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第29話

「六ちゃん、聞いたわよぉ。もうすっかり名ドライバーとして立派にやってるみたいじゃない」

「はは……だといいんだけどね。……てか、最初から芸能事務所のドライバーの仕事だって教えてくれてたら良かったのに」

「んふふ、ビックリしたでしょ?」

「ひっくり返りそうになったよ。まあ、お蔭で助かったけどね」

「聞いてると思うけど、あの子――篝は私が高校時代から可愛がってた後輩でね。その頃からアイドルが好きで、いつか事務所を持ちたいって話してたのよ。そんで一年くらい前にね、たまたまショッピング先で会ってビックリ。だって本当にアイドル事務所の社長をやってるっていうんだもの」


 そこから話が弾んで、まだ小さい事務所で所属人数も心許ないが、いつかはスケジュールが真っ黒になるくらい大手になると社長は豪語していたらしい。


「そんでね、つい最近かな。雇っていたドライバーに空きができて、結構送迎に困ってるって話を聞いたの。六ちゃんってば免許持ってるし、ちょうどいいかもって推薦したってわけ」


 なるほど。そういう流れがあったのか。


「篝も喜んでいるわよ。良い子が入ってくれて嬉しいって」


 それはそれは。評価されるのは悪くない気分だ。


「けどまあ、ちょっと渋ってた面もあったかな。何でも、前のドライバーさんとアイドルとの間に問題があったらしくてね」

「問題?」

「詳しくは聞いてないけど、篝は所属アイドルたちが六ちゃんのことを認めてくれるかどうか不安だってしきりに言ってたわね。何か聞いてる?」

「いや……過去に何かあったんだなってことは何となく察してるだけで、俺も分からない」

「そっか……まあでも、ちゃんと認められて仕事ができてるなら問題ないか」

「うん、心配してくれてありがとね。…………ところで、いつまで睨んでるつもりだ、鈴音?」


 まるで躾のなっていない子犬のような感じで、「ガルルゥ」と唸り声が聞こえてきそうな顔をしている我が妹。


「あーらら、この子ってば、六ちゃんがドライバーをしてるのが気に入らないみたいなのよ」

「え? そうなの? ……何で?」

「べ、別に……ドライバーが気に入らないとかじゃないし……」

「じゃあ何が気に入らないんだ?」


 ハッキリ言って心当たりがない。


「ヤキモチよ、ヤ・キ・モ・チ」

「ちょっ、キーちゃん! 違うからっ!」

「六ちゃんがアイドルの子たちの送迎をしているのが嫌なのよ~」

「だからちゃうって言うとるやんかぁぁぁ!」


 叔母が出した言葉を、真っ赤な顔で必死になって否定する。関西弁が出ているということは、明らかに動揺している証だ。


 ただ、俺もまた叔母の言った意味が分からない。


「ヤキモチ? 何で鈴音がヤキモチを焼くんだ? ……! もしかして鈴音……お前……」

「え、お兄ちゃん……?」

「お前――――そんなにアイドルが好きなのか?」

「「…………は?」」


 何故か鈴音だけではなく、叔母までもポカンとした。


「え? 違うのか? アイドルが大好きだから、そんなアイドルに近づく俺に嫉妬して怒ってるんだろ?」


 すると、ゆっくりと顔を俯かせた鈴音が、身体を小刻みに振るわせ始めた。


「…………お…………………お兄ちゃんのアホたれぇぇぇっ、オタンコナスゥゥゥッ!」


 涙目で叫びながらリビングから猛スピードで駆け出して行った。


「あ、あれぇ……?」

「…………はぁ。六ちゃんってば、相変わらず乙女心が分かってないのねぇ」


 叔母もまた、俺を呆れたように見つめていた。





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