表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/38

おそろいのスマホ

ご覧いただき、ありがとうございます

「コホン」


 咳払いが聞こえ、そちらへと顔を向けると……うん、優奈がメッチャ不機嫌そうにしてる。


「かっちゃん、ここって教室なんだけど?」

「お、おう、そうだな……」


 ううむ……名残惜しいが、ここは離れるしかあるまい。


「し、四条……四条?」

「あうあうあうあうあうあう……!」


 俺は四条の背中をポンポン、と叩いて合図するが、四条の様子がおかしい。

 見ると……おおう、耳まで真っ赤だ。


 仕方ないので、俺は四条の肩をつかんでそっと離れた。

 だけど。


「えーと……四条、さん?」

「……倉本さんが、いけないんです……」


 そう言って、四条は俺の制服をつまんで離さなかった。

 ウーン、四条ってこんなキャラだったっけ?


「ハイハイ! もうすぐ朝のチャイムもなるから離れて!」


 優奈が俺達の間に割り込んで、無理やり引き剥がした。


「全く……かっちゃんが悪いんだからね!」

「はあ!? 俺のせいかよ!」


 優奈に理不尽なことを言われ、俺は思わず叫んだ。

 や、四条は自発的に俺の胸に飛び込んできたのであって、俺は何一つ悪い要素はないだろ。


「フン!」


 だけど優奈は、俺の話を一切聞く気はないらしい。

 盛大に鼻を鳴らすと、自分の席へと戻って行った。


「アハハー……まあ、倉本クンもちゃんとフォローしておきなよ?」


 そう言って、滝川が俺の脇腹を肘でぐりぐりしてきやがった。大きなお世話だ。

 でも。


「滝川さん、サンキューな」

「ハイハイ、それは昨日君島クンから聞いたし」

「そうか、なら滝川さんから君島に伝えおいてくれ。俺が感謝してたってな」

「オッケー!」


 滝川はウインクしながらサムズアップすると、こちらも自分の席へと戻った。


 ……で、俺は四条からチラチラと見られてるんですが。

 更には、窓際の席にいる益村からも。や、オマエは見るな。


 ◇


 ――キーンコーン。


 放課後になり、俺は帰り支度を始めると。


「あ、あの……倉本さんは、今日もアルバイト、ですか……?」


 四条が頬を少し赤くしながら尋ねてきた。


「あー……今日はバイト入ってないんだ。ちょっと用事があってな」

「そ、そうですか……」


 すると、四条はあからさまにシュン、と肩を落とした。


「はは、明日はバイトあるから、その時はまたアイスティー差し入れるよ」

「! は、はい!」


 うんうん、俺がそう言うと、打って変わって四条の表情が明るくなった。

 でも、こうやって好きな人と次の約束があると嬉しいよな。もちろん、俺も嬉しい。


 てことで。


「んじゃ、四条。また明日な」

「はい! また明日!」


 俺は四条と別れて教室を出ると、真っ直ぐ警察へと向かう。

 まあ、友坂に壊されたスマホについて被害届を出すためだ。


 さすがに壊れたスマホを母さんに見られたら、まず間違いなく没収されちまうからな……。


 で、警察に来た俺は被害届を提出し、家に帰った。

 手続き自体は一時間近くかかり、結構面倒なもんだと思った。


「ただいまー」

「あ、おかえり」


 家に帰ると、珍しく母さんがいた。

 つか、タイミングがいいのか悪いのか知らんけど。


「母さん、実は……」


 黙っていてもしょうがないので、俺は先手を打って壊れたスマホを見せて事情を説明した。


「ふうん……女の子を助けるため、ねー」


 そう言うと、母さんは俺の顔を見てニヨニヨする。


「な、なんだよ」

「別にー? それで、その女の子ってどんな子なの? 一度連れてきなさいよ」

「はあ!? なな、何でだよ!」


 俺は母さんの思わぬ言葉にしどろもどろになる。

 つか、イジリ倒すことが目に見えてるのに、わざわざ連れてくるバカがどこにいんだよ。


「連れてこなかったら、スマホ没収」

「ヒデエ!?」


 チ、チクショウ! 横暴だ!

