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異世界投資家~異世界転移した引きこもり投資家は、ファンタジー世界でも株を続けます~  作者: 青樹空良


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37 星屑工房設立

「資本金と、事業内容を書いた書類は用意した。これでいいよな?」


 ユウトは学校に行く前のように、手に持っているものをチェックする。これから商会に行って手続きをする予定だ。


「おいらも確認する!」


 ユウトはようやく完成した事業内容を、エリオに渡した。


「ふんふん。新しいエネルギー源を開発。ねえ、魔魂石にとって代わるとかは書かなくていいの?」

「確かにそれはエレノアさんが言っていたけど、今みんなが使ってるエネルギーを否定するようなことを書くのはちょっとな。でも、ちゃんと伝わるようには書いてあるだろ? これまでにない新しいエネルギーで、しかも魔法を使わない。原料はまだふんだんにある、と」

「うんうん。本当だね」


(本当は思いっきりヴァルクロウ商会を罵るようなこと書きたいけどな!? すっげーエネルギーだから世界がひっくり返るとかめちゃくちゃ書きたかったけどな! 俺たちはすごいことをしようとしてるからな!! 魔魂石が枯渇してきてるから代替エネルギーが必要とか、書きたいけどな! でも、そこまで事業内容に書くわけにいかないしな……。むっちゃ書きたいけど……! それはきっとどこかでわかる日が来るはずなんだ……! この事業が成功すればだけど!)


 心の中では様々な思いが浮かんでくるユウトだが、そこは大人にならなくてはいけない。これは子どもの喧嘩ではない。ユウト以外の人たちの運命も掛かっている。


「で、まずはユウト兄とおいらだけが株を持つってことなんだよね」

「そうだな。何をしているかわからないような会社に出資してくれる人はいないからな。まずは会社を立ち上げて、追加で資金が必要になったらきちんと星屑工房がなにをしている会社なのか説明をして株を買ってもらうって感じになるな」


 ユウトの言うことに、うんうんとエリオが頷く。


「でも、俺も知らなかったな。株を発行してもお金が入ってくるのは、株を発行したときだけなんて」

「ね、おいらも知らなかったよ。だって、株ってあんなに毎日上げ下げしてるのに、会社にお金が入ってこないっておかしくない?」

「ま、でもそういう仕組みなんだよな。確かに、上げ下げで会社に利益がある方がおかしいもんな。なにしろ、売買でお金を手に入れるのは投資家なんだから。ま、損するのも投資家なんだが……」


 自分で言っていてなんだかユウトは悲しくなってくる。これから会社を立ち上げるところではあるのだが、まだ投資家の目線は抜けない。


「まずは俺とエリオだけが株を持つことになるから、上げ下げもしないわけだが」

「そういうことになるんだね」


 株が動かないのは変な感じだが、とにかくまずはそれが一番いいようだと色々と調べてから決めた。そもそも、自分たちで株を買うのだからそのお金はそのまま会社の資金として使うことができる。まずは会社を立ち上げて、何をしているのか情報を発信して周知する。最初はそこからだ。




 ◇ ◇ ◇




 商会で会社を作るのは、本当に書類を提出して手数料を払うだけだった。どこの世界でも事務的な手続きなんてそんなものらしい。

 もっと事業内容のことなど突っ込んで聞かれたらどうしようかと思っていたユウトだったが、心配しなくてもよかったようでほっとした。正直、ユウトはエネルギーとなる星屑石のことはよくわからない。詳しく聞かせて欲しいと言われてもエレノアに聞いてくるしかない。

 それに、ユウトにはもう一つ不安に思っていることがあった。

 商会からサラの宿に戻る道すがら、ユウトとエリオはぽつぽつと会社のことについて話していた。


「もしかして、ヴァルクロウ商会の対抗会社になるってことで書類が受理されなかったらどうしようかと思ってたんだ。立ち上げられてよかった……」

「あ、そうか。そういう心配もあったんだね」


 エリオはそこまで心配していなかったのかケロリとした顔で言う。


「受付をしていた人も不思議そうな顔をしていたし、もしかして成功するとも考えられてないのかもな」

「えー、本当に出来るのにね」


 今度はエリオが不服そうな顔になる。その気持ちはユウトにもわからなくはない。だが、受付の人の気持ちもわかってしまう。


(まあ、そんな壮大な計画だけ立てているベンチャー企業なんて前にいた世界でも似たような扱いだったしな……。マジで失敗してるところも多いわけだし。でも、俺たちの星屑工房は違う!)


「俺だってそう思ってる。じゃなきゃ、せっかく増やしたお金をつぎ込んで会社を作ろうなんて思わないからな。エレノアさんなら絶対やってくれると思ってる」

「おいらもだよ! でもさ、本当にできたんだね、会社」

「だな。俺、社長なんだな……」

「おいら共同経営者ってことでいいんだよねっ!」

「そうだな」


 ユウトは頷いて、拳を握った。


「うん」


 そして、呟く。


「ここから、だよな」

「?」


 ユウトの呟きにエリオが首を傾げた。


「会社を作って終わりじゃないってことだ。株を買うだけとは違う。株を買うだけなら、取引だけで終わりだからな。でも、会社経営はこれからなんだ」


 エリオに言っているようで、自分に言い聞かせるようにユウトは口にした。


(開発は全く出来ないわけだが!)


 心の中で呟いて、それでも一歩を踏みだせたことには少し嬉しくなる。


「まずは、資本金も少しだけどあるってのはわかってもらえたわけだし、あとはエレノアさんに詳しい進捗状況を聞いてそれを発信していくことかな。俺たちがやろうと思っていることを理解してくれて出資してくれる人がいたら、エレノアさんが開発を成功し次第、増産を開始することが出来る。そうすれば、魔力電池がいらない世界が来るんだ」

「だね!」


 話しながら歩いている間に、ユウトたちは王都の中心から外れの方へとさしかかっていた。やはり、いつ見ても中心街から離れるにつれて家の中が暗くなっていくのは気になってしまう。


(星屑石を使ったエネルギーが普及すれば、この辺もきっと明るくなるんだよな……)


 そんな未来のことを、ユウトは思い描かずにはいられなかった。


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