23話 前世の話、今世の話。
「ガストン、シエラ。これから別の言語を話しますが、気にしなくていいですよ」
「はい、わかりました」
「わかったわ!」
軽くだけ認識を操作し、『そういうものだ』と思わせておく。
日本語の事に突っ込まれるのは単純に面倒だから。
伯爵様との話を終えて、その後呼ばれたナディアの部屋にて。
ソファに腰掛けた私たちと、対面するナディア。とても話したそうにしている。
「【日本語で話してもいい?】」
「【ふたりの事は気にしなくていいですよ。色々聞きたいことはありますが、まずはそちらからどうぞ】」
「【ありがとう。じゃあ、えっとね……】」
いろいろと情報交換をできた。
前世では互いに病人だったこと。状況から、おそらく死んでこっちに来たのだろう。
来た時期は私が十六年前、ナディアは六年前。周期が十年だが、たまたまなのか、その周期で転生者が来るのかはまだわからない。
他の転生者にはまだ会ったことはない。しかし、伯爵家の蔵書から、過去に他の転生者がいたであろう痕跡がいくらか見られるという。
……王家の蔵書にはそんなものはなかったが。禁書庫のほうにあるのか? そちらはあまり重視していなかったから読んでない。読んでおくべきだったな……
あとは、なにか大きな使命をもって連れてこられた訳ではなさそう、ということ。
たとえば魔王討伐。悪神撃滅。聖女でもなければ勇者でもなく、ただの王女と貴族子女。
私は追放されたが、ナディアは普通以上に溺愛されているだけのただの子供だ。
「【ところで、なにか特殊な能力とかは授かってないんです?】」
「【まあ、あるといえばある、けど…… 貴族の私にはあまり使えないというか。『魔物支配』ってスキルなんだけど、自分より弱い魔物を何体でも支配下における、んだけど】」
「【たしかに、チート級ではありますけど……冒険者でもなければなかなか、ですね】」
私がいれば、肉体の改造で『自分より弱い』の範囲をとてつもなく広げられるし、各地を巡って魔物集めなんてのも面白いだろうが。
貴族の子女なら然程強くはなれないだろうし、魔物と相見える機会もほとんどない。実質死にスキルか。勿体ない。
「【私の能力であれば、たとえばナディアを『亡くなった事』にするか代役を用意して冒険に連れ出し、私の力でその能力を活かせる生き方を案内できますが……】」
「【ふふ、私はね、今の両親に愛されて、感謝してるの。スキルのひとつくらい、あってもなくてもいいのよ。ありがとうね】」
まあ、一応提案しただけだ。
その能力を十全に使えるようにさせるのも面白いと思ったが、私の管理するリソースが増えるのはデメリットではある。
それに、魔物は商材であり、支配下に置くものではない。少なくとも私のパーティでは。
……話のできる友達を仲間にできる、というメリットは、現状に満足している人間を引っ張り出してまで欲しいものではない。
「【そうですね。……前世では病人だった、といいましたね。私と、取引しませんか? 受けてくれたなら、今後一切病気にかかないようにします。風邪もなければ、腹痛もおこらない体にしますよ】」
「【う、それは魅力的…… 実はいまの体でも、胃腸が弱くて冷たいもの食べられないのよね…… 取引内容次第では、前向きに検討するわよ】」
……よし、では、伯爵の元に二人で押し入りにいこう。
ふふ、『娘に弱い』という弱点、『病気が怖い』という弱点、ふたつを利用して、目的を完遂してやる。
ここまで読んで頂き有難うございます。
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