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「かっちゃんおはよ!」
クラスの連中が次々と登校してくる中、幼馴染の優奈も元気に挨拶した。
「おう、おはよう」
「んー、ていうかかっちゃん、今日は早いねー」
「ん? ああ、ちょっとな」
俺はそう言って言葉を濁す。
まあ、朝の一件をわざわざ優奈に言う必要もないし、それに、もうすぐ分かることだからな。
すると。
「ふふ、おはようございます」
おっと、四条がにこやかな笑顔で挨拶してくれたぞ。
うん、やっぱり四条はそんな顔が一番だ。
それと……四条の表情は、始業式の時と比べて本当に柔らかくなった。
あの時は、無理に悪役令嬢然に振舞っている雰囲気が強かったけど、コッチが本当の四条、なんだろうな……。
もちろん、今の四条は最高に可愛いんだけど、な。
「? どうしました?」
「え? あ、ああいや、おはよう」
「?」
キョトンとする四条。
でも、朝の落書きを消してなかったら、四条はまたあんなつらい表情を見せていたんだろうな。
まあ、それももう永遠にさせないけど。
「おはよー♪」
今度はゴキゲンな様子で滝川が教室に入ってきた。
そりゃあ、昨日も君島と二人で一緒にいたんだからゴキゲンだろうよ。
オマケに、夜は俺の代わりとして君島から電話あったはずだし。
「あ……ふふーん、やるじゃん」
「なんだよ」
「べっつにー?」
滝川が俺と四条の机を交互に見ると、ニヨニヨしやがった。
チクショウ、滝川の奴、俺が先に来て机を綺麗にしたこと、気づきやがったな。
「ところで……アッチは?」
滝川が俺の傍に来てそっと耳打ちする。
「おう、まあ大丈夫……って訳でもないが、少なくともソッチはバッチリだ」
「? まあ、それならいいけど?」
その時……友坂の野郎が何食わぬ顔で教室に入ってきた。
まるで、たった今登校してきましたみたいなツラで。
「ははっ、馬鹿な奴」
それを見て、俺は薄ら笑いを浮かべた後。
「滝川さん、俺のスマホ、ちょっと壊れちまったんだよ。みんなにRINE送りたいから、スマホ貸してくんない?」
「えー!? ヤ、ヤダし!」
滝川にそう頼むと、スマホを胸に抱きしめてイヤイヤをしやがった。
さては……。
「……君島とのやり取りのところは見ないから」
「っ!? ホ、ホントに……?」
「おう。あ、それと、ちょっとブラウザも開かせて」
「……ていうか、ちょっとやりたい放題じゃん?」
お、おお……滝川の眉毛がメッチャ吊り上がってる。
まあ、結構厚かましいのは自覚してるけど。
「頼む! ぶっちゃけ、この件に関しては滝川さんを一番信頼してるから!」
「「「っ!?」」」
俺が拝むように頼むと、滝川……だけじゃなくて、四条と優奈まで息を飲んだ。なんで?
「ふーん……かっちゃんはアタシのこと信頼してないんだー」
「べ、別に倉本さんが誰を信頼してようが構いませんですけれど?」
う、うむう……二人が拗ねやがった。
だけど仕方ねーだろ。四条はそもそも被害者なんだから、信頼以前の話だし。
優奈は……うん、悪い。この件については滝川のほうが信頼度は上だ。
「という訳で滝川さん、スマホ貸して」
「……やー、そこまで言われたら貸すけど……ウチ、後で知らないかんね? ちゃんとフォローしときなよ?」
ロックを解除してスマホを渡す際にジト目で見る滝川。
だけど、しょうがねーじゃんよ。
まあいいや。
俺は滝川のスマホを操作してブラウザを開き、おなじみのURLを入力して目的のページを開くと、IDとパスワードを入力して、と。
んで、次にRINEを開いて、クラスのグループRINEにブラウザからファイルを張り付けて、と。
「っ! コレ!」
「しー。まあ見てろ」
俺は声を上げそうになった滝川を制止し、送信ボタンをタップする。
すると。
――ピコン。
「あれ? RINE……っ!?」
優奈がスマホを取り出し、表示されたポップアップをタップすると、驚きの表情を浮かべた。
そしてそれは、クラスの他の連中も。
友坂に至っては……はは、顔が真っ青になってやがる。
ということで。
「おう、友坂」
スマホを滝川に返し、俺は友坂の席へ行くと肩をポン、と叩いた。
「ど、どうして!? スマホは壊れてる筈!」
「は? オマエ馬鹿か。朝の写真、普通にクラウドの共有フォルダに入ってるに決まってんだろ」
俺は口の端を持ち上げ、友坂を見下す。
「つー訳で、昨日の四条の机の落書きはオマエがやった、そうだよなー?」
「おおお、俺は……!」
見ると、いつの間にかクラス全員が俺と友坂のやり取りに注目していた。
そんな視線が、友坂をより追い込んでいるみたいだ。
「で、こんな陰湿な真似して、オマエの仕業だってバレて、オマエはどう落とし前つけるんだ?」
「う、ううう……」
俺はあえて追い詰めるように友坂に問い質す。
あの時、素直に俺に協力してりゃ、こんな晒されることもなかったのにな。
「ま、いいや。オマエ、もう終わったよ」
俺はニタア、と口の端を吊り上げてそう言うと。
「うわあああああ!」
いたたまれなくなった友坂は叫び声を上げて教室を飛び出して行った。
はは、逃げたところで何も解決しねーのにな。
さてさて、ちょっとだけスッキリした。
俺は自分の席へと戻ると。
「…………………………」
滝川にスマホ画面を見せてもらっていた四条が、俺をジッと見つめていた。
その表情は、心なしか怒っているようにも見えた。
「よ、よう……」
俺は少し気まずくなり、愛想笑いを浮かべながら四条に声を掛けると。
「……バカ」
「へ?」
「倉本さんのバカ! 私の……私なんかのためにこんなことして……! こんなの……こんなの……っ!」
そう叫ぶと、四条は俺の胸に飛び込んできた!?
「し、四条!?」
「本当に……あなたって人は……!」
四条は肩を震わせ、俺の胸の中でギュ、と制服を握った。
「はは……俺は、四条のためならなんだってできる……いや、なんだってしてやるさ」
「バカ……」
俺は四条の背中をポンポン、と撫でてやると、四条はそんな憎まれ口を叩いて俺の胸に頬ずりした。
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次回は明日の夜更新!
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