48 突然の暴落
「ちょっと、ユウト兄! 大変だよ」
ガルドと話したあの日の数日後、エリオがクリスタルタブレットを見て声を上げた。あのガルドの様子だと、何食わぬ顔をして再び何かを仕掛けてくることも考えられた。
「またルミネ村になにかあったか!? それとも、星屑工房に何か……」
「そっち! 星屑工房の方! なんか、いきなり星屑工房の株が暴落してる!」
「なにぃ!?」
ユウトも慌ててクリスタルタブレットをのぞき込んだ。
「……な、なんだ、これ」
エリオが言うとおりだった。
株価は昨日とは明らかに違う動きを見せている。俗に言う、ナイアガラというやつだ。
「何でだよ!? 特に俺たちからなんの情報も出してないぞ? 昨日までは綺麗なヨコヨコだったはずだよな。特に原因なんて、心当たりが無いぞ……」
「おいらもだよ。だから、びっくりしたんだってば!」
もちろん、株価は日々変わるのが当たり前だ。が、材料も何も無いのに大きく動くことは珍しい。失望されれば売られるし、期待が大きければ上がる。それが普通なのだが……。
「待てよ? エリオ、掲示板見てくれ!」
「う、うん」
エリオが掲示板のページを開く。
「な、なんだ、これ……」
星屑工房はそれほど注目されていた株ではなかった。そのせいか、掲示板もぽつぽつと呟かれているくらいで盛り上がっているとは言えない状態だった。説明会の後や株が売り出されたばかりの少し話題になっていたとき以外は、むしろ過疎っていたと言ってもいいくらいだ。
だが、今は、
『逃げろー』
『俺たち騙されてたのか?』
などと、不吉なことが書かれている。
「俺たち、別になにも告知とかしてないよな?」
「そのはずだよ……」
「どうなってるんだ?」
震える手で、ページをスクロールしていく。
『魔力電池に代わるものなどない! 星屑電池は不安定で、新エネルギーに出来るようなものにはならない』
「こんなのただの誹謗中傷だろ……」
「待って、ユウト兄。これ」
「ん?」
『星屑電池の原料になる星屑石、爆発事故。星屑工房は事実を隠蔽。星屑電池は危険』
「……!? これって、あの最初の爆発のことか? 別に隠蔽していたわけじゃないぞ……。というか、なんでそんなこと知ってるんだ!?」
それ以外にも、星屑電池が危険で魔力電池がいかに優れているかという趣旨の投稿がいくつもされている。
「これ、か」
ユウトは呟いた。
「こんな掲示板で操作されてるとは思いたくない。でも、これしか原因が考えられないな」
「ひどいよ、こんなの! 星屑電池は危険じゃないのに! こんなのめちゃくちゃだよ! 嘘ばっかり! 誰がこんなことを?」
エリオが声を荒げる。
「だな。俺も酷いと思う。星屑電池はエレノアさんが細心の注意を払って開発してくれてるんだ。危険だって無いと何度も確認している。そもそも、あの爆発は研究の過程で起きたわけでもない。こんなのただの言いがかりだ。でも、これは、まさか……」
こんなことをして得になるのはどこかと、ユウトは考える。答えは一つだ。
「もしかして、ガルドの仕業か? だとしたら、汚すぎるぞ!?」
「ええっ!? 力業がダメだったから、今度は株価を下げてきたってこと?」
「そういうことになるな。でも、デマまで流して株価を下げてどうするんだ?」
ユウトは頭をひねる。
(なにが狙いだ?)
思いつつ、ユウトは呟く。
「まずは、ホームページで星屑電池に危険は無いと告知しよう」
とりあえず、できることからやっていくしかなかった。掲示板上でユウトたちが反論しても、嘘だのなんだのと書かれて中の人ではないかなどと言われてしまう可能性が高い。自分たちを擁護しようとしていると言われてしまえばそれまでだ。
それなら、しっかりと公式で告知した方がいい。
早速、ユウトはホームページを更新することにした。
「でも」
手を動かしながらユウトはハッとした。そして、あのガルドの言葉を思い出す。ガルドは星屑電池に自分もあやかりたいと言っていた。それならば合点がいく。
「もし本当にこれもガルドの差し金だとしたら、あいつは俺たちを潰したいほど星屑電池を警戒してるってことだよな? それに、きっとあいつは……」
まだ、この犯人がガルドかどうかはわからない。
それでも、本当にこれがガルドの仕業だとしたら今ユウトが考えたとおりだということだ。でなければ、ここまでする理由がわからない。