 でも……スマホ没収は痛いから、甘んじて受け入れよう。


 と、となると、四条に家に来てもらうように頼まなきゃいけないのと、今後連絡を取り合う必要もあるから、その……RINE交換、しないとなあ……。


「じゃあ、被害届も出したってことだし、明日にでもスマホ買いに行ってきたら?」

「マ、マジか!」

「ないと不便でしょ? ただ、お金を降ろさないといけないから、今週の土曜まで数馬が立て替えておいて」

「お、おう!」


 よし! 新機種だ!

 ムフフ、どれにしようかな……。


 ◇


 次の日の放課後。


「ふふ、倉本さん、行きますわよ!」

「お、おう」


 何故か張り切る四条が、俺の腕を引っ張る。

 実は、朝に四条にスマホを買いに行く話をすると。


『ふふ、でしたら私も一緒に行きますわ!』


 と、俺に付き合うことになったのだ。


 ……まあ、昨日の一件もあって四条なりに気を遣ってるんだろうけど、な。


 ということで。


「うーん……こちらの機種もなかなか良さそうですし、こちらも……」


 四条は俺なんかよりもよっぽど真剣に吟味していらっしゃる。

 や、俺は最新機種買うつもりだったから、まあいいんだけど……って、これ……。


 俺は、一台の機種が目に入る。

 色は、白、黒、シルバーがあった。


「し、四条、選んでくれてるところ悪いんだけど、何買うか決めたよ」

「そ、そうなんですの?」


 俺がそう告げると、四条はほんの少しガッカリした。そんなに選びたかったのかよ。

 ま、まあいいや。俺は目的のスマホを指差した。


「! これ……私のと同じ……」

「ああ、俺はシルバーにしようかなって」


 そう告げると、四条が頬を赤く染めた。


「ふふ……お揃い、ですわね……」

「はは、そうだな」


 俺も少し恥ずかしくなり、頭をガシガシと掻いた。


 そして、スマホ購入の手続きを済ませ、早速俺は前のスマホで使っていたアプリを次々とダウンロードする。

 ……壊れてなかったら同期するだけで楽だったんだけどな。


 で、俺はRINEのアプリをダウンロードした後、そのアプリを立ち上げると。


「な、なあ四条……その、俺、お前のRINEって知らないんだよなー……」


 俺は遠回しにそう告げると、意図を理解した四条が恥ずかしそうに俯いた。


「そ、それは不便ですわね……で、でしたら、この際ですし連絡用(・・・)として今のうちに交換しておきます?」

「お、おう、そうだな」


 そう言って俺はQRコードを表示させると、四条がカバンからスマホを取り出して読み取った。


「あ……ふふ……」


 スマホ画面を見て、四条が嬉しそうに微笑む。


 ――ピコン。


「お、来た……って」


 意外にも、四条のRINEのアイコンはサファイアエンジェルではなく、“リューズ”だった。


「ふふ……さあ、行きましょう」

「お、おお」


 俺達は、バイト先である駅前のワックへと向かった。


 なお、四条のIDを手に入れて、飛び上がりそうな程嬉しかったのは彼女には内緒だ。

お読みいただき、ありがとうございました!


次回は明日の夜更新!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] おそろのスマホ。IDもゲット。 なんというか。焼け太り? /w まあ、学校で起きる事も多くは刑事事件にできそうなものなんですよね。実際、学校なんか通さずに直接警察に問題にする、っていうのは…
[良い点] 四堂ちゃんが萌え萌えですね! [気になる点] 幼馴染ちゃんのエア感が、、、ちゃんとオチつくんですよね?w [一言] 萌パートも良いですが、益ぶーのざまぁが早く見たい!!
[良い点] ふふ… がかわいい [一言] 作者の幼馴染は不遇というのはもはやお約束の既定路線だから 益村とかいうのがギャフンといわされるところに期待してます
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