婚約破棄をされて、変人大公に嫁入りしないかと言われて、「もう、ええちゅーねん!」と断った悪役令嬢の話
「カロリーナ!男爵令嬢エリナをいじめたな!婚約破棄をする!」
「ヒィ、それだけはお止め下さい!せめて、穏便に解消でお願い申し上げます!」
「ハハハ、今更すがってももう遅いぞ!」
ここはゲームの世界、孫が大好だったゲームの世界だ。
何故、極楽浄土じゃなくて、このゲームの世界に転生して、悪役令嬢になっているかは知らねー。ナンマンダーだ。
年齢は秘密だ。誰が何て言おうと、私はお嬢様だ!
このゲーム、王太子が婚約破棄をすると言うと・・・・・・
ピコン!
まず。王太子パートから始まる。天から音楽が流れる。
♩♩~~~
ああ、カロリーナはあれをしろこれをしろとうるさい~私よりも優秀だ。しかし~心がない~どーしよー♩
王太子はターンを決め。周りの令息令嬢たちがクルクル回って、横一列に並ぶ。
「国母に相応しい令嬢はどこ~?」
「癒やしを与える令嬢はどこ~?」
手をかざし探す仕草をする。
そこで、エリナにスポットライトが当たって、令息令嬢たちが退場する。
「ああ~~、可哀想な殿下ぁ~、私がいやして差し上げます~~」
手を取り。社交ダンスを始める。
そう、これは、山田企画というゲーム会社が作った『踊る婚約破棄』だ。
インド映画を意識したらしい。
馬鹿すぎて、良い馬鹿枠で少し話題になったゲームだ。
インド人から抗議がきた曰く付きのゲームだ。
曰く、インド人はもっと踊っていますよ!だ。
あ、ここから、私のターンよね。
メイドや従者と厚化粧の令嬢たちが集まる。
「そこのけ、そこのけ、カロリーナ様が歩く!」
「王太子殿下の婚約者様だ」
「カロリーナ様のお通りだい!」
周りの平民学生や下位学生たちは私達が通ると倒れる。
「あら~、ピンク髪の・・誰でしたっけ。パーティーの招待状は出さないわよ」
「ヒ、ヒドイ!」
出さねーよ。お前、他人だろう?
「そんな。身分で差別するなんて~、でも、エリナ負けない!」
負ける勝つの話ではないだろう。
私のターンの最後のシーンは、階段落としだ。
「あら、ごめんあそばせ!」
「キャアアアーーーー」
階段から落ちるシーンだが、この舞台だと、ただぶつかっただけだ。
ゆっくりクルクル回って、エリナは倒れる。
「ヒドイ、私、見た~」
「僕もみたー」
「メイドは見たー」
「カゲも見たー」
タタタタッタ~
タップダンスが始まって。王太子殿下とエリナの周りに集まり。
【さあ、断罪だぁ~~~~~】
とポーズをとる。従者とメイドが、バレリーナのように、両サイドでクルクル回っている。
30分、これでやっと終わりだ。ハア。
・・・・・・・・
私は断罪されて、屋敷に戻された。
部屋で謹慎だ。
修道院に行くことになった。
ああ、ナンマンダーとお経を唱えればいいかな。
ああ、楽だ。面倒な社交も、『オホホホホホー』もない。
これで、良かったのかもしれない。
そうだ。暇だから、太極拳をやろう。陳先生、お元気かな。
ユラ~~~リ、ユラ~~~リ。タン!と、大きな姿見を見て練習をする。
太極拳をやっていたら、
キラッ!
ナイフを持っている奴が現れた。
「誰!」
「カロリーナ!目覚めたか!雛が成長する前に、お命ちょうだい!」
「フン!シンイハー!」
「グギャー!」
おい、健康太極拳だが、何故か倒せた。
まさか、まだ、ゲーム?
そう言えば、悪役令嬢は退場して終わりじゃなかったのかよ。
あ、死ぬ前に、孫のクリスマスに、パート2を買う約束したっけ?
何でも、今度は格闘だとか?
これか!
「お嬢様!大変でございます!追っ手が来ています」
「ええ、ケリー、何を言っているの?暴漢よ。衛兵隊に連絡して」
「目覚めたか・・・」
「グスン、グスン、我が子よ」
「え、何、お父様、お母様、『目覚めたか』って、何?」
説明してくれた。衝撃な出生の秘密だ。
「ええ、お母様は大国ザルツ帝国の御姫様、何故、こんな小国の公爵家に?」
「恋に落ちましたの。お父様からは勘当されましたわ」
「襲ったのは、帝国の第二皇子派のカゲです。貴女はずっと監視されていましたの。
暴漢を撃退した動きは帝国の秘密武術、シュテーンファーストの一つの体当たりね。合計7つの必殺技が開眼したら、貴女は、帝国の正当な跡取りとして迎えられます」
「え、意味が分かりません」
「さあ、行きなさい!貴女にこの国は狭すぎるわ」
「グスン、行くんだ」
「お嬢様、ご一緒します」
流れのままに、屋敷を出た。ケリー、こいつ、給料はどうなるのだ?
