まさにあの害虫のようにいくらでも湧き出るゴブリンは、初心者冒険者の飯の種であり、その体に宿る魔石は人間の世界のあらゆるところに活用されている。


魔石の話はさておき、私の目的はガストンの『最適化』。

人間性を完全に剥奪すれば、今すぐにでも完璧なタンクをつくれるのだけど、私だって悪魔ではない。

ちゃんとした人間のまま、ゆっくり、しかし最速で、完璧なタンクにしていく計画だ。


しかし、不満はある。

今のところ出会った魔物は、討伐対象のウィークゴブリン、それとストーンラビットが数体。

……弱いのだ。それこそ、ガストンなら改造前でもなんの問題もなく無双できるほどに。

これでは、ガストン自身に今の肉体の耐久性を認識させるのは難しい。

なにか、強い魔物が現れるか、命の危険のある物理的な障害があればいいのだけど……



「……! レティさん、危ない!!」



なにを、と。そういう前に、地面がとても大きく揺れた。

地震か? そう思っていると、強く熱い風が吹き、急に空が暗くなった。

見上げると。おお、とても大きな岩…… これは、避けられないな。



「逃げます、レティさん、掴まって!!」


「丁度いいです。ガストン、私に被さって。動かないこと。……『強制移動』『強制不動』」



これを受ければ、普通の人間は死ぬようなことでも自分は死なないんだ、と真にわかってもらえるはず。

無理やり私に覆い被らせたガストンの筋肉をいじって動けなくして、大岩の落下をまつ。


ドゴン…… と、再度大きく地面を揺らし、大岩は粉砕。

周りの木々はへし折れ、隠れていたストーンラビットやゴブリンもぺしゃんこに。

普通なら我々も肉塊になるだろうが、ここには私がいる。

なのでガストンは当然無傷。……こういうこともあろうかと服の予備を持ってきておいて良かった。



「ガストン、動いていいですよ。……おや、あの鼓動が犯人ですかね?」



震えて倒れ込むガストンの前に服を置いて放置し、異変の後で急に弱まった鼓動に向かって歩く。

ホルモンと脳を弄る、強いメンタル平常化はあまり使わない方がいい。耐えられる恐怖は自前で耐えた方が健全だ。


さて、そんなことより。

異変の発生源、鼓動の弱まった一人の人間。

それは、この世界では珍しい、黒髪の小柄な少女だった。

全身の血管が浮き出て、蒸気すら発生している。

診たところ、魔力回路が暴走して破損、焼き切れて死にかけているようだ。

このままでは死ぬが…… 勿体ない。

まず肉体を健全化。そして魔力回路の修復、強靭化。

脳の電気回路も熱暴走で危ないから、精密冷却もパッシブで埋め込んで…… よし。完成。

これでこの子は、魔法が暴走する事も、それによって焼ききれて死ぬこともないだろう。



「レティさん、この子は……」



思ったより早く復帰したガストンが、少女の心配をする。



「大丈夫です、無事ですよ。私が直し……治しましたから」


「ああ、この子も…… いや、ひとまず、命は無事でよかった……」



なんだ、その含みのある言い方は……。



「う、うぅ……?」



おっと、少女が目を覚ましそうだ。

目を薄く開け、眩しそうに何度か瞬きをする。おお、黒目。これもまた珍しい。



「大丈夫ですか? 話せますか?」



優しく声をかける。

ようやく意識がハッキリしたようで、私を真っ直ぐに捉える。



「あな、たは…… いや、そんなことより……!! わたし、魔力が、暴走して……頭が、あれ、熱く、目も、あれ、あれ……?」


「あら、まだなにか異常がありましたか? もう少し精密に診てみましょうか」


「あなた、あなたが、わたしを、たすけて……?」


「? ええ、そうですけど……」



なにか不都合でもあったかな?

そう思ったけど、少女の感情は不満や苦痛ではない。

それどころか…… ああ、良かった。これなら不都合なく使えそうだ。



「生まれてから、ずっと、ずっと苦しかった…… 頭が痛くて、体が熱くて、目がぼやけて、ずっと、これが普通だと、魔法が使えるわたしの、代償だと、ずっと…………!! 全部、全部無くなった!! あは、あはは! 熱くない!痛くない!良く見える!体が、自由に動かせる!笑っても、胸が痛くならない!! 人の顔が、はっきり見える! はじめて……はじめて見た、あはは、こんなに綺麗なのね、木って。空って。……あなたのおかげで、わたし、やっと、やっと人になれた!! あなたが、わたしを、産みなおしてくれたの!! 」



うんうん、これは『狂信』というものだ。

これほどに都合のいい感情はない。非常に助かる。情けは人の為ならず、というやつだね。慈愛に満ちた私に相応しい展開だ。

……ガストン、その目はなに。冷憫、同情、恐怖。ふふ、仲良くしてあげてくれそうで良かった。



「わたしの名前はシエラ。多属性攻撃魔法使いです。……あなたに全てを! わたしの全てを捧げます!! 私の、真の創造主様!!」


「ふふ、ありがとう、シエラ。私はレティ。冒険者よ。これからよろしくね」


「レティ様……!!」



ちょっと顔がとろとろで怖いけど、まあ、少しだけ感情を平坦化させてあげたら丁度いいかな。


さてさて、これで私のパーティは最適化された。

前衛タンクのガストン、後衛攻撃魔法のシエラ、そしてそれらをコントロールする私、レティ。

これなら、今までより早く高難度の依頼にも行けるようになるだろうし、高効率で回していけるだろう。

パーティの名前は……『最適解』とかどうだろうか? うん、かっこよくて私に相応しいと思う。

ふふ、明日からの冒険も楽しみだなぁ。





「あ、えっと、俺はガストンです。俺もレティさんに助けられたんだ。よろしくね」


「……レティ"様"、じゃないの?」


「シエラ、私のことはレティと呼びなさい」


「わかりました、レティ」


「敬語も無しで」


「わかったわ、レティ。これからよろしくね」


「……あ、えと、俺は……?」


「ガストンも、よろしく」


「ほっ…… よかった、無視されてない……」


「ふふ、仲良くするように」


「もちろんよ、レティ」


「…………なんか、違和感があるような……?」

ここまで読んで頂き有難うございます。

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