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ジェットコースター

ご覧いただき、ありがとうございます!

 と、いうことで。


 俺達は今、定番中の定番であるジェットコースターの順番待ちの列に並んでいる。


 や、正直言うと絶叫系はそんなに得意じゃないんだけど、俺以外のみんなが『ジェットコースターがいい!』って言うもんだから、俺もそれに付き合ってるって訳だ。


「ふふ、楽しみですね」


 俺の右隣では、四条が口元を押さえながらはにかむ。

 まあ……そんな顔見ちまったら、断れる男子なんていねーよな。


「かっちゃん、一緒に座ろうよ!」


 左隣の優奈が、笑顔で同席を誘ってきた。


 だけど。


(わり)い、俺は一人で座るから、四条と一緒に乗ってくれ」

「「ええー!?」」


 そう言うと、優奈と四条が同時に驚きの声を上げた。


「ど、どうしてですか?」

「んー……俺、多分乗り物酔いすると思うから、隣の人が被害を受ける可能性がある」


 や、もちろんできる限りの対処あするつもりだぞ?

 ちゃんと右手にコンビニの袋も持ってるし。


「まあ、そんな訳で二人で乗ってくれ。俺は最後尾から四人の勇姿を見守ってるから」

「「ええー……」」


 つか、そんなガッカリした表情すんなよ。

 とはいえ、それはそれで嬉しいけど。


「ふむ……せっかく同志と『甘エン』伝説のジェットコースター回を再現できると思ったんだけどね……」

「や、仮にジェットコースターに酔わなくても、そんなのやらねーから。つか、そういうのは滝川さんがいるだろ」


 俺は君島の隣にいる滝川に目配せする。

 フフ……こういったところでもアシストは怠らないのだ。


「クク……確かにね。僕には滝川同志がいたことを忘れていたよ」

「あ、う、うん! ウチに任せて!」


 滝川は嬉しそうに、その薄い胸をドン、と叩いた。


「ま、そういう訳だから、この際『甘エン』のシチュは滝川さんにお願いしろ」

「そうだね! 滝川さん、今日はよろしく頼むよ!」

「うん!」


 おーおー、滝川の奴、瞳をキラキラさせやがって。


「お、次で俺達もいけそうだな」


 俺は前の人数を数えてみると、ちょうど俺達でギリ入りそうだった。

 となると、やっぱり俺が最後尾だな。


 で、ジェットコースターが戻って来たので、俺達は乗り込んでバーを下ろす。


「クク……楽しみだね、滝川さん」

「う、うん!」

「「…………………………」」


 うーん、後ろから眺めてると、四者四様で面白いなあ。

 特に優奈と四条、全く会話がないんだけど。


 つか、四条は積極的に人付き合いするタイプじゃないから分かるけど、コミュ力の高い優奈が四条と話をしないっていうのは意外だなあ。

 何より優奈の奴、四条に対して良いイメージ持ってないっぽいし。


 ……考えられるとしたら、四条と優奈の間に直接何かあったか、もしくは優奈に変に話を吹き込んだ奴がいるか……だな。

 まあ、後者の可能性が高そうだけど。


 ――ゴトン、ゴトン。


 お、ジェットコースターが動き出したぞ。

 ジェットコースターって、この坂の頂上に行くまで緊張感が一番ヤバイよなあ……それだけで吐きそう。


 そして。


「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」


 ◇


「し、死ぬ……」


 案の定、俺はジェットコースターにやられてベンチで横になっている。

 つか、あんなの耐えられるかよ……。


「ふむ……同志は本当にジェットコースターが苦手なんだね」

「だからそう言っただろ……」


 ウンウン、と頷く君島を、俺は憎々し気に睨んだ。


「ふふ。ほらほら、そうカリカリしませんことよ?」


 四条がクスリ、と微笑みながらペットボトルの水を渡してくれた。


「おお、(わり)い……」


 ペットボトルを受け取り、蓋を開けて一気に水を飲む。


「ふう……とりあえず、体調が戻るまで俺はしばらくここにいてるから、みんなは他のアトラクションに行ってきなよ」

「あ! だ、だったらアタシが傍で付き添ってるよ!」


 優奈が「ハイッ!」と勢いよく手を挙げる。

 ウーン、どうしよう……………………あ。


「そうだな、それじゃ優奈に付き添ってもらおうかな」

「っ! う、うん!」


 俺はそうお願いすると、優奈がぱあ、と笑顔を見せた。


 一方で。


「……まあ、いいんですけど」


 四条の奴が口を尖らせながら、プイ、と顔を背けた。

 なんで? ……って、この態度が四条のヤキモチの表れとかだったら、かなり嬉しいかも……。


「じゃあ同志、僕達はとりあえず別のアトラクションに行ってくるよ」

「おー、スマンな」

「全く……早く体調戻しなよ?」

「……フン」


 俺は次のアトラクションへと向かって離れていく三人に向かって手を振る。

 四条も、鼻を鳴らしていた割に、コッソリ手を振り返してくれていた。


「あ、かっちゃん。アタシ、ちょっとハンカチ濡らしてくるね」


 そう言い残し、優奈はパタパタと駆け足でこの場を離れた。


 俺は四条がくれたペットボトルの水を、もう一度口に含む。

 ハア、落ち着く。


「かっちゃんお待たせ!」


 息を切らしながら戻って来た優奈が、俺の額に濡れたハンカチを当ててくれた。


「おー、気持ちいいな」

「えへへ、良かったー」


 さて……それじゃ。


「なあ、優奈」

「ん? 何?」

「優奈はどうして、四条をそんなに毛嫌いしてるんだ?」

お読みいただき、ありがとうございました!


次回は明日の夜更新!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] お、ついに踏み込んだ!! 気になっていたところだけど、素直に答えてくれるかな??ら この話読んでいたらジェットコースター乗りたくなってきました(´・ω・`)いいなー
[一言] ジェットコースターは酔わない。酔うのはコーヒーカップだ/w 1000人とか1万人にひとりぐらい死ぬ、という話ならスリルもあるでしょうが、圧倒的に安全だからなあ… 直接幼馴染にぶつけますか。…
[一言] この男に感謝します。今、私は彼女がなぜ彼女を嫌ったのかを知ることができるでしょう。
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