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異世界投資家~異世界転移した引きこもり投資家は、ファンタジー世界でも株を続けます~  作者: 青樹空良


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53/54

53 逆転

「あ、ありがとうございます。サラさん」


 サラが結構思い切った数の株を買ってくれたおかげで、更に株価は高値で安定した。


「えっと、こんなに買ってもらって大丈夫ですか?」


 ユウトも思わず不安になるくらいの気持ちのいいぶっぱなしっぷりだった。


「いいのよ。だって、そうした方がいいんでしょう? さっきも言ったけど、もっと大きくなって返ってくるのも期待しているもの。うふ。これからももっとお店を繁盛させようと思って貯金も頑張っていたところなの。でも、エリオに聞いたら投資の方が儲かるって言うじゃない? だから、ね」

「それは、本当にありがたいというか……」


(なんか、ちょっと怖く見えるのは気のせいか……? 本当にありがたくはあるんだけど、この人、王都に出てきて成功してるし、おっとりしてるように見えてかなりやり手なんだよなあ)


 などと、ユウトは思っているが、


「サラ姉、すごい! 本当にすごい! そんなにお金を貯めてたなんて」

「ふふ、いやぁね。そんなこと大声で言うものじゃないわ。ダメよ、エリオ」

「ごめんなさい」


 エリオはめちゃくちゃ感動して、更に怒られている。それでも、なんだか嬉しそうなのは惚れた弱みなのか。

 サラはよしよしとエリオの頭を軽く撫でた後、ユウトの方を向いた。


「私、絶対にこの株が上がるって信じているの。よろしく頼みますね、ユウトさん」


 にこりとサラは微笑む。


(う。やっぱり、なんか怖い。この笑顔。圧を感じる……。エリオ、この人が好きってすごいな)


 無駄に感心してしまうユウトだった。


「とりあえず、株価が安定してよかったね。サラ姉のおかげだよ」


 エリオはルミネ村の人たちやミオの力もあったことを忘れたかのように、サラを見てにこにこしている。


「私は、そんな大金は入れられなかったが。役に立ったんだろうか……」


 その様子を見て、ミオが肩を落としてしまっている。


「そ、そんなっ。ミオだって株主なんだ。同じだよ。俺は、ミオが株主になってくれてすごく嬉しいと思ってる。この株価の安定にはミオの株も貢献しているんだ」

「そうか? うん。それならいいんだが」


 ユウトが慌ててなだめるように言うと、ミオは自信を取り戻してくれたようだ。


「それに、ミオは戦闘だってできるし、強いし、すごいと俺は思ってる!」

「そ、そうか……」


 今の状況では的外れなことを言ってしまったのか、ミオはユウトとは別の方向を向いてしまった。


(俺、余計なことまで言ったかな……)


 ミオがこっちを向いてくれないと、なんだか不安になる。


「とにかく、上手くいってよかったよ。私は株のことなんかさっぱりわからなかったがね。こうして手を出してみると面白いものだねえ」


 そんなとき、テオが笑いながら軽口をたたいてくれた。


「父さん、まさか他の株まで買うつもりなのか?」

「いやいや、こんなに上手くいくものなのだなと思ってね」


 はっはっはとテオが笑う。


「いや、今回はみんなが力を合わせた結果です。いつもなら、もっと大負けしたり大負けしたり大負けしたりします……。株は怖いです。本当に怖いです」

「そ、そうかい? ユウト君も大変だな」


 手軽に儲かるものだと思われるのも困るので、思わず本音が出てしまった。今度はテオが苦笑いしている。

 ここは取引所の中だ。ふと落ち着いて周りを見回してみると、


「よっしゃ、上がった!」

「また下がった……。負け続けだ……」


 対照的な人たちがいる。というか、ここはそういう人たちで溢れている。


「確かに、ユウト君の言うとおりのようだね」


 どうやらテオも同じように周りを見ていたようで、納得してくれたようだ。


「そんな怖い世界なのに、上手くいったのは皆さんのおかげです。本当に」


 改めて今、株価が元に戻って乗っ取りを防げたことが奇跡だと再認識する。


「乗っ取りの心配もなくなったことだし、後はこのまま進めばいいんだよね!」

「そうだな」


 エリオも危機を乗り切ったことで嬉しそうだ。

 殺伐とした取引所の中だが、ユウトの周りにはほわりと温かい空気が流れている。


「なんとかなったなら、私たちは村に帰るか。村も心配だしな」


 ミオが言った。


「そうだな」


 ミオが言ったとおり、村も心配だ。この株の値動きにガルドは気付いているのだろうか。気付いていたら、一体次はどんな手に出てくるのかわからない。


(株取引は公正に行われた。だとしたら、まさかまた力でなんとかしようとするか? さすがにそれはないよな?)


 そんなことを考えていると、


「大丈夫か?」


 ミオがユウトの顔を心配そうにのぞき込んできた。


「ああ、またガルドが何かしてこないか、なんて少し考えてた」

「もし暴力に訴えてきたら、私がなんとかする」

「ミオ……」

「そっちは、私の得意分野だからな」


 ミオが微笑む。


「ありがとう、心強いな」

「私には、今日のユウトも心強く見えたぞ。私は腕っぷしはあるが株のことや会社のことはわからないからな。手続きをしたり、人を集めたりするのはできない。だから、ユウトはすごいな」

「……あ、ありがとう」


 ミオに言われて、思わずユウトは赤面してしまう。

 ユウトは弱い。

 それでも、せめてユウトにできることをしてミオに褒められてしまった。

 ユウトはさっと周りを見回した。

 エリオはサラと話していて、ユウトたちのことなんか全く気にしていないようだ。テオも株価が安定したことで少し落ち着いて余裕が出てきたのか、興味深そうに取引所の中を眺めている。

 どうやら、今の会話を聞いていた人はいないようだ。今のを聞かれていたら、なんだか気恥ずかしすぎる。


「どうした?」

「な、なんでもない」


 再びユウトを見つめてくるミオに、ユウトは首を振った。

 とにかく、難所はなんとか乗り切った。

 しかも、頼もしい仲間たちと一緒に、だ。


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