番外 バレンタイン
この話はメインストーリーには関係ありません。
「シエラ、チョコは好きですか?」
「チョコ! わたしチョコ大好きよ!? でもドベルグではいいお店がないのよね。市でたまに見るのも、溶けたドリンクだけだし」
ドベルグには様々な物が集まる。
服、装飾品、武器防具。
肉、魚、野菜、果物。
甘味に辛味。
だが、チョコレートだけは、あまり見当たらない。
無いことはないが、シエラの言う通り、温めたチョコを飲むのがメインだ。
隣のバルトフェルト伯爵領では様々なスイーツに使用されているようだが……。
それだけでは、勿体ない。
「シエラ、チョコレートをつかってスイーツをつくりましょう。二人で」
「……二人で!? ガストンは!?」
「私たちでつくって、ガストンにもプレゼントするのです。日頃の感謝、なんて名目でいいでしょう。私たちもやれるというのを見せつけるんですよ」
「なるほど! じゃ、頑張って作っちゃおうかな……!!」
朝市にてチョコを購入、それから果物やら砂糖やら、何にせよスイーツらしいものを買い集めた。
宿屋のキッチンの一角を借り、いざ調理。
……結論からいうと、普通のものが完成した。
果物にチョココーティングをしたもの。
パフにチョコを染み込ませたサクサクのもの。
チョコケーキ、チョコクッキー。
出来たには出来たが、出来があまりにも無難すぎる。普通すぎる。
手作りでしかなく、私の想像していた煌びやかな「映え」は殆どなかった。
……しかし、美味しかった。八割ほどをシエラと私で食べてしまった。
まあ、スイーツ作りなんてそんなものだろう。きっと。
「ガストン、喜んでくれるかなあ」
「見た目も悪くはないですし、味も大丈夫でした。ガストンの性格であれば、とても喜んでくれるでしょう」
軽くラッピングをし、夕刻に帰ってくると言っていたガストンを待つ。
ガストンが宿に帰ってきた。
なにか、大きめの荷物を大事そうにもって。
まずはシエラが、ラッピングした包みをガストンに渡す。
「ガストン、あのね、レティとわたしでチョコのスイーツをつくったの! 日頃の感謝よ、ありがたく受け取りなさい!」
ガストンは驚いた顔をして、喜色満面に……なったと思ったら、少し困った顔になった。
……ああ、なるほど。
「ありがとう、シエラ。レティさんもありがとうございます。……実は、俺からもありまして……今日はなんか、大事な人にチョコレートを送る日、らしいので……サプライズのつもりでしたが、二人も知ってたんですか?」
「え!? ……そうなの?レティ?」
「いや、私も知りませんでした。似たような話は聞いたことありますが…… 今日だったんですね」
前世ではそういう日はあったし、今世でも似たような話は王女時代に聞いた事がある気がするが。正確な日付などは知らなかった。
ともかく、これで私たちはチョコレートを贈り合う、という形になってしまった。
「俺のも是非受け取ってください。日持ちはしないので、すぐに食べてくださいね」
「わあ、ガストンありがとう!」
「ありがとうございます。……それなら、今から三人で食べますか?」
「いいですね! 飲み物、いれますね」
私、シエラ、ガストンで、席を囲む。
それぞれが、手元のラッピングを剥がす。
……わかってはいた事だが。
「……シエラ」
「レティ…… わたし、悔しいかも」
「二人ともどうしたんですか? ……おお!クッキーにケーキも!色々作ってくれたんですね……嬉しいな……!」
ガストンはとても喜んでくれた。
それはいい。それはいいんだ。
ガストンがくれたのは、チョコレートケーキだった。
とてつもなく綺麗なチョコスポンジに、甘すぎず苦味を味わえるチョコ風味生クリーム。
鏡のように反射するチョコが外側に丁寧にコーティングされており、上にはリボンの形のチョコレートが飾られている。
プロだ。
わかってはいた事だが、さすがにこれは、勝てる気がしなかった。
「ガストン……」
「え、え!? なんですかレティさん!?」
ここまで読んで頂き有難うございます。
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