「お屋敷から支給されます」
「あ、そう、良かったわね」(棒読み)
旅の途中。トカゲ人間に絡まれた。
「お前は俺のつがいだ!」
「種族違うだろ!秘技!カーフキック!」
「グギャー!」
なんやら、竜人王国の王子だったらしい。知らんがな。
「キャアー、お嬢様助けて~~」
「だから言ったでしょう。怪しいって!」
パターンとしてはケリーがドジをこいて、私が助ける。
それを繰り返していたら、必殺技とやらが開眼していく。
これ、乙女ゲームだろ?
王国に帰った。
格闘技大会が開かれるからだ。必殺技はまだ、5つだ。
☆コロシアム
ワーワーワーワー!
【決勝戦です!】
【東ィイイイイイ、さすらいの冒険者!カロリーナ!】
【西シィイイー、コルド王国王太子!ロンバル~~~!】
「殿下ぁ~~~頑張って!」
「フ、カロリーナ、闇落ちしたか?だが、負けない」
負けたいよ。でも、こいつを倒さなければ、ゲームは終わらない。
シュン!シュン!
【おおお~と、王太子殿下優勢です。ジャブです】
「フフフフ、お前の必殺技は大技ばかりだ。しかし、基本をおそろかにしていないか?民は国の基本だ」
「フフフ、あんた。いい王様になるね」
「そうだ。民こそ大事!」
「秘技!首相撲!」
ガシッと王太子の首の後ろを両手で組んだ。ピカッ!と目が光りやがる。これで、必殺技は6か。
「ほお、考えたな。これなら、ジャブは撃てないが、お前も何も出来ないぞ」
ピカッ!
また、目が光った。
「天を突き刺す!膝蹴り!」
「な、何だと!グハッ!」
これで、7つか・・・終わった。
・・・・・
ワーワーワーワー!
【勝者!カロリーナ!】
「うむ、良い勝負だった」
「そうね。カロリーナ、ロンバルは廃嫡ね。エリナは修道院に直行よ」
「陛下、王妃殿下」
何故、そうなる。
「意味が分かりません。廃嫡と修道院はやめて下さい。私は王太子を倒せれば良いのです。これでおしまいです」
そうだ。ゲームは終わりだ。その時、天をつく大男が、コロシアム会場に飛んできた。
ズドーン!
「フム、愉快だ。7つの必殺技が開眼したか・・」
「「皇帝陛下」」
「言って頂ければ歓待をしましたのに」
「よい。お忍びだ。小国の格闘技大会だが堪能した。カロリーナを帝国に迎える。第1皇子の嫁にしてやろう」
天をつく大男だ。ヒゲモジャモジャだ。観客席にいたらしい。
何故、気がつかれないかは知らねー
「ふざけないで下さい!勝手に!」
「なら、この国に侵攻する」
もう、嫌だ。運命をゲームのシナリオに委ねるなんて。
「鶴の構え!」
私は片足を上げて、両手は平行に構えた。まるで、鶴が飛び立つ前の姿だ。
「ここでお前を倒せば、侵攻できまい」
皇帝は。
「フン、天地盤石の構え!」
ゴオオオオオオオーーーーーー!
皇帝は右手を上に、左手を下に構えた。スキがない。
奴の闘気の音が聞こえる。
「おい・・おい、カロリーナ、一回戦えば戦友だ。俺も戦うぜ」
キラリ!
「わ、私も聖魔法で戦うんだからね!」
王太子とエリナが私の横に並ぶ。エリナ、いつの間に聖女になったのだ?
「ほお、我の闘気に怖じけぬとは、良い若者たちだ」
「はあ、逃げ出したいね。でも、悪役令嬢は『媚びぬ!引かぬ!省みず!』それが悪役令嬢の辛いところだね」
【ア~ハハハハハハハ、それで良い!また、会おうぞ!もう、貴様に手は出させぬ。侵攻はやめだ!】
皇帝は構えを解いて、シュパン!と空を飛んだ。
もう、いい。
「「「カロリーナ!」」」
何か、王国の危機は過ぎたらしい。まあ、知らんけど。
表彰され。罪は許されたらしい。
私は屋敷に戻って、ぐうたら過ごしている。
「おう、カロリーナ!」
「カロリーナぁ~」
「はい、はい、ケリーお茶を用意して」
「はい」
王太子とエリナが良く訪ねて来る。
「実は、カロリーナの嫁入り先だが・・・」
「ほほー、あるのかい?」
「私の伯父上だ。変人大公とあだ名されていて、君なら何とか出来るのではないか?」
【もう、ええちゅーねん!】
さすがに、これは断った。
ゲームのパート3があるかもしれないからだ。
最後までお読み頂き有難うございました。