14話 温泉、いつかの旅の計画、仕方なしの人助け。
「お、見えてきましたね。あれが、ドベルグからバルトフェルトへの道の間の、最初の村です。たしか……」
「グラン村、よね?」
「おお、シエラ、知ってたのか?」
「ふふ、サンとお話して教えて貰ったの!」
なるほど。情報の吸い出しに記憶を直接覗くのではなく、会話をしたのか。
私からすれば非効率的だが、ポーターたちの言語能力や記憶力、違和感の洗い出しには適格か。
……最近、やはり、私だけの視点ではどうしても人間らしさというものが抜け落ちてしまうらしい、と思うようになった。
その点でも、二人を拾えて良かったと、改めて思う。
さて、最初の村に到着した。
が、私たちはここで長居するつもりもなく、少しだけ散策してすぐに経つつもりだ。
……だったんだが。
「旅の冒険者様方、どうか、願いを聞いてくださいませんか?」
……はあ、面倒だな。
村を散策し、特産なんかが無いか聞いて回る。
ドベルグに近い村なのであまり期待はしていなかったが、なんと村の小山の上に温泉が湧いているというではないか。
温泉に係る施設などはないので、誰でもいつでも入り放題。しかしやや温度が高く、村人は湯治が必要な病人でもなければ入らないという。
多少熱い程度なら私がいればなんともないという事で、今夜は温泉でゆっくりしよう、と決めた。
ポーターを見張りに、シエラと私で温泉を楽しむ。
ガストンも一緒に入れば時短になるのにと言ったが、さすがに無理だと拒否された。
あとでポーターとゆっくり入るらしい。まあ、どちらでもいいが。
「レティ、みて! くらげ!」
「温泉にタオルをつけては…… いや、問題ないのか…… シエラ、くらげを知ってるんですか?」
「えっとね、イチとニは、港町で育ったんだって。くらげとか、たことか、えびとか、絵で教えてもらったの! どれも見た目は悪いけど、美味しいって言ってたの。レティ、わたし、港町も行ってみたいわ!」
「ふむ、ふむ……。よし、機会があれば必ず行きましょう。海鮮料理、楽しみですね」
「うん! えへ、レティと会えて、ほんとによかった」
バイタルスキャンをしたところ、温泉で少し体温があがっているようだが、魔力回路も脳も、問題無し。
常時体調が著しく悪い以前の人生と比べれば、なにをしても楽しいのは道理だろう。
「さて、ガストンと交代して、私たちは少し散歩でもしますか」
「ん! あのね、お風呂上がりには、冷たい飲み物が良いって」
「先程買った搾りたてミルク、あとで冷やしてもらえますか?」
「えへ、おまかせあれ!」
風呂上がりの散歩を終え、ガストンとも再合流。
朝方までには村を出ようと思っていたところ…… 慌てた様子の村娘に、冒頭のように声をかけられた。
「私の夫が、昨日から急に寝込んで…… 昨日は熱かった体が、さっき、急に冷たくなって……! 冒険者様、どうか、どうか街からお医者様を呼んできて貰えませんか!それが無理でも、薬を代わりに買ってきていただけませんか!」
はあ、めんどくさい。
……メリットは、この人と患者の心象が良くなること。
広くは無い村だから、村人たちからの心象も良くなるかもしれない。
だが、それは私の目的には一切関係ない。得られるものに対して時間を割く価値も全くない。
万が一その夫とやらがダメになってしまった時のデメリットだってある。
……のだが。
「レティ……」
「レティさん……」
はあ………………。
もう。これだから。
「まず、私たちにその人を確認させていただけますか? もしかすると、症状がわかるかもしれませんので」
しれない、じゃなくてわかるし、治せるし。面倒だからパパっと治してさっさと村を経とう。
ガストンとシエラからの心象を守れる、というメリットが発生してしまった。
ここまで読んで頂き有難うございます。
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