21話 依頼完了、好印象の手土産
「…………これは、ティタノベアではないな?」
「ええ。ティタノベアの毛皮はこちらにある数枚ほどでございます。こちらも、買い取っていただけると助かるのですが?」
「……………………まて、少しまて。まずはこの、この毛皮についてだ。詳しく説明できるか」
「もちろんです、閣下」
領都バルトで一番美味しいという果物マシマシはちみつとろとろ生クリームもりもり激甘パンケーキを食べた翌日、私たちは領主館に呼び出された。
館というか、もはや小さめの城の様相だが。まあ、王城よりは断然こじんまりしてはいるが。
堅苦しい挨拶もそこそこに、大きな木箱を抱えたガストンと、高そうな木箱を抱えたシエラをお供に、ゼノス伯爵の応接間に案内され、まずはとガストンの抱えていた木箱から毛皮をひとつ取り出して、今。
「こちら、ティタノベアの討伐に向かった際に遭遇した、変異体…… ギルドマスター曰く、特異体とも呼ぶべき大変特別な個体、『ジャガーノート』の毛皮でございます。含まれた魔力量、毛艶、圧倒的威圧感、どれをとってもティタノベアの数段は上等でしょう。ご依頼の品とは少し違いますが、そちらも受け取っていただければと存じます」
「……うーむ。うむ、大儀であった。……ティタノベアの毛皮は絨毯にでもしようと思っていたのだが、これだけのものなら中身を詰めて剥製にしてもいいな。ホールに飾っても良いくらいだ。アメジストの言う通り、実力は確かすぎるほど確かなようだな」
「お褒めに預かり、光栄です」
ゼノス伯爵は『ジャガーノート』の毛皮に夢中だ。撫で、眺め、ほっと溜息を吐いている。思考を読んでみると、特殊な個体のレア度を考えると対価はどれほどになるか、なんて事も考えていなくは無いが、そんな細事よりもこのコレクションをどうしようかという思考のほうが強い。
そんなに気に入ったなら、冬用のコートにでもすればいいのに、と思ったがどうでもいいので言わない。
「そしてこちらが、伯爵様のご夫人と、お嬢様への『手土産』でございます」
続いて、シエラが箱をテーブルに差し出す。
私が蓋を開け、伯爵に中身を見せる。
「……これはなんだ? 片方はわかるが……こっちの瓶は、食べ物、調味料か?」
「こちら、凍らせています方は魔の森深層に生っておりました『デビルアップル』でございます。悪魔級に美味しい、と美食家の間では有名な果物だそうですよ」
魔の森深層でみつけた、赤黒いリンゴ。
採れたてを食べてみたが、今まで食べたどの果物よりも瑞々しくて甘くて濃厚でサッパリしてて美味しかった。たしかに『悪魔級』だった。
「デビルアップルか! 一度、王家主催のパーティでいただいた事があるな…… あの時は疲れから甘い以外の事はおぼえていないが、これはゆっくりといただこう」
王家のパーティで出されるほどのものか。
そういえば、子供のころに食べたことある、かもしれない……?
……それなりに生えてたが、誰も取らないのだろうか。
いや、保存して運ぶのが大変なのか。氷魔法使いがわざわざ魔の森から王都まで運ばないといけないのだろう。
魔の森の物のほうが新鮮だから、記憶にあるはずの味と違ったのだろうか。
これで一儲け、という道も…… いや、手間の割に旨みが少ないか。魔物の肉や川魚などもあわせればそれなりにはなるだろうが、買い取ってくれる者を探してからだな。
「そしてこちら、『美容クリーム』になります。こちらはご夫人への手土産としてお納めください」
「美容、クリーム…… む?これも、このジャガーノートの魔力が含まれているが」
さすが伯爵、実力者らしく魔力の質を判別できている。
「『ジャガーノート』の脂から精製したものでして。ああ、加工は例の薬師に頼んだので、質は担保できているかと」
「おお、あの薬師であれば問題ないな。しかし、それなりに良いモノを用意してきよったな……」
「お気に召していただけましたでしょうか?」
「ふは、これでお気に召さない者は、物の価値のわからない馬鹿であろう? ……ジャガーノートのものと、ティタノベアのもの、毛皮は全て買い取ろう。当然、イロもつける。……貴族間での噂の流布についても、請け負おう」
「ありがとうございます」
これで、『貴族の間に「優秀な冒険者がいる」という噂を広めてもらう』という当初の目的は達成した。
想定していたより道程は長かったが、得るものが多くて大変満足だ。
さて、次は撒いた種が芽吹くまで、次の布石を考えながら地道に行動していこう。
「ところで、昼食はどうする? 予定がなければ、三人も共にしないか?」
「ぜひ喜んで。……であれば、ジャガーノートの肉は解凍してお渡ししましょうか」
「……肉もあるのか。ではソレでなにかつくらせよう。 魔力の高い魔物の肉はなかなか食べる機会がないからな、期待しておこう」
「必ずお気に召すかと。ちなみにですが、二度と食べることのできない個体でございますので」
「……なんとまあ、希少性の高いものを寄越してくれたものだ」
今後のための最初の一歩だから、これくらい強い印象を与えておくほうがいいだろう。
ここまで読んで頂き有難うございます。
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