彼女の味方
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「はよーっす!」
次の日の朝、俺はタイムリープする前のように明るく振舞いながら教室の中に入ると。
「あ! かっちゃんおはよ!」
「おう!」
早速いつものように優奈が元気に声を掛けてきた。
「もー! かっちゃんも昨日来ればよかったのにー!」
「はは、悪い」
俺は適当に相槌を打つと、自分の席にカバンを置く。
「ホント、“滝川”さんは明るくてすごく優しいし、“益村”くんもみんなをグイグイ引っ張ってく感じで、絶対にかっちゃんと仲良くなれると思うのにー!」
などと優奈は言ってるが、タイムリープする前から俺はその二人と仲良くないからな?
つか、基本的にそういうカースト上位にいるような連中は、俺の肌には合わんのだ。
それに……四条をイジメるような連中と、仲良くなれる訳ないだろ。
「星崎さんおはよ!」
「あ! 滝川さんおはよ!」
すると、登校してきた滝川アリサが、優奈と笑顔でハイタッチを交わした。
この滝川アリサ、栗色のゆるふわツインテで少しギャル入ってるけど、容姿はクラスでも優奈と並んでかなり上位に入る。
それに、ブラウスの胸元が少しはだけているなど、かなりきわどかったりするので、男子の人気もかなり高い。
ま、俺の趣味じゃないし、ギャルならアルルにいる“先輩”という容姿も性格も圧倒的に上位互換な人がいるから、何一つ惹かれたりはしないけど。
「ふうん……」
で、なんで滝川の奴は俺をジロジロと眺めてやがんだ?
「あ、ウチは“滝川アリサ”。倉本くんは昨日来てなかったよね?」
「お、おう……」
コイツ、勝手に自己紹介始めやがったし。
「……ま、がんばんなよ?」
「あ! も、もう!」
優奈の肩をポン、と叩いてそう言うと、滝川は席に戻って行った。
で、優奈よ。お前はなんでそんなに顔を真っ赤にしてるんだ?
それよりも……四条の奴、まだ来ないな……。
俺は両手で顔を押さえながらわたわたしてる優奈を無視しながら、教室の入口をジッと眺める。
そして。
「おはよう!」
何だよ! 四条じゃなくて益村の奴かよ! 空気読めよ!
などと心の中で悪態を吐いていると、益村の奴は席にカバンを置いた後、まっすぐ優奈のところにやってきた?
「やあ星崎さん、おはよう!」
「あ、益村くん、おはよ!」
爽やかな笑顔を振りまきながら優奈に挨拶すると、優奈もニコリ、と微笑みを返した。
でも、さすがに益村とはハイタッチしないらしい。
「えーと……?」
で、益村の奴め。今度は俺のことをジロジロと値踏みするような視線を向けてきやがった。
「あ、こちらが昨日話してた“倉本数馬”、かっちゃんだよ!」
優奈が嬉しそうに俺を紹介するが、俺は別に仲良くするつもりはないんだけど。
つか、タイムリープ前なんて会話すらしたことないし。
「ふうん……ま、よろしく」
そう言うと、益村の奴が右手を差し出す。握手のつもりか?
俺が握手しようかどうか躊躇していると、教室が一瞬ざわつく。
それに気づいた瞬間、俺は教室の入口へと振り返ると……
「…………………………フン」
四条が教室に入ってきた。
ただ、四条はこの教室の空気が気に入らないのか、鼻を鳴らしてまるで無視するかのように自分の席……つまり、俺の席の隣へと向かってくる。
じゃ……早速。
「おっす、四条!」
「……倉本さん」
俺は手を差し出したままの益村を無視し、立ち上がって四条に声を掛ける。
四条はといえば、俺のそんな態度に戸惑う……っつーか、少し迷惑そうにした。
「なあなあ、昨日のカラオケ楽しかったな!」
「「「「「っ!?」」」」」
俺の言葉に、四条だけでなく傍にいる優奈や益村、クラスの連中のほとんどが息を飲んだ。
ま、親睦カラオケを蹴って、当てつけのように四条とカラオケ行ったんだ。他の連中からしたら気分悪いだろーなー。知らんけど。
「あなた……何を考えてますの?」
「何って? 俺は昨日楽しかったって言っただけだろ?」
「そ、そうですけど!」
ジト目で見る四条にそう返すと、何故か彼女は困ったような表情で目を伏せた。
つか、四条の奴、何だか歯切れが悪いなあ。
「何だよ、四条は楽しくなかったの?」
「そ、そんなこと……ないですけど……」
四条はチラリ、と俺を見た後、周りを一瞥してからまた下を向く。
あー……四条はそんなこと気にしなくていいのに。
「だったらいいじゃん! また近いうちに一緒に行こうぜ!」
「え!? あ、あの……」
「何? ひょっとしてイヤ?」
「あうう……そうじゃなくて、その……あ、あなたは、いいんですの……?」
ホラやっぱり。
俺が四条と一緒にいたりすると俺にまで矛先が向くんじゃないかって、そんな心配してやがる。
本当に、四条は……。
「俺? そんなの当然だろ! 何つってもお前といて楽しかったし、それに」
「……それに?」
「昨日のリベンジ、キッチリしないとな!」
「あ……ふふ……」
お、四条の奴、やっと笑いやがった。
うん……四条は笑ったほうが絶対可愛いよな。
その時。
——キーンコーン。
「お、朝のHRの時間だな」
「ふふ、そうね」
俺と四条は笑顔で席に着く。
だけど……おーおー、気に入らなさそうな顔しながら俺達を睨んでる奴がチラホラいるなあ。
当然、その中には滝川と益村の姿も。
なんでコイツ等がそこまで四条のこと嫌ってるのか分からねえけど……今ので理解しただろ?
——俺は、四条の味方だってことが。
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次回は明日の夜更新!
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