ある裁判官が被告人に話してた内容の話
よもや、裁判の傍聴が一種の趣味になってしまっている。
裁判所の常連になってしまって、警備の人と顔見知りになって雑談するくらいになってしまった。
「お久しぶりですね」
とか、警備の人から声かけられる始末。
結構恥ずかしい。
帰りが17:00ぎりぎり(裁判所の閉館時間が17:00)になったときは
「206(号法廷)ですか?」
「そうです。民事が白熱してていつもニコニコしてる優しい裁判官がブチ切れてましたよ~」
「草」
とか話したり。(流石に警備の人「草」とは言ってないけど)
そりゃね、口にピアスしててタトゥー入れてる私みたいな場違いなのが常連だったら覚えるでしょうね。
その日の裁判の内容によって傍聴人の数は違うけど、特に何もなくても裁判所で17:00ぎりぎりまで時間潰してるので覚えるでしょうね。
しょうがないじゃん。
出先で毎回毎回ホテル泊ってたら旅費がえげつないから寝泊まりはネカフェ難民してるんだから。
12時間パックで朝丁度いい時間になるまで時間潰さないといけないんだもん。
そうすると裁判所を17:00ぎりぎりに出るのが丁度いいんだもん。
裁判所は静かだし、座れる椅子もあるし、空調もきいてるし、人も少ないし絶好の時間つぶし場所なんだもん。
まぁ、時間潰すのに裁判所使ってるけど結構興味深いんだこれが。
お金が腐る程あったら東京の永田町に住みたいと思っている。
最高裁判所、国会議事堂……絶対毎日楽しいに決まってる。
国会議事堂のヤジ飛ばし聞きに行きたいけど、そのために東京行くのは面倒だから行ってない。
そんなことはどうでもよくて。
ある裁判を傍聴してたときに裁判官が被告人に言っていた事がかなり印象的だったからその話をしたい。
罪名はなんだったっけな、被告人が全く印象に残ってないから覚えてないけど、多分窃盗とか覚醒剤とかそんなんだった気がする。
普通、裁判長が被告人に判決を言い渡すのって淡々と終わるんだけど、その裁判長だけ違った。
優しく被告人を諭してた。
5分~10分くらい諭してたけど、全部は覚えてないので要点だけ。
「貴方は罪を犯したからその罰を受けなければなりませんが、まだ若いですしこれからやり直していくことはできます。もし今度同じようなことになったら周りの人を頼ってみてください。貴方を助けてくれる人は周りにいるはずです」
的な事を裁判長が優しく言ってて、私はその言葉を聞いていて自然に涙が出た。
ツー……って。本当に泣いたんだよ。
そんなわけないじゃんって。
裁判長、貴方の周りの人間の層と、その被告人の周りの人間の層っていうのは全然違うんですよって。
貴方がもしその被告人と同じような境遇になったときには、貴方は助けてくれる人がいるかもしれないけど、誰だって周りの誰かが助けてくれる訳じゃないんですよって。
だから被告人という存在はいなくならないんですよって。
その裁判長は物凄く親身に被告人にそう言っていたし、裁判長の言いたいことは分かるよ。
でも、誰だって同じ境遇でも同じ考えでも同じ知能でもない。
裁判長からしたら「周りを頼ればいい」って簡単に言うけど、追い詰められてる人はそんなこと思いつかないし、思いついて実行してても周りにも見放されてることもあるし、裁判長の知能指数と被告人の知能指数は全然違う。
これほど格差のある事を優しく言う裁判官の言葉を聞いていて、私は心の底から悲しかったよ。
こんなに裁判官と被告人との認識の間に深い溝があるんだって。
立場がね、全然違うのよ。
「パンがなければケーキを食べればいいじゃない?」
って感じに聞こえるのよ。
私は見放されてる人たちを何人も見てきた。
裁判所でもそうだし、ネット見ててもそうだし、現実で外歩いてるときですら視界に入ってくる。
頼れる人なんて具体的にどこにいるんですかって私も聞きたい。
家族・親族と仲悪い人もいるし、近所付き合いしてない人もいるし(私もそう)、友達・恋人がいない人もいるし、周りに誰もいない人は誰に頼ればいいのか教えてほしい。
元ヤクザの人と話してた時に、本当に周りが悪い人ばっかりで元ヤクザだから市役所行っても対応してもらえないとか、周りの人間のせいで仕事も何もかも失ったって話を聞いたことがある。
でも、私は別にお金を貸すでもないし、何もしなかった。
そこで施しを与える程優しい人間ばかりじゃない。
私みたいに冷たい人間の方が多いと私は思ってる。
それに、金が絡むと周りに嫌われるしね。
そうするとますます周りの人は離れていくじゃん。
かといって行政に頼っても必ず助けてくれる訳じゃないじゃん。
それでどうにもなくなって窃盗とかしちゃうじゃん。
裁判長の前に座ってるその人は多分そういう人だよ。って凄い思って聞いてた。
子供をひっそり生んでそのまま殺す親もいるけど、全く関係ない周りがネットで「あぁすればよかった」とか「こうすればよかった」とか言っても、本人の知識とか知能の問題もあるし、そんな簡単なことじゃないと思うのよね。
どんなに社会が取りこぼさないようにしようとしても、取りこぼされる人って必ずいるのよ。
それが裁判長の前に座ってるその人ですよって。
なーんてね、思ったことがあるって話。
私は別にその裁判長のこと嫌いとかじゃないし、真っ当な事言ってると思って真剣に聞いてたけど、その被告人に響いたかどうかは分からない。
被告人の名前も裁判長の名前も顔も覚えてないけどね。
私にはしっかり響いたよ! さいばんちょ!




