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異世界投資家~異世界転移した引きこもり投資家は、ファンタジー世界でも株を続けます~  作者: 青樹空良


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49 ガルドの策略

 ユウトが告知したところで、今の状態では焼け石に水だった。下げは止まらない。こうなると、もはや株価は雪崩のようなものだ。


「くそ、物理の攻撃ならミオがなんとかできるってのに」


 ルミネ村でのことを思い出してしまう。あの姿は本当にかっこよかった。本当に頼りになると思った。

 ユウトもミオそう思って欲しかった。ミオとは違う分野で頼りになる存在だと、思われたかった。

 ユウトは焦っていた。これはただの下げではない。

 なにしろ、


「星屑工房の株を売り崩して大量に買っているのがヴァルクロウ商会だと……!?」


 大量に株を保有すると、その株主が誰なのかわかる仕組みになっている。その保有率はまだ5%ほどだ。が、これ以上売り崩されて、ガルドに大量に株を買われたら……、


「それ、乗っ取りだよな!?」


 せっかくガルドに対抗するために、村を豊かにするために始めた事業だ。ガルドに乗っ取られては意味が無い。

 が、ガルドがそれを狙っているのはもはや明白だった。

 普段なら株価が下がっても、会社に打撃自体はそれほど無い。だが、この状態は見過ごすわけにはいかない。


(ガルドが言っていたのはこのことだったのか。力業でなんとかならないなら、会社を乗っ取るつもりだったんだ。あのときの言葉の意味がようやくわかった)


「ぐぬぬ」


 そうとわかればすぐにでも対策を取らなければ、見過ごせない事態になる。


「こうなったら……。エリオ、ちょっとクリスタリス通信の株価を見てくれるか?」

「うん」


 クリスタリス通信の株は緩やかに上昇していた。


「これを全部売れば……。いや、それでも足りないか」

「どういうこと? クリスタリス通信の株を売ってなにをするの?」

「自社株買い、だ」

「自社株買い?」

「そのままの意味で、自社の株を買うってことだ。そうすることで、俺たちの株の保有率も上がるし、一定の価格まで戻すことはできる。経営者の株保有率を増やすことで株主に安心感を与えることもできるってわけだ」

「なるほど。いいね! 自社株買い!」

「それだけの資金があれば、の話なんだがな……」

「無い、かも」

「無い、な。いくらクリスタリス通信の株が上がっていると言っても限度はある。それに、株を売ったことで得た元手も工場建設のために使ったんだよな……。しかも、今ある資金も、工場の稼働や働いてくれる人たちのための賃金を払うために使うものだから手をつけられないしな」

「そのために集めたお金だからね……」


 ユウトは、エリオと二人で顔を見合わせてため息をつく。

 金の力、情報操作、全てにおいて、ガルドの方が勝っていることは間違いない。星屑工房は、まだこれからの会社で商品も売り出すのもこれからだ。だから、もちろん売り上げも全く無く、資金も少ない。


「こんなところに来て手詰まりか……。あんなやつの手に渡すために、ここまでやってきたわけじゃないってのに!」


 思わずクリスタルタブレットを床に叩きつけたくなる。が、そんなことをしてもなんの解決にもならない。


「よし」


 ユウトは立ち上がった。


「じっとしていても、仕方ないからな。動く、しかないか」


 正直、じっとしていると不安だというのもある。立ち上がってみたものの、やるべきことが浮かんだわけではない。


「動くって、おいらたちにできること、あるかな」

「こうなったら、少しでもガルドが星屑工房の株を買うのを阻止するしかない」


(なにもない俺たちにできることはなんだ? ガルドに対抗する手段はなんだ? 弱小投資家にできることは?)


