表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/38

桐華と優奈

ご覧いただき、ありがとうございます!

「あ……」


 駅前には、益村とにこやかに話す優奈の姿があった。


 そして。


「「あっ!」」


 俺と桐華は、思わず声を上げた。

 何故なら……今まさに、優奈と益村はキスをしたんだから。


 はあ……決定的、だな。


「で、どうしますの?」

「決まってる。あの二人のところに行くぞ」


 真剣な表情で問い掛ける桐華に俺は語気を強めてそう答えると、桐華は力強く頷いた。


 で、二人が別れて益村が優奈から離れようとしたところで。


「よう、優奈」

「っ!? か、かっちゃん!?」


 声を掛けると、優奈は俺を見て驚きの声を上げた。

 その表情は、明らかに顔面蒼白になりながら。


「ふふ、益村さん。ごきげんよう」

「…………………………」


 桐華は桐華で、益村に含み笑いをしながら声を掛けると、益村は苦虫を噛み潰したような表情で視線を背けた。


「それで……二人って、付き合ってんの?」

「え!? そ、それは……」


 優奈は口籠もると、益村をチラリ、と見た。

 だが。


「いや? 別に俺達は付き合ってないさ。なあ、星崎さん」

「っ!? …………………………うん」


 吐き捨てるように言った益村の言葉に、優奈は目を見開いた後、俯きながら返事をした。


「は? 何だよそれ。こんな駅前で堂々とキスしときながら?」

「ヤレヤレ……たかがキスくらいで。倉本は子ども以下だな。じゃ、俺はもう帰るから」


 挑発するように肩を竦めながらそう言うと、踵を返して駅の改札へと向かおうとする。


 すると。


「ふふ……ですが私は、付き合ってもいないのに軽々しくキスをするような男、キライですの」

「っ! …………………………チッ!」


 口の端を持ち上げながら桐華が告げると、益村は舌打ちをして改札の向こうに消えていった。


「え、ええと、桐華……?」

「あ、ふふ……実は、益村さんからは一年生の頃から何度か告白されてるんです」

「そ、そうなの?」

「ええ。その度に、私には心に決めた人がいると、伝えたんですが……」


 そう言うと、桐華は口元を緩めながら俺を見た。

 うう、正直嬉しい。


 そしてそんな桐華に、優奈は射殺すような視線を送っていた。


「……なあ優奈。益村の奴はああ言ってたけど、お前の気持ちはどうなんだ? 俺としては、お前が本当にアイツのことが好きで、付き合うってんなら何も言うつもりはねー」

「…………………………」

「ただ……アイツに騙されて、嫌なことされてるってんなら、俺は幼馴染としてお前を助けてやりたいんだ」

「っ! 何よそれ!」


 俺の言葉を聞き、それまで無言だった優奈が怒りの表情を見せた。


「いっつもいっつも、口を開けば幼馴染、幼馴染って! かっちゃんにとって、アタシはいつだってただの幼馴染! それ以上になんてなれないんだ!」

「優奈……」

「アタシは! 幼馴染はイヤなの! もっと違う存在になりたいの! なのに……なのに、かっちゃんはいつだって私を幼馴染としか見てくれない!」


 フー! フー! と息を荒げ、優奈は俺を睨みつける。


「……それに対する答えが、さっきの益村とのキスなのか?」

「益村くんはちゃんとアタシを見てくれた! 一年の時、かっちゃんのことで学校の中庭で悩んでたアタシに優しく声を掛けてくれて、親身に相談に乗ってくれて!」


 すると……優奈の瞳からぽろぽろと涙が零れ出す。


「かっちゃん……かっちゃんは優しいよ? でも、それって……アタシにとって残酷すぎるよ……っ!」

「そうか……」


 泣き崩れる優奈に、俺は短くそう答えた。

 だけど。


「……だからって、優奈が桐華をイジメる理由にはならねーだろ……」

「ヒック………………ぐす………………」


 俺の言葉を聞いても、優奈は泣くばかりでなんの反応もしない。


「優奈さん」


 桐華が優奈の前に立つと。


「優奈さんは、結局のところ、あの益村さんが好きなのか、それとも数馬くんが好きなのか」


 そう、尋ねた。


「…………………………は?」


 優奈は突然泣き止み、立ち上がって鬼の形相で桐華を睨んだ。


「何言ってんの! アンタが……アンタがかっちゃんの優しさにつけ込んで色目使って、かっちゃんをたぶらかしたくせに! この泥棒猫! 死ね! 死んじまえ!」


 今まで聞いたことがないような優奈の罵詈雑言の数々。

 それに、桐華はただ黙って耳を傾けていた。


 そして。


「優奈さん……別にあなたが、この私を殺したいほど憎んでいただいても構いません。ですが」


 桐華はすう、と息を吸うと。


「数馬くんだけは、絶対に譲らない」

「っ!?」

「数馬くん……もう、行きましょう」

「あ、ああ……」


 ニコリ、と微笑む桐華に手を引かれると、俺は呆然とする優奈を置き去りにしたまま、その場を離れた。

お読みいただき、ありがとうございました!


そして、次回は申し訳ありませんが、来週月曜日の夜に更新します!


また、新作のローファンタジー小説も絶賛連載中!


「ガイスト×レブナント~エゴサした結果、ここがゲームの世界で自分が主人公にあっさり倒されるクソザコモブだと知った俺は、偶然見つけた『攻略まとめサイト』を駆使して強くなって、主人公達を見返してやる!~」


下のタグから行けますので、ぜひ!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 続きはもう書かないのかな? 活動報告でも全く触れないですね。 クライマックスが近いのなら是非完結させて下さい。
[良い点] 無し [気になる点] 女性が不幸になるのは見てて辛い。 [一言] 主人公が桐華さんの気持ちに気付かなかったのが原因の一つで桐華さんは亡くなった。 主人公が優奈さんの気持ちに気付かなかったの…
[一言] 結局自分を愛してくれて許容範囲の男なら誰でも良いんじゃん だから主人公ではなくヤリチンに処女捧げたんだろし こんな便女はさっさと物語から退場させてメインヒロインと純愛してくれ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