19話 難所、遠投、地道な解法。
「まさか、こんな難所があるとは。これは想定外ですね」
「これは流石に……どうしましょうかね……」
「うーん、魔法でなんとかなるかしら?」
賊のアジトを後にし、大所帯で魔の森旧道を歩くこと丸一日。
捕まっていた五人の一般人は一時的に催眠状態にして、オーダーに担がせて足手まといになる事を回避し、寝ずの行軍をした。
残り半日ほどで旧道を抜けられるかという所で、更なる障害に足止めされる事になってしまった。
目の前に広がる、幅が優に百メートルはこえるかという、超巨大な谷。
谷底は霧が濃くて見えないし、そもそも手押し車があるので降りて登る、なんて無茶もできない。
当然左右どちらを見ても、橋なんて無い。
……旧道を逸れ、元の街道に戻れば迂回できるのだろうが、そんなことをすれば数日はロスするだろう。それは許容できない。
……シエラなら、土魔法で向こうまで橋を掛けられるか?
「シエラ、橋、つくれるかしら?」
「……魔力が足りないと思うけど、一旦やってみるわね」
シエラが地面に手を着く。
地面が大きく揺れ、谷のこちら側から地面が生えるように伸びていく…… が、精々が二十メートル程度の物ができて、魔力切れ。
「はあ、はあ…… 強度を、保つために……密度をあげたんだけど…… 魔力が……」
「お疲れ様、シエラ。頑張りましたね」
ここからさらに向こう岸まで繋げるというのは厳しいだろう。
荷物が無ければ、『レナトゥス・オーダー』に投げてもらう、という選択肢がとれたが。
「荷物さえ向こうに渡せれば……」
「飛べたりしたらいいんですけどねえ……」
飛ぶ。飛ぶか…… 魔力を完全に回復したシエラであれば、これだけの荷物を浮かせる事はできるだろう。
だが、百メートルは飛ばせないはず。距離が離れるほど、魔法の影響力は薄れる、と聞いたことがある。
……正攻法でいくしかないか?
「荷物の中のロープを組み合わせて百メートルにして、オーダーごと投げて向こう岸まで渡す。魔力を回復させたシエラにロープの強度をあげてもらい、全員で綱渡り、でどうでしょうか。往復を考えて二本つくりましょう。一人は向こう岸でロープを打つ杭の役割をしてもらいます」
「え、えぇ!? 百メートル、ロープ一本の上を……? いや、まあ、レティさんの改造のお陰で、バランス感覚もとんでもなく高まってますけど……」
「荷物もひとりひとりが少しずつ抱えていけばいい。せっかく人数が増えましたし、これならタイムロスも少なく済むはずです」
美しい解決方法ではないが、仕方ない。
オーダーに木製の橋をつくらせる、とか、オーダー自体を橋にする、とかも考えはしたが。
シンプルにさっさと切り抜けるのが最善だろう。
なんだかんだで、上手くはいった。
それぞれが荷物を小分けにかかえ、数人ずつ素早くロープを渡る。
魔力が全回復したシエラの魔法でも、さすがに全員一気に渡れるほどの強度は確保できなかった。二本以上のロープをつくれる在庫も無かったし、多少のロスはしかたない。
かわりに二本を束ねて一本道とし、荷物を向こう岸に置いたオーダーはこっち側に投げ飛ばされてもう一度荷物をもっていく、という方法をとった。
……最初に二人ほど、投げられの距離が足りなくて谷に落ちそうになったが。
崖に張り付いて、ちゃんと登ってこれた。
あえて一人落として谷底の景色を確認するのもいいなとは思ったが、今回は見送ろう。タイムリミットはあるんだし、帰りにまだ気になってるなら、また見に来てもいい。
「毛皮も、クリームも、果物も、金品もちゃんと無事。紛失したものはありませんね?」
「そうですね、誰もなにも落としてないはずです」
「よし、では進みましょうか。……もう、道中なにも無ければいいのですが」
「旅って、思ったより大変なのね……!」
面白いトラブルは沢山起こってほしいが、こういうトラブルはめんどくさくて嫌だな……。
ここまで読んで頂き有難うございます。
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