遊園地のお誘い
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「ふう……」
風呂に入った後、俺は部屋のベッドに横になりながら色々と思いを巡らせる。
久しぶりに見たセンパイ、ますます綺麗になってたなあ……って。
「違うだろオイ!」
俺は思わず枕を投げつけ、よく分からないツッコミをした。
や、俺が今考えないといけないのは、四条にヘイトが集まるようにそそのかした、あの益村についてだ。
今日の話では、滝川の君島への想いを利用して、四条がまるで君島に気があるかのように益村の奴が嘘を吐いたって話だったよな……。
つか、益村の奴は一体何の目的でそんな真似をしたんだ?
「ウーン……普通に考えたら、益村にとって四条のことを良く思えない何かがあった、と考えるのが妥当だけど……」
頭を捻って考えてみるが、俺にはどうにも思い当たる節がない。
いや……俺が忘れてるだけかもしれない。もっとよく考えてみよう。
タイムリープ前では、益村の奴はそのコミュ力っつーかカーストトップの地位を活かして、常に四条を除け者にしていたよな……。
でも、それっていつ頃からだったっけ?
「確か……一学期の中間テスト後くらい、だったか……?」
元々“悪役令嬢”だなんてあだ名されてて、評判の悪かった四条だ。
当初からクラスの連中から敬遠されてはいたけど、中間テスト前まではあからさまな真似をするような奴はいなかった。
「じゃあ、やっぱりその中間テストの前後で何かあったと考えるのが妥当だろうな……」
まあ、裏を返せば、それまでは特にアクションが起こらないってことでもある。
「……勝負は中間テスト前、ってことだ」
それまでに俺が四条に関するフラグを折っちまえば、そういったことにはならない可能性が高い。
なら。
「はは……ならそのフラグ、俺が片っ端から折りまくってやる」
俺は掌をパシン、と拳で叩いて気合を入れた。
そのためには、中間テストがある六月まで四条につきまといつつ、益村の奴の動向を調べとかないとな。
幸いなことに、俺には滝川という“駒”も手に入れたことだし。
「んじゃ、その“駒”にもっと協力してもらうためにも、ちゃんと恩を売っとくかあ」
俺はスマホを取り出すと、RINEを立ち上げる。
「よう」
『おお同志! 君から電話をくれるだなんて嬉しいよ!』
そう、俺は君島に電話を掛けた。
今日の滝川との約束を果たすために。
「ところでさ、今週の日曜日って空いてるか? つか空けろ」
『おおっと、強引だね同志。もちろん、同志のためなら予定なんていつだってフリーだよ』
「そ、そうか……」
うわあ……なんかキモチワルイなあ……。
「日曜日、俺とお前と優奈と滝川と……」
あ、そうだ……せっかくだし。
「……四条の五人で、遊園地にでも行こーぜ」
『クク……遊園地で同志や四条同志、それに、『甘エン』の沼に嵌りそうな滝川さんを入れるとは……さすがは同志、見事なマエストロぶりだよ』
なんだよその“マエストロぶり”って。
「とにかくそういうことだから。また詳しい時間とか場所については連絡する」
『了解した。クク……本当に楽しみだよ』
「それは良かった」
そう言うと、俺は通話を切る。
ま、あとは明日学校で三人に伝えるかあ……。
スマホに充電用コードに繋げると、俺は少し早めに寝た。
◇
「はよーっす!」
次の日の朝、俺はいつものように教室に入ると。
「おはよ! かっちゃん!」
「おう!」
今日も優奈の奴が朝の挨拶をしてくれた。
「ところでさ、今度の日曜日なんだけど」
「っ! う、うん!」
おおう……優奈の奴、何かを期待するかのような瞳で俺を見てやがる……。
「じ、実は、君島と話してて遊園地にでも遊びに行こうって話になったんだけど、優奈も……「行く! アタシも行くから!」」
俺が言い切る前に、優奈は元気よく手を挙げて参加表明をした。
ま、まあ、話が早くて助かる。
その時。
「なになにー? 二人共何の話してんの?」
いつの間にか登校していた滝川が、俺達の会話に混ざってきた。
「ちょうどよかった。実は君島と日曜日に遊園地に行く約束を取りつけてな?」
「っ!」
フフフ……どうだ、俺はちゃんと約束を守る男だろう?
だからお前も、俺の“駒”として働いてくれよ?
「で、滝川さんももちろん行くだろ?」
「と、当然!」
よしよし、これで後は……。
「じゃあ、この四人で遊園地に行くんだね!」
ここで優奈が、まさかの打ち切り宣言をしやがった。
といっても、四条も誘うけど……って。
「…………………………フン」
……どうやら四条は、今の会話を聞いていたっぽいな。
明らかに、自分は関係ないフリを装ってる。
優奈の、不用意な一言のせいで。
ま、だからって俺が諦めるつもりもないんだけど。
「という訳で四条、お前も強制参加な。異論は認めん」
「っ! な、何の話ですの!?」
オイオイ、しらばっくれるなよ。バッチリ俺達の会話聞いてたくせに。
とはいえ、さすがに盗み聞きしてましたーなんて言えないだろうけど。
ということで。
「や、今度の日曜に遊園地行くんだけど、四条も一緒にって話だよ」
「フン! べ、別にそんなの興味ありませんわよ!」
まあ、こうやって断るのも分かってはいた。
だが! お前はこの話を聞いても断れるかな!
「……その日、遊園地では『甘プリオールスターズ』のショーがあるぞ?」
「っ!?」
フフフ……食いつきやがった。
さあどうだ! 断れまい!
「……ふう。まあ、あなたが子ども達に変な真似しないように監視する者が必要ですわね」
「だろ?」
ちょっと引っ掛かる言い方されたけど、四条が来てくれるならオッケーだ。
「おし! それじゃこのメンツで行くぞ!」
「おー!」
「はあ……しょうがないですわね……」
「…………………………」
俺の掛け声に乗ったのは滝川だけで、四条は溜息を吐き、優奈は無言だった。
とはいえ、四条に関しては口元が緩んでるけど。
ま、色々と何か起こりそうだけど、とりあえず今は何も考えないようにしようと心に誓った。
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次回は明日の夜更新!
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