26話 新たな命、新しい杖探し。
翌日朝、伯爵様達に見送られ街へ戻る。
どうやら昨晩は、銀月茸も美容オイルも、絶大な効果を発揮したらしい。
「ガストン、寝れませんでしたか?」
「……ええ。いえ、寝なくても問題ありませんけど」
「ドベルグに戻ったら、丸一日の休暇を二人に与えましょうか。寝るのも食べるのも遊ぶのも自由な日が、たまにあってもいいですよね」
「助かります……」
「レティ、私もおやすみあるの?」
「もちろんですよ、シエラ」
「うーん、甘いもの探しか…… アクセサリーも見に行きたいなぁ」
周りを気にしないシエラはさておき、知覚が常人の十倍程度のガストンでは、昨晩は少し寝るには難しい環境だったようだ。まあ、仕方ない。
ゼノス様とシンシア様は、近々男児を産むだろう。……確定ではないが、そうなる可能性は高めておいた。
少なくとも、一年以内にナディアは姉になる。
シンシア様とゼノス様には、健康体でい続けられるように少しだけ能力を使った。
温泉のあった村でした事と同じだ。……酒に酔えなくはしていないが。
しかしまさか、ひとつの旅路でふたつも新たな命を観測するとは。
「母になるとは、どういうものなのでしょう」
「……俺の母さんは、大変そうだったけど。でも、毎日笑顔でしたよ」
「うーん、私もどこかにお母さんは居るのかな」
私も、母にはとても愛されていた。
愛していると、何度も何度も何度も伝えられた。
母とは、そういうものであってほしい、と思う。
「さて、依頼は達成しました。あとは街でゆっくり過ごし、ドベルグに帰還するだけです」
「杖、探しにいきますか?」
「そうですね。伯爵様に、腕のいい職人はいないか聞いておきましたし。そちらに向かいましょうか」
「やった、 楽しみ! 片手杖と両手杖、どっちがいいかしら?」
「それも、実際持って比べてみましょう。予算はあまり気にしなくていいですし」
「……報酬、結構デカい額になりましたね。仕送り、ギルド経由じゃなくて、直接家に持っていこうかな」
ガストンの実家にも、近いうちに一度向かわないとね。私が直接診れば、持病とやらも治るだろう。
さて、杖職人のいる場所は、街を流れる川の下流側。
川といっても、本流は街の外にあり、そちらはとても広く大きい。
街に流れるのは、生活用水のための人工支流だ。
街の川の下流側には、工場や工房が多いという。水が豊富だと、いろいろと便利だろう。
道中で屋台などを冷やかしながら、工房の多いエリアへ到着。
穀物粉を練ってソースを付けて焼いたものがとても濃くて美味しかった。あとイチゴらしき果物もあり、こちらはイチゴミルクらしきものとして売っていたので、シエラが購入。一口貰ったがこちらも美味しかった。
「さてさて、ここですかね?」
「杖にトゲトゲのマーク…… 間違いなくここですね」
「ふおお、杖屋さん!もう楽しいわね!」
看板のマークの意味はわからないが、ここが一番良い杖を売っているというのは伯爵様のお墨付きだ。
さて、お邪魔させてもらおう。
「お邪魔します」
店内は少し薄暗く、しかし所々で杖の先の魔石がぼんやり光っている。
シエラの目が輝いている。
「うーん、たしかに全部いい杖ですね……」
「わかるのですか、ガストン?」
「ええ、まあ。少なくとも魔石の質は上等です」
ガストンは目利きが良い。今までの私たちの食材も道具も、全部ガストンが選んだものだ。
そのガストンが言うのだから、良いものなのだろう。
奥の方から、女性が一人現れた。
「あら、お客さん? いらっしゃい」
「お邪魔します。見て回っても?」
「ええ、もちろん。……でも私は杖のことわからないから、細かいことは聞かないでね?」
あら。どうやらこの人は店主ではないようだ。職人と言うにはたしかに若すぎる、とは思ったが。
「店主はいらっしゃらないのですか?」
「ごめんね、おじいちゃ…… ここの店主は今、店に出てこられなくて……」
「そうですか……」
それならひとまず、陳列されているものだけでも見て回ろう。
シエラとガストンにまかせれば、変な物は買わないだろう。
店内を見て周り、これだあれだとシエラとガストンの話し合いを聴きながら、ふと店の奥、店員さんが出てきた所を見る。
あの奥に伏せっているのが店員さんのおじいちゃん、店主だろう。今目覚めたようだ。
中々立ち上がらないが、どこかを痛めているのだろうか。
と、思考したその時。
奥から、お爺さんのしゃがれた咳払いが聞こえ……
「キキちゃんや!!!!!!!! お客か!!!!!????」
うわ声でっか!!
ここまで読んで頂き有難うございます。
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