運命
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さて、これからどうするかな。
正直、君島と滝川からは『何もするな』と言われてしまった……。
つか、俺としては優奈のために何とかしてやりたいって気持ちが強いんだけど……。
『アンタが絡むと余計こじれるし!』
と、滝川が頑なに拒否するのだ。
そして君島も、その意見に賛成みたいで。
「ウーン……ま、俺もあの二人を信頼して頼んだんだ。なら、俺は待つしかない、か……」
とはいえ、ただ待ってるのもなー……って。
「そ、そうだよ! 明後日の日曜日、四条が家に来るんだった!」
ヤベエ、来る約束だけして、何も考えてなかった……つか、優奈の件ですっかり忘れてた……。
「と、とにかく明日は、バイトが終わり次第部屋の片づけと、飲み物と菓子の準備と、それと……それと……あああああ! なんでよりによって明日バイトなんて入ってんだよおおおおお!」
俺は金曜夜の自分の部屋で、頭を抱えて絶叫した。
……あ、その後佳代に超怒られたけど。
◇
「よ、よう」
日曜日の朝、俺は関町駅で待ち合わせをしていた四条を迎えに来ていた。
つか、待ち合わせって十一時の筈だよな?
だったら……。
「ふふ……おはようございます!」
「お、おお……おはよう……」
なんで四条は、まだ十時なのに既に駅にいるんだよ……。
「? どうしたんですの?」
キョトンとしながら、四条が不思議そうに尋ねる。
や、早く来てるのもさることながら、その……スマン、見惚れてた。
だって今日の四条、この前の遊園地の時とは打って変わって、白のブラウスにデニムのロングスカート、茶色のローファーに麦わら帽子……うん、マジ好み。
「い、いや、何でもない……そ、それより行こうか」
「ふふ……はい!」
くそう……四条が可愛すぎてまともに見れない……といいつつ、さっきからチラチラと見てるんだけどな……って。
チラリ。
あ、四条と目が合った。
「~~~~~~~~~~!」
すると四条は、少し恥ずかしそうにして俯いてしまった。
これは……うん、まあそういうことだよな。
はは……一応両片想いってことだけど、俺は四条が好きなこと知ってるからちょっと違うか。
それに、あの観覧車で、ある意味告白めいたこともしてるし、な。
などと考えていると。
「ここが俺の家だ」
いつの間にか家に到着し、俺は四条を招き入れる、が。
つか……四条、あんまり反応がない……。
普通、好きな男の家に来たら、恥ずかしがるか気合入るかじゃないのかなー……って、ラノベとかマンガのラブコメだとそんな感じなんだけど。
ま、まあいいや。
「そ、それじゃ中へ……「あー! いらっしゃい!」」
ドアを開けて中に入った瞬間、母さんが既に玄関で待ち構えていた……。
「あ、そ、その! “四条桐華”です!」
すると、四条は母さんに向かって深々と頭を下げた。
「ええと……四条、“桐華”……って、ひょっとして……?」
「お……お久しぶり、です……」
へ? ええと……母さんと四条、面識なんて……?
「キャアアアアアアアン! ホンットに久しぶりね! こんなに大きくなっちゃって!」
「は、はい……」
「そ、そのー……母さん? 四条? 二人って知り合いなの……?」
俺はこの状況についていけていないながらも、とりあえず二人に尋ねてみる。
「何言ってるの? アンタ、知ってて仲良くしてるんじゃないの?」
俺の問い掛けに、母さんがキョトンとしている……。
や、むしろ俺がキョトンとしたいんだけど。
「ええとー……し、四条、教えてくんない……?」
「あ……ふふ、倉本さんが分からないのは仕方ないですから……」
「なーに言ってるの! ていうか、桐華ちゃんもあの時みたいに“数馬くん”って呼んであげればいいのに!」
「へ? “数馬くん”?」
えーと、俺、四条に“数馬くん”だなんて呼ばれたことないんだけど?
「まだ分からない?」
母さんが残念なものを見るような表情で俺に尋ねる。
でも、分かんねーモンは分かんねーよ!
「はあ……彼女は桐華ちゃん。アンタが小学生の時に迷子だった彼女を連れてきたんでしょーが!」
「え……?」
俺が小学生の時に連れてきた? ……って!?
「なあ……ひょ、ひょっとしてそのー……四条って、“木戸”、なのか……?」
俺の問い掛けに、四条は頬を赤くしながらゆっくりと頷いた。
「ええええええええええええええ!?」
俺は思わず絶叫する。
ええ!? だって、名字違うじゃん! “木戸”じゃないじゃん! “四条”じゃん!
「そ、そのー……あの後すぐ、お母さんが再婚して、名字が木戸から“四条”に変わって……」
「そ、そう……」
まさか……あの時の女の子が、四条だったなんて……。
「いやー、まさかアンタが何も分かってなかったのに桐華ちゃんを連れてくるなんて……これも運命っていうものかもしれないねー」
そう言うと、母さんはカラカラと笑った。
でも。
「あう……」
母さんの言葉に、恥ずかしそうに俯く四条。
「運命……か」
俺はポツリ、とそう呟いた。
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次回は明日の夜更新!
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