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異世界投資家~異世界転移した引きこもり投資家は、ファンタジー世界でも株を続けます~  作者: 青樹空良


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41 会社説明会

「説明会?」

「ええ、資金を集めるために実演をお願いしたいんです」


 さっそく、ユウトはエレノアにも話をつけることにした。もちろん、エレノアはクリスタルタブレットを持っていないのでメッセージを送ることができず、直接会うしかない。エレノアは王都に住んでいるので、今回はサラの宿で会っていた。


(こういうのも細かいやりとりはスマホみたいに出来るようになれば便利なんだよな。というか、そうしたらミオとも個人的に連絡が取りやすくなったりして……。おはようとか、おやすみとか、メッセージを送り合っちゃったりして!? いやいやいや、それじゃ恋人みたいじゃないか! 俺は一体なにを考えて……)


「どうした? ユウト君」

「あ、すみません」


 妄想で頭がいっぱいになっていたユウトの顔をエレノアが不思議そうにのぞき込んでいる。


「エレノアさんはクリスタルタブレット、知ってます?」


 頭の中で考えていたからか、思わずクリスタルタブレットの名前が口から出てしまった。


「あの板みたいなやつか。使っている人は見たことがあるね」


 どうやら持っていないが、存在は知っているようだ。それなら、話は早い。特に今話題にしようとしていたわけではないが、話しておくのもいいかもしれないと思った。


「あれも魔力電池で動いてますよね」

「そのようだね。ああ、アレにも使えるということか。なるほどなるほど。確かに使えたら便利かもしれないね」


 うんうん、とエレノアが頷いている。普通の人には一から説明しないとわからないところだが、エレノアはすぐに理解してくれたらしい。さすがに頭の回転が速いようだ。


「というか、あれって遠くの人とすぐに話が出来る道具でもあるんだろう? それはめちゃくちゃ便利じゃないか! うんうん。私もこれまでは魔力電池が高すぎて使えないと思っていたが。そうか、星屑電池ならもっと普及するかもしれないね。だとしたら、もう忙しいときにわざわざ会って話したりしなくてよくなるわけで、研究に使う時間が無駄に削られたりしないわけで……。最高じゃないか!」

「あ、はい」


 なんだか、エレノアは興奮している。


(この人もなんだかんだで引きこもりっぽい感じあるからな。そういう人種にとってはスマホみたいなものって夢のツールだよな……。なんか、エレノアさんに親近感わくな……)


「ああ、すまない。それで、実演の話だったね。大勢の前で話すのは正直あまり得意ではないのだが。必要ならやろう」

「ありがとうございます」


 ぺこりとユウトは頭を下げる。


(やっぱり、気質的にはエレノアさんも引きこもりオタクっぽさあるよな。小屋とか工房の中の部屋にこもってる感じが板についてたし。まあ、俺なんかと違って新しいエネルギーの開発できるとかスペック高すぎるけど)


「本当に私は部屋にこもって作業をしている方が好きで、あまり人前に出るのは好きではないんだけどね」


 ふふ、とエレノアが笑う。


「今回のことは少しワクワクしているよ。クリスタルタブレットのことは初めて気付いたけど、そういうものにも使えると思うと余計に頑張ろうと思うね」


 そう言うエレノアはまるで子どものように輝いた笑顔になっているように見える。


(よっぽどクリスタルタブレットのことが嬉しいのか、星屑電池のことでやる気になってくれているのか。どっちにしても社長との俺としては嬉しいことだな)


「エレノアさんがやる気になってくれるのは嬉しいです。あの、実は俺も人前に出るのは苦手なんですが一緒に説明会頑張りますので」

「うん、ユウト君。君がいなかったら研究だけしている私では展開が難しかっただろうからね。こちらこそありがとうだよ」


 エレノアが、がしっとユウトの手を掴んでぶんぶん振る。


「え、あ……」


 女性とのボディタッチに慣れていないユウトは思わずどぎまぎしてしまう。


「私も出来るだけやってみることにするよ。私だってこの電池を成功させたいからね」


 エレノアの手に力がこもる。眼鏡の向こうの真っ直ぐなエレノアの目が、ユウトを見つめている気がした。女性に触れられてドキドキしていたユウトが馬鹿みたいに、ユウトには思えてしまうような雰囲気がエレノアからは感じられた。


「本当に俺、がんばります!」

「頼んだよ」


 信頼のこもった声で言われて、ユウトは頷いた。




 ◇ ◇ ◇




 そして、ユウトは人前に立っていた。大きなホールや会議室のような部屋、といきたかったところだがここはサラの宿だ。そこの食堂部分を貸してもらって、説明会を開くことになった。ホームページでも告知はしたが、それほど人が集まるとは思えなかったからだ。もし、この先もっと大きな会社になって入りきらないくらい人が来るようになったら将来的にはもっと大きなホールで株主総会をしてみたいという夢もあるにはあるが。


(サラさんには本当に感謝だな。エリオにここに連れてこられなかったら、今頃どうなっていたんだろう。店を説明の会場にまでしてもらって本当にありがたい。それにしても……)


 ユウトは説明会の会場となっている食堂の中を見回す。正直、思っていた以上に人は少ない。元々数十人しか入れないような食堂なのだが、それでも空席が目立つ。


(ベンチャー企業の初めての説明会なんてこんなものか……。宣伝が足りなかったかな。でも、むちゃくちゃ人が来てるより、緊張せずにすむか……)


 少し落ち込むものの、今は割り切るしかない。後ろの方の席には様子を見に来たミオもいる。エリオは舞台袖というかなにかあったときにサポートしてくれるために近くに控えてくれている。エレノアは控え室というかちかくの部屋で出番を待っているところだ。


「本日は星屑工房の説明会に来ていただき、ありがとうございます」


 ユウトの言葉に投資家たちから一応拍手が上がる。前の世界と違って説明会のマニュアルのような本やサイトは見当たらなかったので、自分の言葉で話すしかない。

 とにかく、ユウトは星屑電池の可能性について話した。ところどころ詰まってしまうのはもう仕方ない。

 ミオも見ている。それが緊張の一因になってもいたが、見守っていてくれると心強くもあった。

 もちろん、ホームページにも説明はあったのだが直接聞いている人たちはユウトがなにか言う度にざわめいていた。やはり、魔力電池以外のエネルギー源が出てくるということがこの世界の人には信じられないようだ。別の世界からやってきたユウトの方から見ると魔力電池の方が不思議なものなのだが、この世界の人からすると逆らしい。

 本当にそんなことができるのか? などと呟いている人もいれば、訝しげに首をひねっている人もいる。

 気になって説明会には来てみたものの半信半疑の人が多いようだ。わかってもらえないのは悔しい。それでも、ここに来てくれた人たちは、少しは信じて投資しようかと悩んでいる人たちに違いないと、ユウトは思うことにした。それくらいの思考でいかないとやっていられない。


「それでは、実際に見ていただきます」


 ユウトがちらりとエリオに目配せする。すると、エリオがエレノアを呼びにいった。


(説明でわからないなら、見てもらうまでだ! 俺も、最初に爆発したときびっくりしたしな……)


 満を持して、準備してあった実験道具を持ったエレノアが現れたのだった。エレノアの登場にざわり、と会場がざわめく。


「!?」


 その姿を知っているはずのユウトすら、声を上げそうになった。


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