ホットドッグ
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「優奈はどうして、四条をそんなに毛嫌いしてるんだ?」
俺は優奈に単刀直入に尋ねる。
始業式の日から今日まで、優奈の四条に対する態度はずっとよそよそしい……いや、まるで四条を非難しているように見受けられた。
つまり、優奈自身に四条に対して良く思っていないところがあるってことだ。
それが分かれば、滝川のように優奈も四条と仲良くなれるかもしれない。
それに……四条が死なないようにするためには、どうしても避けちゃいけない問題のような気がするんだ。
「……えーと、どういうことかな?」
優奈はキョトンとした表情のまま首を傾げる。
だけど。
「とぼけるなよ。優奈が耳をいじってる時は、何か隠し事があったり後ろめたいことがある時だ」
そう告げると、優奈はハッ、となって慌てて耳をいじるのを止めた。
「それで……優奈と四条の間に、ひょっとして何かあったのか?」
「……別に」
優奈は唇を尖らせ、プイ、と顔を背けた。
まるで、俺の話なんて聞く耳を持たないとばかりに。
「フーン……ま、二人に何かあるってことだけは分かったよ。それって、益村の奴が絡んでたりするのか?」
「っ! ま、益村くんは関係ないよ!」
すると、優奈は急に声を荒げた。
つーか、その態度で益村が関係してるの、一目瞭然じゃねーか。
「で、益村がどう関係してるんだ?」
「…………………………」
益村が関係していることを確信した俺は、直球で優奈に問い掛ける。
だが、優奈は無言で俯いたままだ。
ウーン……益村め、優奈に一体何を吹き込みやがったんだ?
さすがの俺も、キレそうなんだけど。
その時。
――ピリリリリリ。
「あ、スマホが……」
優奈のスマホの音が鳴り、優奈はカバンからスマホを取り出して画面を見る……けど、何故か優奈は、電話に出ようとはしなかった。
何回かコールした後、スマホの着信音が切れた。
「出なくて良かったのか?」
「あ、うん……知らない電話番号だったし……」
そう言うと、優奈はスマホをカバンに戻す。
だけど……知らない番号だったら、そんな思いつめたような顔しねーぞ。
「そ、それよりかっちゃん! もう身体の調子は大丈夫なの?」
「ん? お、おう、もう大分良くなったけど……」
優奈は無理やり話を逸らすかのように、そんなことを尋ねてきた。
ま、今のところはここまで、かなあ。
「じゃ、じゃあさ、早く三人に合流しようよ! 私だってもっと遊びたいんだから!」
「おう、そうだな」
これ以上話に進展しないだろうと感じた俺は、あえて優奈の話に乗り君島達と合流した。
◇
「お、もうすぐ昼だな」
園内の時計を見ると、針は十二時の少し手前を指していた。
「うん、じゃあどこかお店に入る? それとも買い食いでもする?」
「お、それいいな」
俺は君島の提案に乗っかる。
店だと混みそうだし、買い食いなら外で食べられて気持ちがいいからな。
「三人はそれでいいか?」
「あ、ウチはそれでいいよ」
尋ねると、まず滝川が賛同してくれた。
「私もそれで構いませんわよ」
四条もオッケー、と。
「私もそれでいいかなー」
優奈も了承、と。
という訳で。
「おー、なかなか美味いな」
俺はホットドッグを買い、それを一気に頬張る。
うむうむ、遊園地だから冷凍だったりするのかと思ったけど、ちゃんと手作りだったからな。この味にも納得だ。
「うふふー、美味しいです!」
四条も俺と同じホットドッグにして、ご機嫌な様子でホットドッグを頬張っている。
ていうか。
「四条、口の周りにケチャップがついてるぞ?」
「え、そ、そうですか……っ!?」
そう言うと、俺は四条の口元についているケチャップを紙ナプキンで拭ってやる。
「うん、綺麗に取れた」
「~~~~~~~~~~!?」
ウンウン、満足満足……って、アレ? 四条の奴、なんで顔を真っ赤にしてるんだ?
「うわあー……倉本クン、ある意味すごいね……」
「ムム! 同志よ、それはどのシーンの再現なんだい?」
へ? 君島も滝川も、一体何を言ってるんだ?
「かっちゃんサイテー」
そして、思いっ切り白い眼を向ける優奈。何で?
「な、なあ四条……?」
「あうあうあうあうあうあう……!?」
あ、四条の奴、パニクってやがる。
とはいえ、俺は紙ナプキンで四条の口元を綺麗にしてやっただけなのに、みんな、なんでそんな顔してやがるんだよ……。
「あー……そうだった、かっちゃんはある意味お兄ちゃんだった……」
「?」
なんだよ、『ある意味お兄ちゃん』って。
「あははー……これを素でやるなんて、ある意味手強いわー……」
滝川が乾いた笑い声を漏らす。
む、手強いってなんだよ。
その時。
「やあ、みんなも今昼ご飯なのか?」
まるで狙ったかのように、益村の奴が現れた。
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次回は明日の夜更新!
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