「あ」

「どうしたの? ユウト兄?」

「わかった。手伝ってくれるか? エリオ」

「え、うん。星屑工房のためになることなら、もちろん喜んで!」


 ユウトがなにかを考えついたのを察してくれたのか、エリオの顔がパッと輝いた。




 ◇ ◇ ◇




「お願いします。本当に少しずつでもいいんです。星屑工房の株を買って下さい!」


 ユウトはルミネ村に来て、村の人たちを前に頭を下げていた。


「株を買えと言われてもな」

「そんな難しいこと、俺たちにはわからねぇよ」


 見るからに肉体労働専門です、と言わんばかりの鉱夫たちは困ったように頭をひねっている。


「そりゃ、労働力が必要だと言われれば手は貸せるけどよ」

「そうだなあ」


 ルミネ村の人たちが悪い人たちではないことはすでに知っている。星屑電池のことももうわかってくれているし、この前も工場が襲われそうなときは、ちゃんと守って戦ってくれた。

 だが、株の話となるとちんぷんかんぷんらしい。


「どうしたんだユウト!」


 ユウトが、どう言えばわかってもらえるのかと頭を抱えていると村を警護していたらしく軽装備の鎧に身を包んだミオが現れた。村の人たちが集まっていることに気付いてやってきてくれたようだ。


「ミオ!」


 ミオの顔を見たら、なんだかほっとした。


「ユウト君、どうしたんだい?」


 テオもミオに続いてやってきた。


「それが……」


 ユウトはミオとテオに向かって、手短に説明した。周りにいる鉱夫たちも耳を傾けてくれている。

 星屑工房の株が不当に下げられ、株が値下がることで売りが出てくるのを狙って、その株をガルドが買い占めていること、ガルドが一定数の株を持ってしまうことで星屑工房が乗っ取られてしまう可能性があること、を。


「なんだって……」

「それは……」


 ミオもテオも驚いたような顔をしている。


「そんなことになったらこの村は、鉱山は、ガルドの支配から逃れられなくなってしまうということか……」

「はい、そういうことです」


 テオの言葉にユウトは頷く。


「だから、皆さんの力を貸して欲しいんです」

「一体、それはどういうことなのかな?」


 テオに聞かれてユウトは説明を続けた。

 簡単に言えば、株をこちらが買うことでガルドの買い占めを止めることが出来るということだ。


「俺たちだけでは、もう資金が無いんです。でも、この村の人たちが少しずつでもいい、投資をしてくれればなんとかなるかもしれません。もちろん、それだけでは足りないかもしれない。だから、エリオも別の方面へ手を回しています。お願いします!」


 ユウトは頭を下げる。


「頭を上げてくれ、ユウト君」


 テオが言った。


「頭を下げなければいけないのは私たちの方だ。ユウト君は、私たちの村のために頑張ってくれているのだからね。そうだろう?」

「そのとおりだ、ユウト」


 顔を上げるとミオと目が合った。


「私も少ないが、出させてもらう。本当に、何の足しにもならないかもしれないが」

「ありがとう、助かる!」


 嬉しさのあまりミオの手を握ろうとしたとき、


「わかったよ、兄ちゃん! 俺も少し出させてもらうぜ。少ないがな」


 一人の鉱夫からドンッと背中を叩かれた。


「うぐっ」


 かなり強い力だったので前に向かってよろけてしまう。どうも、肉体派の人たちの感情表現には慣れることができない。


「おう、最初はよくわからなかったけど、今の説明でわかった! 俺も、少しだけど出すぜ」

「この村をなんとかするためにならな!」

「母ちゃんにも相談しねぇとな」

「兄ちゃんは、俺たちの村のために頑張ってくれてるんだからな。俺たちがなんとかするのは当たり前だ」

「兄ちゃんになら、預けられるぜ。これまでのことでもう信頼してるからな」


 我も我もとユウトの元に来て、口々に声を掛けてくれる。その度に背中や肩を叩かれるのは勘弁して欲しいのだが、こんなにもユウトのことを信じてくれているのはありがたかった。

 ミオの方をちらりと見ると、嬉しそうに微笑んでいた。

 その顔が見られることが、ユウトには一番嬉しい。


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